<ライブレポート>This is LAST、初の日本武道館公演を完遂 「ここを通過してその先に行きたい。これは願いというよりは、俺たちの計画」

2026年10月27日 / 19:00

 This is LASTが初の日本武道館公演【This is LAST one man live at 日本武道館 “通過点”】を10月15日に開催した。同日のチケットは即日完売した。

 ロックバンドの聖地である日本武道館は、多くのバンドマンにとって憧れの場所だ。だからこそ、この舞台に立った日をキャリアの頂点にしないため、自らを鼓舞する意識で、あるいはファンに未来を示す思いで、「ここはあくまで通過点だ」とMCなどで宣言するバンドマンは少なくない。ただ、公演前から掲げるライブタイトルにこの言葉を据えるとなれば話は別だ。相当に強気な宣言だと言っていいだろう。

 ステージに派手な装飾はなく、ただ3ピースのセットがあるのみ。そこに現れた菊池陽報(Vo./Gt.)、鹿又輝直(Dr.)、サポートベーシストの芳井雅人は、どこまでも愚直に、バンドの音だけでこの大舞台に挑んだ。

 菊池の「ブドウカーン!」という叫びを合図に始まったオープニングナンバーは、「恋愛凡人は踊らない」。4つ打ちのビートに貫かれたキャッチーな曲ながら、鹿又が繰り出す一発一発は腹に響くほど重い。芳井のベースラインが観客の高揚をさらに押し上げ、菊池のギターソロも鮮やかにキマる。泥臭いバンドマン魂が滲む音に、観客も拳をグッと突き上げている。

 そんななか、鹿又の刻むビートに合わせて手拍子が巻き起こり、菊池が「歌ってくれ!」と投げかけると大きなシンガロングが返ってくる。観客の力強いリアクションを受けて、嬉しそうに客席を見渡すメンバーの姿も印象的だった。

 MCでは菊池が『通過点』というライブタイトルについて、「そのまんまの意味です。ここを通過してその先に行きたい。これは願いというよりは、俺たちの計画」と言いきる。そのうえで菊池はこの日を「記念日みたいなもの」とし、「『This is LASTはこんなバンドだぜ』『こうやってやってきたよ』という過去が伝わったらいいなと思うし、その先の未来も見せたいと思う。何よりも、今生きているThis is LASTを見せられたらと思います」と語った。

 「ギリギリまで曲を詰め込んでるんだけど、やれるかい!」という言葉もあった通り、彼らは持ち時間いっぱいまで演奏を重ね、バンドの歩みを辿るようなセットリストを披露した。会場をヒートアップさせるアッパーチューンから、それぞれが自分の思いを歌に重ねられるバラードまで、様々な楽曲が演奏されるなか、中盤のMCでは菊池がバンドの原点を語り始めた。

 かつて千葉の柏でメタルコアバンドを組んでいたメンバーが、音楽性を大きく変えるきっかけとなったのは、菊池が当時の恋人に浮気された経験から生まれた楽曲「殺文句」だった。この曲を書いたことで菊池は「自分の弱さを歌詞に書いてもいいんだ」と気づき、それ以降も自身の経験を赤裸々に綴ってきた。例えば「左耳にピアスをしない理由」は、失恋の喪失感や、恋人との思い出が詰まったピアスを外すに至った心境を綴った曲だ。

 しばらくは自分のためだけに、自分の失恋を曲に書いていた。しかしリスナーや周りの人達との出会いによって、彼の心の穴は少しずつ埋まっていき、「もしかして俺の作る曲が、恋愛じゃなくても、同じように悲しいとか苦しい思いをしてる人の支えになるんじゃないか」という思いが芽生えたという。心が埋まったからこそ再びピアスをするようになり、「左耳にピアスをしない理由」を封印した菊池。その曲を、この日は「今日だけは特別にやってもいいですか? あの時の感覚のまま、この瞬間だけ自分のために歌います」と断って披露した。真っ赤な照明の下、鋭いバンドサウンドが痛みにも似た手触りを観客の胸に残していった。

 そんな印象的な場面を経て、ライブは後半へ。逞しいバンドサウンドが響く「ヨーソロー」では、菊池の「思いっきり声を聞かせてくれるかい? ここにいるって教えてくれ!」という呼びかけに観客が歌声で応え、続く「向日葵」ではバンドのアンサンブルと観客の手拍子がいきいきと弾んだ。

