<ライブレポート>兎アイズ「自分がやりたいことを信じて」アイドルの常識覆した前代未聞の生誕祭──BiS、Especiaなどを生んだつばさレコーズの新進気鋭グループ

2026年10月9日 / 17:00

 兎アイズというアイドルグループをご存知だろうか。エモーショナルな感情表現を重視した楽曲やライブに定評があり、1周年を迎えた今春よりBiS、Especiaなど伝説のアイドルを生んだつばさレコーズへ移籍。大きな注目を集めている3人組(萌月ゆりな、結月ちはる、美月さな)なのだが、夏の終わりにアイドルの固定観念を覆す【表裏一体】なる公演を実施した。

<一部~洋~「アイドルのライブというよりはショーを観てほしい」ミュージカル映画からジブリ作品までカバー>

 美月さなの生誕祭(兎アイズ初の生誕祭)として二部制で開催された同公演は、ファンのみんなと誕生日を和気藹々と祝って盛り上がるバースデーライブとは異なり、メンバーのこれまでの音楽人生とアイドルらしからぬクリエイティヴの限りを尽くす、これまで誰も観たことのない衝撃的な生誕祭だった。まず一部~洋~では「アイドルのライブというよりはショーを観てほしい」という美月の想いから、ミュージカル映画『シカゴ』より「Cell Block Tango」を披露。真っ白に光る背景の前に同じく純白の衣装で現れた3人は、犯罪者であるヒロインたちを憑依させながら妖艶でダイナミックなコリオグラフを舞う。観客がその姿に釘付けになっていると、今度はステージに残った美月がマイクスタンドの前でミュージカル映画『バーレスク』より「But I Am A Good Girl」を歌い始め、いつもの兎アイズのライブでは聴けない大人びたボーカルで魅了。冒頭からアイドルのそれとは掛け離れた演出とパフォーマンスで圧倒してみせた。

 なお、この日のセットリストはすべて美月が考案したもので、彼女のこれまでの人生を彩ってきた楽曲たちで構成。続くAKB48「禁じられた2人」は子供の頃からいつかステージで歌いたいと思っていたナンバーで、同性愛を描いたその切ない世界観を結月ちはるとのデュオで純度高く体現し、その後の『リトル・マーメイド』劇中歌「パート・オブ・ユア・ワールド」も初めて劇団四季で聴いたときから歌い続けてきた楽曲ということで、物語の中から飛び出してきたかのような感情表現豊かな歌とセリフで完全再現、表現者としてとんでもないポテンシャルを発揮。会場を感動の渦に巻き込んでいく。そこから間髪入れずに披露した「Arrietty’s Song」(ジブリ映画『借りぐらしのアリエッティ』)でもこの作品と楽曲への解像度の高さを感じさせるボーカルが響き渡っていた。アイドルの数だけアイドルの生誕祭はあるわけだが、新たな歳を迎えるタイミングでそれまでの音楽人生をここまでショーアップしてみせるアイドルは稀有だろう。

 そして、かつてこの会場での兎アイズのライブでSE的に上映したという「水」の映像と音像に合わせてコンテンポラリーダンスを舞うと、いよいよ「アクアガラス」「シナスタジア」「528ヘルツ」「ナンデモナイ」と兎アイズの楽曲たちが3人揃い踏みで披露されるのだが、この最終ブロックもここまでのミュージカル然としたショーの一部として体感すると、その歌声やダンスがいつも以上に芸術的かつドラマティックに感じられ、それまで着席してショーを堪能していたオーディエンスも勢いよく立ち上がり、その手のサイリウムを激しく揺らながら叫び倒し、一気にスパークしていく。今や兎アイズのアンセムと化したラストナンバー「ナンデモナイ」では、今日ここで披露された音楽たちと共に歩んできた美月さなのストーリーがあったからこそ、その先で愛すべきメンバーとファンとの出逢いがあり、そのみんなと今こんなにも多幸感に満ちた表情で歌えている彼女がいるのだなと実感させられ、眼前に広がる光景がいつにも増して美しく見えた。

<二部~和~ 花魁をテーマとした楽曲群からハロプロ、AKB48まで──すべてが挑戦だった前代未聞の生誕祭>

 そんなアイドルの生誕祭らしからぬショーを披露しながら、最後はこのうえなく生誕祭らしい感動を与えてみせた【表裏一体】一部~洋~。続く二部~和~では、そのコンセプトに合わせて花魁をテーマとした楽曲群からスタートした。黒を貴重とした和柄の着物姿で登場した美月は、まず「身売り」(ロス)を舞いながら表情でも花魁としての儚げな生涯を体現しつつ、かつてバーレスク東京に在籍した時代にパフォーマンスしたくとも最後まで披露できなかった「吉原ラメント」(亜沙 feat.重音テト)を歌い出す。そのストーリーもあってか水を得た魚のようにパフォーマンスする彼女だったが、和の世界観が似合うビジュアルとも相まって観客を没入させていく。さらには、美月自身が全編「こうしてほしい」とディレクションして制作された映像をバックに「結ンデ開イテ羅刹ト骸」(ハチ)を披露。その背景と高いシンクロ率で踊りながら魅せるステージングも目を張るものがあった。

