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anoが、9月4日に東京ガーデンシアターにて、全国ホールツアー【ano Hall Tour 2026 DUAL DINER】のフィナーレを飾る追加公演を行った。
ちょうど1年前。2025年9月3日に、アーティスト活動5周年を迎えたanoは、初の日本武道館公演を開催し、1万2千人の大観衆に向けて、ファンに向けて書いた自作曲である新曲「ミッドナイト全部大丈夫」を初披露し、「生きていてくれて、ほんとうにありがとう。よく頑張りました。絶対に大丈夫です」という言葉を贈った。そして、2026年3月からは神奈川・厚木公演を皮切りに、9都市を巡る自身初となる全国ホールツアー【ano Hall Tour 2026 DUAL DINER】をスタートさせ、7月にはFC会員限定の弾き語りライブ【天国未遂 Vol.1】を敢行し、アコースティックギターの弾き語りで、シーケンスを一切使わずに、たった一人で全11曲を歌い切るというステージを完遂した。その間に野外フェスや音楽イベントにも出演してきた彼女にとっての1年間は、アーティストとしての確かな成長や進化というとありきたりに聞こえるかもしれない。だが、「大丈夫じゃない日ばかりだけど、今夜だけは絶対に大丈夫になる」と直接伝えることができる、お互いにとって“絶対聖域”であるライブステージを、守り続ける強さと自信を獲得するための期間だったように感じた。
本ツアーのタイトル「DUAL DINER」にちなみ、ステージ上には、石棺にも見える巨大なダイニングテーブルが置かれ、対の燭台と花瓶が飾られていた。黒いスーツに白シャツ、黒いネクタイをした4ピースのバンドとストリングスカルテットは、教会での葬儀ミサの演奏家のようであり、anoはステージが2階に登場した際には、“DUALと”反転した“DINER”のロゴが赤と黒を基調にした衣装を纏った彼女の翼のように見えた。さらに、スタンドマイクには白い十字架がつけられており、堕天使となったanoとの晩餐会に招かれたように感じられた。
また、全国のホールを回るツアーということもあってか、多くの曲でスクリーンに歌詞が映し出されていた。歌の“言葉”がより伝わるようにという気持ちの表れであり、初めてanoのライブを見るという方への配慮もあったように思う。ライブ全体としても、テレビの“あのちゃん”しか知らないという人も楽しめる、分かりやすい構成となっていた。
エレキギターをかき鳴らしながらシャウトし、デスボイスも繰り出した「Past die Future」は文字通りのオープニング・ナンバー。<地獄から生き上がってやるんだ>と “遺影”を抱えて蘇ってきたことを知らせ、<何処へだって逝ける>と宣言。一転して、2曲目は誰もが知ってる代表曲「ちゅ、多様性。」で、ダンサー4人を従えて一緒に踊ると、そのままシームレスで「スマイルあげない」へと繋げて観客をディスコのようなフロアへと誘って踊らせ、<となりで歌ってみせるから>というフレーズが胸に響く「涙くん、今日もおはようっ」では観客が一斉に手を上げて左右へと振り、お客さんだけのアカペラによる<ラララ>のシンガロングも発生。コール&レスポンスや手拍子、振り付けなど、一緒にライブを楽しむ3曲によって、満員の会場はこれ以上ない一体感に包まれていった。
「めちゃくちゃ綺麗な景色をありがとう。ここには、いろんな人がいると思うけど、変な人もいるでしょ? 全員一緒に楽しめますか?」という呼びかけから始まった2つ目のブロックは、簡単に言えばロックパートとなっていた。スクリーンにアンチのコメントが流れる中で、<ムカつく>と繰り返す「普変」から真っ赤なライトで染め上げられたフロアにレーザーが交錯した「KILL LOVE」、anoが弾くアコギとボーカルから始まり、静から動へというダイナミックな展開を見せた「ハッピーラッキーチャッピー」。そして、白と黒、光と闇、君と僕という、相反する二つの要素が混ざり合っていく「この世界に二人だけ」。anoは心の声が漏れたような囁き声を聞かせたかと思えば、声を張り上げて絶唱するなど、楽曲ごとに表情を変えていきながらも、オルタナティヴ・ロックバンドのギタボのような魅力を存分に味わえる場面となっていた。
「僕のライブはいろんな曲があります。頭がぐわんぐわんすると思うんだけど、今回のホールツアーは特に情緒不安定になって帰ってもらおうかと思ってます。楽しんでいって下さい」という言葉の後、場内の照明が落ちていき、蝋燭とルームランプだけの灯りとなった。「僕が昔、無茶苦茶暇で、何もやることがなくて。何かやりたいけど、部屋に閉じこもるしかない時に、自分の部屋で、こういう暗い場所で、アコギを持って作った曲です」と語り、アコギの弾き語りで「SWEETSIDE SUICIDE」を歌い始めた。やがて加わったバイオリンの音色とともに照明も少しずつ明るくなっていき、「愛してる、なんてね。」はアコギを基調にピアノとストリングスだけのアンプラグドバージョンに。FC会員限定だった弾き語りライブの一端を垣間見せると共に、anoのバラードにおける切実さにグッとくる、エモーショナルなボーカル表現を堪能できる時間となった。
