Charaの愛の世界に一発で引きづり込まれる名盤『Junior Sweet』

2016年4月6日 / 18:00

Chara『Junior Sweet』のジャケット写真 (okmusic UP's)

今年でデビュー25周年を迎えるCharaの周辺があわただしくなってきている。最近では江崎グリコ株式会社ビスコWEBムービーに新曲「Stars☆☆☆(スターズ)」を提供。もともとビスコが大好きなこともあり、「今回、ビスコのために新しい曲を作ることになったのは自然なことかもしれないです」とコメントしているが、一方で2015年に約12年ぶりに活動を再開したCharaがヴォーカルのYEN TOWN BAND(岩井俊二監督の映画『スワロウテイルズ』の劇中に登場する架空のバンドとして1996年に誕生)による楽曲「my town」(YEN TOWN BANDとDragon AshのKjとのコラボレーション曲)が、石原ひとみ出演の東京メトロのCMソングに起用されたりと、2016年は華やかなアニヴァーサリーイヤーになりそうな気配だ。
 最近、Charaが歌っている姿を生で見たのは今年の1月に品川ステラボールで開催されたVAMPS出演の公開収録番組『MTV Unpluged』に彼女がゲスト出演した時だった。「ここで大好きなアーティストを呼びたいと思います」とHYDEに紹介され、純白のドレス姿で登場したCharaがデュエットという形で披露したのが代表曲「ミルク」だった。登場しただけで場の雰囲気を変えてしまうその存在感、セクシーなヴォーカルに場内からも歓声が上がり、VAMPSのステージに華を添えた。
 そして、今回、Charaの名盤としてピックアップしたいのは、その「ミルク」で始まる5thオリジナルアルバムであり、オリコンチャートの1位を獲得、ミリオンセラーを記録した『Junior Sweet』だ。

代わりのきかない自由奔放で甘美なヴォーカリスト
 幼少期からピアノを習い、小学生の頃から作曲をしていたというCharaは1991年の9月にシングル「Heaven」でメジャーデビューを果たし、1994年にリリースされた「あたしなんで抱きしめたいんだろう?」がTVのCMに起用され、ヒットを記録。その翌年には岩井俊二監督の『PiCNiC』で女優としても映画デビュー、『スワロウテイル』では娼婦のシンガー役(YEN TOWN BANDのヴォーカリスト)を演じ、鮮烈な印象を残した。ちなみに小林武史がプロデュースを手掛け、キーボーディストとしても参加のYEN TOWN BANDによる映画の主題歌「Swallowtail Butterfly〜あいのうた〜」はオリコンチャートの1位を獲得した。
 この間、『PiCNiC』で共演した俳優の浅野忠信と恋に落ち、電撃結婚&出産と怒涛のような日々を過ごしてきたCharaだが、デビュー当時からその存在とヴォーカル、歌詞は磁石のごとく多くのリスナーを惹き付けてきた。キュートでガーリーでいかにも自由奔放そうなルックスとパフォーマンス。色とりどりのスイーツみたいに甘くて、セクシーな声。ウィスパーボイスとソウルフルな歌い方を使い分けるスタイル。曲が街中で流れてきただけで、自分だと認識される存在になることは多くのヴォーカリストが今も昔も目標とするところだと思うが、彼女は最初っからそういう存在だった。その声、歌い方自体が「ねぇ、あたしの歌、聴いてよ」と訴えかけているかのようにフックがある。だから、Charaの歌は通り過ぎていくBGMにはならない。「ん?」と思わず耳を傾けてしまう歌なのである。
 また、その声に似合いすぎる歌詞も魅力である。《あたしなんで抱きしめたいんだろう?》もそうだが、Charaの歌詞には疑問符が多く登場する。《何のために たちどまるの?》(「kiss」)、《夢中で転がって彼に聴こえた?》(「恋文」)、《どこに行ったんだろう…?あのバカは!》(「どこに行ったんだろう?あのバカは」)など挙げていったらキリがないが、この問いかけにキュンとした人はたぶん数知れず。片思いしている人、幸せの絶頂にいる人、相手の心の距離に途方に暮れている人、失恋した人、いつの時代もCharaのラブソングは心に刺さった刺みたいに聴き手を揺らせてきた。もしかしたら、彼女の歌は本当に誰かを愛しているのか、恋しているのかが分かるリトマス紙みたいなものかもしれない。そんなことすら思わせられる稀有なヴォーカリストである。

アルバム『Junior Sweet』
 少女のようにあどけない笑顔のジャケットも人気の代表作。手を繋いでいるのは当時の夫の浅野忠信で、幸せな空気がじんわりと伝わってくる。本作のプロデュースを手掛けたのはCharaと同世代の大沢伸一(MONDO GROSSO)。アコースティックギターの穏やかな響きの「ミルク」から始まり、大ヒットを記録した「やさしい気持ち」(しあわせ・ヴァージョン)では《手をつなごう 手をずっとこうしてたいの》という歌詞が彼女の当時の心境をありのまんま映し出しているようだ。ちなみにこの曲は、詩人の血を経てプロデューサーとして活躍する渡辺善太郎がアレンジを手掛けている。サウンドも超キュートな「しましまのバンビ」は少女と母性が同居しているようなナンバーでテイ・トウワがアレンジを担当。ドラムに森高千里が参加していることでも話題を呼んだ。
 が、このアルバムがハッピーなムード一色かというと決してそうではないのがCharaのCharaたる所以。いつも原因不明の不安な気持ちがまとわりついていると歌うミドルバラード「私の名前はおバカさん」は健気で切ないし、《愛することを大切にできないんじゃないの?》というフレーズにドキッとするシングル「タイムマシーン」では浮遊感のあるサウンドも相まって、周りの景色がブルーに染まっていく感覚に襲われる。オルタナティブなギターサウンドに場面がガラッと切り替わる「勝手にきた」ではCharaの気怠い歌い方とシャウトに惹き付けられ、続く「どこに行ったんだろう?あのバカは」ではノスタルジックなフォークロック調の曲を表情を変えて歌う引き出しの多さに驚かされる。ちなみにこの曲はex.STREET SLIDERSの土屋公平と共作したナンバーである。そして、ストリングスアレンジとリズムが印象的な「私はかわいい人といわれたい」のオリジナル・ヴァージョンから大沢伸一ワールドとCharaワールドが手をつないだとも言えるソウルフルで心地よいタイトル曲「Junior Sweet」へと移行する後半の流れまでみっちり中身が詰まっている。本作のラストナンバーは「せつないもの」。目には見えないから、はかなくて強いものだから、愛はせつない? 幸せも不安もイライラも全部ひっくるめてこんなふうに自分のココロを裸にして愛を歌うって、すごいことだ。ずっと色褪せないだろう名盤である。


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