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キリンジ 鳴り止まぬアンコール

 10月に堀込泰行の脱退のニュースが大きく報じられたキリンジのビルボードライブ大阪、東京を巡るプレミアム・ツアーが終了した。ニュース告知前から既にソールドアウトの公演だったが、その後も連日キャンセルの問合せが相次ぎ、非常に注目された公演となった。

 客電が落ち、SEとともにいつもの飄々とした風情でキリンジとバンドメンバーが登場する。特にMCも無く、1曲目「早春」で堀込泰行によるハーモニカソロが間奏で、エンディングではダブルネックギターの堀込高樹とペダルステイール田村玄一によるハーモニーが場内を包み込む。そのまま2曲目「TREKKING SONG」へ。11月にリリースされた新作「SUPER VIEW」のリードトラックだ。エンディングの堀込高樹によるティンホイッスルのソロに、キーボード伊藤隆博のピアニカがハーモニーを加え、アイルランド音楽を彷彿とさせる美しいアンサンブルを見せた。

 短めの挨拶のあと、堀込泰行によるカッティングが軽快な3曲目「荊にくちづけを」。ここまでくると満場の観客も、今回のアルバムを曲順通りに再現しようとしていることに気づいてくる。そしてなんとなく散漫だった場内の雰囲気が、今行われているライブに対し一段と集中する方向へシフトしていく。

 振り返ればビルボードライブ東京での公演も4回目を数え、そのなかで他アーティストへの提供曲のセルフカバーをメインにしたライブや、サポートメンバーをぎりぎりまで減らしたライブに挑戦したり、様々なトライアルを行ってきたキリンジである。脱退のニュースを受けて行われる形となった今回、彼らが選んだのは、デビュー15周年を数えたアーティストの現在地を示した入魂のアルバムを再現してみせる、プレイヤーとしての現在地を示すライブだった。

 コーラスがフィーチュアされた新作にならって、三声や二声のコーラスが各曲ごとに分厚く配置されている。「祈れ呪うな」では、ベース千ヶ崎学とドラム楠均による、ライブならではのダイナミクス有るリズムが楽曲に一層の迫力を加える。そしてパーフェクト・ゲームを見るかのように、アルバム最後の9曲め「竜の子」の壮麗なエンディングへ。本編が終了し、ステージ奥の黒幕が開き、東京ミッドタウンのイルミネーションが輝く夜景が広がり、観客はようやく我に返る。

 アンコールの拍手を受けて、「懐かしい曲を」と始めたのは、「太陽の午後(1998年『ペイパー・ドライヴァーズ・ミュージック』)」、「カメレオンガール(2003年『For Beautiful Human Life』)」、「雨を見くびるな(1998年『ペイパー・ドライヴァーズ・ミュージック』)」、「エイリアンズ(2000年『3』)」の4曲。彼らが優秀なポップ・ミュージックの作り手であることが分かると同時に、プレイヤーとして力量が充実した今聞くと、また違った響きで各曲が聞こえてくる。

 最後に堀込兄弟=キリンジとしての来春のラストツアー<KIRINJI TOUR 2013>(全国15公演/2013年1月5日より全国プレイガイドにてチケット一斉発売)の告知と共に、「最後まできっちりやりますのでぜひ来てください」と堀込高樹がコメントし、万雷の拍手が場内から贈られた。

 客電が点いても、そしてなんと2度目の影アナが入ってもアンコールの拍手が鳴りやまなかった。今回のライブの満足度とともに、彼らの音楽を愛してきた沢山の観客の冷めやらぬ熱気を強く実感する公演だった。

【KIRINJI LIVE 2012 BBL PREMIUM】
2012年12月7日(木)
at Billboard Live TOKYO 2ndステージ

 セットリスト
1.早春
2.TREKKING SONG
3.荊にくちづけを
4.涙にあきたら
5.いつも可愛い
6.今日の歌
7.祈れ呪うな
8.バターのように
9.竜の子
-encore-
10.太陽の午後
11.カメレオンガール
12.雨を見くびるな
13.エイリアンズ

◎キリンジ オフィシャルサイト
http://www.natural-llc.com/kirinji

Photo:柴田やすし
Text:礒崎誠二

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