バンドメンバーが戻り、まっすぐに伸びやかに愛を歌ったポップチューン「AIDA」を経て、「愛晩餐」ではメガネをかけて、学ラン姿のダンサーとパフォーマンスしながら、次第にカオティックな様相を帯びていき、歪んでいくバンドアンサンブルと目をひん剥いて<わかってたまるか>と歌うanoの激しい歌声が絡み合い、張り詰めた空気を醸し出していた。
ハァ、ハァと息を切らしながら、「突っ走りましたね」とこぼし、『新劇場版☆ケロロ軍曹 復活して速攻地球滅亡の危機であります!』の主題歌として書き下ろした「貸しっぱなしデスティニー」からはラウドでヘヴィーな後半戦へと突入。スモークが焚かれたフロアでは観客によるヘドヴァンも起きる中で、「骨バキ☆ゆうぐれダイアリー」ではanoが生カメラを操ってお祭り騒ぎとなり、ミラーボールが周り、レーザー光線が交錯したハードなエレクトロ「Bubble Me Face」ではジャンパーが続出。観客に向けて、「絶対聖域を見せてくれてありがとう」と感謝の言葉を伝えた後の「絶絶絶絶対聖域」ではステージ前方のスピーカーに足を乗せ、観客一人一人の顔を見ながらシャウトしたかと思えば、ダイニングテーブルの上に寝転がって歌うなど、自由奔放ぶりを発揮。楽曲を重ねるごとに激しさには拍車がかかりつつも、思わず涙が誘われてしまうようなパフォーマンスだった。
ここで、1年前の武道館を振り返り、「『これからの僕は絶対に大丈夫です』と言いました。宣言して1年ですけど、その言葉が本物かどうかを試されてる、見定められてるような1年でした。そして、その言葉が確信に変わった1年でした。いろんなことがあったけど、僕はライブがあって本当に良かったと思ってます。ライブがあるから大丈夫だったって思う瞬間がたくさんあって。みんなに大丈夫にしていただけたなって思う」と語りかけた。続けて、「この1年は芸や技術を磨きたいと思ってやってきて。自分が誰からも見られてない時に、でも、自分が見ているから、目の前のことを地味に着実にやってきて。自分が一番ピンチな時に、僕は自分に励まされたし、その自分に救われました」と話し、観客に対して、「もしもこの頑張りは誰も見てないと思っても、自分が見ているから大丈夫だと思う。この先、そんな自分が君を大丈夫にしてくれると思う」と自身が身をもって体験したことを伝えた。
会場に足を運んでくれた一人一人に何度も感謝の気持ちを伝え、「あの時、死ぬのを諦めてくれてありがとう」語り、「楽しくて、可愛くて、今のMCとは真逆ですけど(笑)、気軽に楽しんでほしい」という言葉から新曲「ラブにダイブ」をバンド編成で初披露。チャーミングなポップロックで観客のジャンプと明るく愛らしいラララのシンガロンを引き出すと、「一人一人を溢さずにできるのがライブだと思ってる」という言葉に導かれた「YOU&愛Heaven」で地獄を天国に変えると、あなたの“絶対”になると誓った。
そして、「この場所だけは、ライブだけは誰にも邪魔されたくなくて、壊されたくなかった……です。暗闇にいることもあるけど、一人一人が照らしてくれて、守ってくれました。僕の絶対聖域、僕のライブ、僕の音楽。僕から今日、呪いをかけます」と語り、<大丈夫 大丈夫 大丈夫さ>という言葉が響き渡る「ミッドナイト全部大丈夫」でライブはエンデイングを迎えた。演奏の途中でバンドとストリングスの音が止まった瞬間に、anoは「君はそのまんまだから今日会えました。消えたい、死にたいと思った時、死ななかったから、今日、会えました。本当にありがとう。僕が呪います。君は、今夜だけは全部全部、大丈夫になるよ」と呪いをかけた。この呪いの言葉がライブが終わって何日経っても残っていて、次のanoのワンマンライブまで消えそうにない。
ボーカリストやギタリスト、ライブパフォーマーとしてはもちろん、ソングライターとしてのポテンシャルの高さを証明したano。特に、身体を張って消化した歌を通じた言葉の説得力が一段と増した印象を受けたし、彼女の「最高の景色が見れた」という言葉からも本ツアーに対する確かな手応えが伝わってきた。彼女にとって、この先のさらなるステップアップに繋がる、ターニングポイントになるような意義深いツアーになったと思う。
Text by 永堀アツオ
Photo by 横山マサト
◎公演情報
【ano Hall Tour 2026 DUAL DINER】追加公演
2026年9月4日(金)東京・東京ガーデンシアター
◎リリース情報
シングル「ラブにダイブ」
2026/9/5 DIGITAL RELEASE
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