ヨ・ラ・テンゴと過ごしたディープな夜

2012年11月8日 / 12:15

 頻繁に来日するヨ・ラ・テンゴ。毎回、オーディエンスがやって欲しいであろう曲をプレイし、最高潮の盛り上がる。ジェイムズの変なダンスまで神秘的に思えてしまうほど素晴らしいパフォーマンスを見せてくれる彼ら。今回は【THE FREEWHEELING YO LA TENGO】と銘打ったスペシャル・ショウを開催した。

 会場はラフォーレミュージアム六本木にイスが敷き詰められ、講演会でも始まりそうな雰囲気。ステージには楽器がポツンとセッティングされていた。事前情報ではバンドメンバーのトークや観客とのやり取りをもとに演奏曲を決定していくというスタイルとのことで想像がつかなかった。普段のライブとは違う異様な状況に会場がざわつく中、メンバーがステージに登場した。

 メンバー3人ともイスに着席し、演奏がスタート。アイラはアコギを、ジェイムズはエレキベースを、ジョージアのドラムはタム、スネア、シンバルのみと非常にシンプルでミニマム。1曲目は「Tom Courtenay」で幕開け。いきなりライブのハイライトのような選曲に会場から歓声があがる。アコースティック・アレンジで優しくゆるい空気が会場に広がる。そのままもう1曲披露され、通訳の3人がステージに登場。ステージの右端に着席するのだがメンバーの遊び心か、本気なのか、れから始まるトーク・セッションの為に、それぞれ用意された通訳3人がヨ・ラ・テンゴすメンバーに合わせた格好をしていたのは笑えた。ステージ衣装とは言え、普段着だから分かりづらい。来年のハロウィンはヨ・ラ・テンゴの仮装をしてみても良いかもしれない。

 さて、トーク・セッションの前にメンバーから今回のショウのコンセプトについて訂正があった。バンドとファンのQ&Aをもとに、そのコミュニケーションからの“ノリ”で演奏曲を決めるので“リクエスト・ショウ”ではないとのこと。観客からは残念がる声が聞こえたが、この後のトーク・セッションでそんな不満は吹き飛んだと思われる。そして、Q&Aが始まる。

ファン「音楽のインスピレーションはどこからきますか?」
アイラ「スタジオに入ってその時の雰囲気によるから、それが吉とでるか凶とでるかだね。」

ファン「ハリケーンで大きな被害があったようですが、ホーボーケンは大丈夫でしたか?」
ジョージア「数日前までホーボーケンも大変だったけど回復してきました。」
アイラ「じゃあ、水に浸ったということで水にまつわる曲をやるよ。これまでライブでは演奏したことのない曲だ、ファースト・アルバムから “The River Of Water”」

 と、Q&Aは一旦終了し、披露されたのは「The River Of Water」。会場に集まったコアなファン達はレアなナンバーに歓声を送り、このショウの本質に納得したようだった。そのまま「水にまつわる曲をもう一曲」とニューアルバムに収録される楽曲を演奏し、再びQ&Aへ。

ファン「日本に永住する気はないですか?」
ジェイムズ「そんなプランはありません、夢はあります(笑)学校で日本のことをよく学んだよ。先生にもなろうと思ったけどこのバンドに入ってしまったからね。」と続けた。

ファン「最近音楽をやっている彼と結婚しました。同じく夫婦バンドをやっているあなたたちの円満の秘訣は?(アイラとジョージアは夫婦)」
アイラ「ジェームスと出会うことだね。」

ファン「以前マンキーズのカヴァーをしてくれたのが嬉しかったのですが、今日やってくれませんか?」
アイラ「僕はマンキーズが大好きで、メンバー全員にファンレターを送ったことがあるんだけど、誰も返してくれなかった(笑)だから、僕は世界中のファンが送ってくれるメッセージすべてに返信しているよ。」

、このままリクエストを受け、マンキーズの「Take A Giant Step」をプレイ。なんだかんだでリクエストを受ける形となり、会場は曲の終りで大歓声を送る。

ファン「日本のGSがお好きだと聞きましたが、最近の日本のバンドで良かったものを教えてください」
アイラ「スパイダーズ大好きだよ。今日も7インチ買っちゃたし。日本の他のグループだとボアダムスのリミックスはすごく良かったよ。」
ジェイムズ「また東京のレコード屋さんでたくさんお金を使いすぎちゃった。はっぴぃえんど、不失者、非常階段、あとSalyuとかを買ったんだ。」

 そして、披露されたのはスパイダーズがカバーしたスペンサー・デイヴィス・グループの「Gimme Some Lovin’(邦題:愛しておくれ)」。アコギを歪ませたディストーション・ギターで3人が力一杯演奏する。

ファン「9.11でサン・ラーの“Nuclear War”を発表し、あなたたちが戦っているような姿勢音楽が大好きですい。日本でも震災や原発問題といろいろな困難がありましたが、その時も“Nuclear War”に勇気づけられました。」
アイラ「あの曲があったから困難を乗り越えれた」

と、もちろん「Nuclear War」を披露。アイラはギターを置き、ジョージアのドラムセットからタムを倒してパーカッションのように叩きながら歌う。3人はオリジナルのサン・ラーに捧げるように掛け合い、歌っていく。これまでの緩い雰囲気を変える緊張感のあるこの曲に圧倒された。このショウは本当にスペシャルだと思った瞬間だった。Q&Aは続く。

ファン「“Season of the Shark”を制作したいきさつを聞かせて下さい」
アイラ「その質問には答えられない(笑)9.11以降、人は海に行っても鮫を怖がらなくなったし、話題にもしなくなった。別の大きな脅威が現れると、これまでの脅威を忘れてしまう。そんな感じかな。」

そのまま「Season of the Shark」をプレイ。トークによって演奏曲が決まり、実際に目の前で繰り広げられるのは実に気持ちが良い。なぜ、今回この曲が演奏されたのかが理解できるとアーティストとの距離が近づくのだろう。

ファン「新しいアルバムをジョン・マッケンタイアと作ってるって本当ですか?」
アイラ「本当だよ。彼と仕事をするのは初めてだけど、実は彼が前のバンドをやってる頃からの知り合いなんだ。昔は小さな車で一緒にツアーをしたことがある。何故新作で彼を選んだのかと言うと新しいことをしたかったからなんだ。じゃあ次はその新作から。トータスを聴いている人ならなるほどと思える曲だ。」とまたそのまま新曲を披露。どのタイミングで通訳が下がって良いのかわからない様子で、イントロが始まって客電も落ちる。彼ららしいライブといえばそうなのかも知れない。

ファン「“Pencil Test”が好きなんですが、歌詞はどういう意味なのでしょうか?」
ジョージア「古い曲ね。たしかすごく怒ってる曲だと思う(笑)今日、ここで演奏できたら良いんだけど…レコーディング以降演奏したことがなくて…ゴメンナサイ(笑)」

本当に演奏はせず、初めて楽曲に関連するトークでそのままスルーされる結果に。この日は他にもカバー曲などが多数披露された。セミ・アコーステックなヨ・ラ・テンゴの演奏を聴き、コアなファンたちがディープな質問をするというなんとも興味深い公演だった。最後までなにが演奏されるかわからない2時間は半分がトークだったが、通常の公演よりも深く楽曲たちを感じた夜だった。

Photo:Tadamasa Iguchi (IN FOCUS)


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