 「Any」では菊池が客席を指しながら〈愛してくれる人/今心に居てくれる人のために〉というフレーズを歌い、観客の大合唱を受け取ったあと「宝物です、ありがとう」と返す。そして「不器用でも、不器用なままでも、あなたも、俺もやっていけるように」という言葉が添えられた「シェイプシフター」では、紙吹雪が舞うなか、会場が温かなムードに包まれた。

 菊池が「気持ちを精一杯込めて歌ったわ。届いてるかい?」と尋ねると、観客が歓声で応える。「俺があの日失恋してなかったら、今も柏でメタルコアバンドをやってたんだろうな。そのちょっとの違いであなたに出会えたんだろうと思います」と思いを馳せた菊池は、ライブ終盤のMCでバンドの歩みを振り返った。解散の話が上がったこともあったが、なんとか続けられないかと戦ってきたこと。路頭に迷っていた自分たちを、今のマネージャーが見つけてくれたこと。その後に芳井と出会ったことにも触れながら、「いろんな人に支えてもらって今ここに立っている」と実感を語る。

 さらに菊池は、「こんなに人が動くバンドになったから、ぶっちゃけ怖くなることもあります」と胸の内を明かした。武道館を通過点にしようという大それたタイトルを前に、「どんな自分でいたらいい?」「武道館に見合う人間になれてないんじゃないか」と悩んだという。迷いのなかにいた彼に、マネージャーは「私は、日本武道館に立つべき人だと思っている」と言葉をかけた。そして菊池は「武道館より先に行くには、俺が俺を認めなきゃいけない」と腹を括った。

 「堂々としてるように見えるかもしれないけど、そんなことない」と吐露した菊池は、ここまでともに歩んできた観客に「どこまでデカくなろうが、俺たちは一緒にライブしてんだ。一緒にここを通過点にして先に行かないか! 一人にしねえぞ! やれるか、武道館!」と呼びかける。この瞬間、『通過点』という言葉は観客を巻き込む宣言へと変わった。

 「武道館は俺一人じゃ、この3人だけじゃ戦えないんだ。声、貸してくれるかい?」とラストスパートへ。「カスミソウ」では菊池が〈ありがとうね〉と歌い始めると、その続きを観客が歌い繋いだ。そうして巻き起こった大合唱に、菊池は「ヤバすぎ!」と歓喜の声を上げ、鹿又は思わず立ち上がってその光景を見つめる。よっぽど嬉しかったのか、菊池はその後もほとんどのメロディを観客に託し、ほぼ全編が大合唱となった。本編を締め括ったのは「オムライス」。コール&レスポンスやクラップが武道館いっぱいに響きわたるなか、クライマックスでは菊池のロングトーンとバンドの掻き回しが会場を貫く。胸に収めきれない喜びが、音になって溢れ出しているようだった。

 アンコールを含めると全21曲。この日のライブは、This is LASTの始まりの曲「殺文句」で締め括られた。なお、ライブの途中には、11月19・20日に地元の柏のライブハウス・DOMe Kashiwaでワンマンを行うことが発表された。最低でも武道館に立ってからでなければ、地元には帰れない。そんな思いで柏を出た彼らにとって、初の凱旋公演だという。自分の弱さを歌うことでリスナーと繋がり、その繋がりを力に変えてきた彼らには、今や共に歩んでくれる仲間がついている。かつて飛び出した街の景色は、あの頃とは違って見えるはずだ。

Text:蜂須賀ちなみ
Photo:日吉“JP”純平

◎公演情報
【This is LAST one man live at 日本武道館 “通過点”】
2026年10月15日(木)
東京・日本武道館
<セットリスト>
01. 恋愛凡人は踊らない
02. もういいの?
03. 沼超えて湖
04. 火の花
05. ベイビー
06. Strawberry
07. 結び
08. アイリス
09. #情とは
10. 左耳にピアスをしない理由
11. 愛憎
12. ヨーソロー
13. 向日葵
14. Any
15. シェイプシフター
16. ディアマイ
17. 病んでるくらいがちょうどいいね
18. カスミソウ
19. オムライス
アンコール:
en1. 拝啓、最低な君へ
en2. 殺文句


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