 そんな兎アイズとの親和性もあるボカロブロックを駆け抜けたあとは「キスをあげるよ 今気付いた想い どんな言葉でも足りないから──」と、嗣永桃子、夏焼雅、鈴木愛理から成る伝説のアイドルユニット・Buono!の代表曲「初恋サイダー」を美月さな、萌月ゆりな、結月ちはるの3人でお届け。アイドルファンであれば誰もが知るアイドルソングのアンセムということもあり、オーディエンスも「オイ!オイ!」と拳を振り上げながら、コール&ハンドクラップを繰り広げて共に大盛り上がり! そんなハロプロカバーのあとは、AKB48「でもでもの涙」を「ゆりながいなかったらこの曲を選んでいないぐらい決め打ちで選ばせてもらいました」と美月が事前に語っていた通り、萌月とのデュオで披露する。なお、一部の結月と歌った「禁じられた2人」もそうだったが、兎アイズがデュオに挑戦したのは今回が初。いずれも彼女たちの表現における新たな可能性を見出させる、有意義なアプローチであった。

 そして、一部の「Arrietty’s Song」(映画『借りぐらしのアリエッティ』)に続いて二部でもジブリ作品から「いのちの名前」(映画『千と千尋の神隠し』テーマソング)を歌い始める美月。この曲でも感じたことのだが、彼女はあらゆるバラードナンバーにおける心の機微を表現するのが巧く、その詩世界の住人になりきって聴き手の心を揺さぶることができる。そんな彼女のボーカリストとしての魅力を再認識させられたあとに突入したラストブロック=兎アイズのキラーチューン「トベトベトベ」「タメイキシテ」「ウソツキアイ」「ハイグリット」では、アイドルポップ感全開の萌月、エッジの聴いたラウド感全開の結月の歌声も際立ち、改めて見事なバランスで成り立っているトライアングルなのだなと実感。そんな三者三様のエモーションを大爆発させたパフォーマンスを受けて前代未聞の生誕祭【表裏一体】は劇的な大団円を迎えたのだが──

<不安と戦いながらも貫いたアイドルへのサプライズ>

 「本日は、美月さな、人生初めての生誕祭【表裏一体】にお越しいただきまして本当にありがとうございます! アイドルの生誕祭に行ったことがある人はたくさんいると思うんだけど、その中でも観たことのないようなことをいっぱいさなはやっているなと思って。でも、みんながどう思ってくれるか、めちゃめちゃ不安で! それでも、自分がやりたいこと、みんなに観てもらいたいことを信じて今日までたくさんたくさん練習してきて、みんなにお届けしました! 一部の特典会のときに「よかった! こういうの初めてだけど、すごくよかった!」ってたくさんの人が言ってくれて、今日この二部制のステージができてよかったなって思いました! 本当に今日は来てくれてありがとうございます! 感謝でいっぱいです!」

 と、この日の主役が最後に挨拶すると「ハッピーバースデイトゥユー♪」の大合唱が響き渡り、サプライズでバースデーケーキと花束が美月のもとに運ばれる。新しいこと、誰もやっていないことに挑戦するのは不安だ。でも、彼女はその不安と戦いながらも自分が信じる表現を貫いてみせた。その健闘を称えるかのような愛情あふれるみんなからのプレゼント。そりゃ「えー、待って! うれしい! ありがとう!」と大歓喜するに決まっている。そんな生誕祭さえも新たな挑戦の場とする新進気鋭アイドルグループ・兎アイズ。この記事を読んで興味を持った人は、2027年1月21日(木)東京・clubasiaにて開催されるワンマンライブ【未明飽和】をはじめ、今後の彼女たちの動向にもぜひ注目してもらいたい。

取材&テキスト:平賀哲雄

◎【MIZUKI SANA presents.表裏一体】
2026年8月30日(日)新宿Motion セットリスト:
・一部~洋~
01.Cell Block Tango
02.But I Am A Good Girl
03.禁じられた2人 with Chiharu
04.パート・オブ・ユア・ワールド
05.Arrietty’s Song
06.水
07.アクアガラス
08.シナスタジア
09.528ヘルツ
10.ナンデモナイ
・二部~和~
01.身売り
02.吉原ラメント
03.結ンデ開イテ羅刹ト骸
04.初恋サイダー
05.でもでもの涙 with Yurina
06.いのちの名前
07.トベトベトベ
08.タメイキシテ
09.ウソツキアイ
10.ハイグリット

◎イベント情報

兎アイズ ワンマンライブ【未明飽和】
2027年1月21日(木)東京・clubasia
OPEN 18:30 / START 19:00
チケット:前売3,000円 / 当日4,000円
https://ticketdive.com/event/mimeihowa

◎兎アイズ Xアカウント
https://x.com/_eyes_official_
◎兎アイズ Instagramアカウント
https://www.instagram.com/_eyes_official_/
◎兎アイズ YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/@eyes_official_moon


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