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半世紀以上にわたりカントリーとポップの両分野で芸術的な信頼と商業的成功を築き上げた、卓越した多才さを誇るシンガー・ソングライター、ドリー・パートンが現地時間2026年8月25日に米ナッシュビルで死去した。80歳だった。
パートンはここ1年、原因不明の健康問題との闘いでほとんど公の場から姿を消しており、そのため公の場への出演を控え、2025年に予定していたラスベガスでの公演を延期、その後中止していた。彼女の死は、60年近く連れ添った夫カール・ディーンが2025年3月3日に82歳で亡くなってから17か月後のことだった。
訃報を伝えるプレスリリースには、「ドリーの希望により、近親者のみによる小規模な非公開の式が執り行われます。世界中のドリーのファンや友人の皆様には、@DollyPartonをタグ付けしてSNSで追悼のメッセージを投稿するか、公式サイトにメッセージを残していただくことをお勧めします。お花の代わりに、ドリー・パートンズ・イマジネーション・ライブラリーへの寄付を遺族は希望しています」と記載されている。
「私についての魔法はね、完全に本物であるときに、完全に偽物に見えるってことなの」と好んで語っていたパートンは、自意識的な作り物めいた外見で有名だった。地元の街の娼婦をモデルに着飾ったスタイルを作り上げ、常に自虐的な機知を用意していた。70代に入ってもなお、パートンの歌声や人物像、外見はキャリア最初期の頃と驚くほど変わらないままだった。整形手術を好む傾向があることについて、彼女は数え切れないほどの“カップ入りの野心”を自らに注ぎ続けてきたことへのご褒美の一部として公言していた。彼女がお気に入りにしていたもう一つの決め台詞には、「こんなに安っぽく見えるには、大金がかかるのよ」というものがあった。
しかし同時に彼女は見事な歌い手でもあり、生涯衰えることのない切ないソプラノの美声を持ち、故ホイットニー・ヒューストン(「I Will Always Love You」)からザ・ホワイト・ストライプス(「Jolene」)に至るまで様々なアーティストにカバーされた楽曲を書く卓越したソングライターでもあった。
米ビルボード編集部が2024年に史上最高のカントリー・アーティストに選出したパートンは、文化的にも商業的にも一大勢力だった。“Top Country Albums”チャートでTOP10入りしたアルバムは49枚に上り、女性アーティストとして最多を記録。また“Hot Country Songs”チャートでの女性アーティストによる1位獲得数も最多で、合計25回を数えた。
1946年1月19日、米テネシー州セビア郡の貧しい家庭に生まれたパートンは幼い頃からレコーディングを開始し、1stシングル「Puppy Love」をリリースしたのは13歳の時だった。18歳でナッシュビルに移り住み、プロのカントリー・ソングライターとして活動を始める一方で、いくつかの小さなポップ・シングルも録音していた。
「I Will Always Love You」は1974年にカントリー・チャートで1位となり、1982年に映画のサウンドトラック用に再録音した際にも再び1位を獲得した。そしてもちろん、1992年のヒューストンによる記念碑的なカバーが続き、さらに1995年にはヴィンス・ギルとのデュエットとして、パートン自身によるこの曲のカントリー・ヒットとしては3度目の録音がなされた。パートンは故エルヴィス・プレスリーからのこの曲を録音したいという依頼を断ったことで有名だが、それは故トム・パーカー大佐が出版権の半分を譲るよう要求したためだった。「あれは私がしなければならなかったことの中で最も辛いことの一つでした。だってエルヴィスが大好きだったから」と、パートンは2020年の米ビルボードのカバー・ストーリーで語っている。「I Will Always Love You」はまた、1976年から1977年にかけて彼女が司会を務めたバラエティ番組『Dolly!』のエンディング・テーマでもあった。
1981年に彼女自身が主演も務めた映画『9時から5時まで』のテーマ曲は、ソング・チャート“Hot 100”、“Hot Country Songs”、“Adult Contemporary”の各チャートで1位を獲得。同じ偉業は1983年、ビー・ジーズが二人のために書いた故ケニー・ロジャースとのデュエット曲「Islands in the Stream」でも繰り返された。通算でHot 100では2回、Hot Country Songsでは25回首位に立った。
パートンはキャリア終盤に大きな復活を遂げ、2023年には主にロックのカバー曲を収録した『Rockstar』がアルバム・チャート“Billboard 200”で自己最高位である3位を記録した。ポール・マッカートニー、リンゴ・スター、スティング、名付け子でもあるマイリー・サイラス、リゾ、エルトン・ジョンらが参加した同アルバムは、“Top Album Sales”チャートでも1位を獲得し、現代における彼女の最大のセールス週を記録した。同作はまた、彼女が恐れることなく踏み込んできたジャンルの幅も広げることとなった。主にカントリー・アーティストとして称えられてきたパートンだが、アメリカーナ/フォーク、ブルーグラス、児童音楽、クリスチャン、ダンス/エレクトロニック、ポップといったジャンルにもアルバムや楽曲を通じて足を踏み入れてきた。
パートンはその資産を<イマジネーション・ライブラリー>の運営に投じた。これは生後0歳から5歳までの子どもたちに毎月本を届ける取り組みで、これまでに1億5,000万冊以上の本を寄贈してきた。新型コロナウイルス流行の初期には、モデルナ社製ワクチンの開発資金の一助となったヴァンダービルト大学医療センターにも100万ドル(約1億5,900万円)を寄付している。
政治的立場を明らかにしないことで知られていた彼女だが、平等の問題に関しては率直に意見を述べることをためらわなかった。ブラック・ライヴズ・マター抗議運動の最盛期だった2020年の米ビルボード・カバー・ストーリーで彼女は、「人々が自分の存在を知らせ、感じてもらい、見てもらう必要があるということは理解しています。それにもちろん、黒人の命は大切です。取るに足らない私たち白人風情だけが大切だと思っているのかって?そんなわけないでしょう!」と述べていた。同様に、LGBTQIAコミュニティを支持する発言も度々行ってきた。パートンは2005年にトランスジェンダーの女性(フェリシティ・ハフマン)が疎遠になっていた息子(ケヴィン・ゼガーズ)とロード・トリップに出るコメディ映画『トランスアメリカ』のために書いた楽曲「Travelin’ Thru」で2度目の【アカデミー賞】ノミネートを果たしている。70年に及ぶキャリアを通じて、パートンは【グラミー賞】に55回ノミネートされ10回受賞、2011年には<生涯功労賞>を受賞した。
70代に入ってもなお、パートンは音楽的な後継者や歌姫たちとのコラボの機会を楽しみ続けた。映画『80 For Brady: エイティ・フォー・ブレイディ』のためにベリンダ・カーライル、シンディ・ローパー、デビー・ハリー、グロリア・エステファンと共に「Gonna Be You」を録音したほか、2025年には、サブリナ・カーペンターのヒット曲「Please Please Please」に参加し、彼女のアルバム『ショート・アンド・スウィート』のデラックス版に収録された。
パートンは2025年後半に米ラスベガスのシーザーズ・パレスで6公演を行う予定だったが、原因不明の健康問題により1年延期した。その公演は治療の継続を理由に2026年5月に中止となった。死去する前、パートンは自身の人生に着想を得たブロードウェイ・ミュージカル『Dolly: A True Original Musical』に取り組んでおり、2027年の正式な開幕が予定されている。同作にはパートンが新たに書き下ろした楽曲に加え、彼女の代表的なヒット曲の数々が含まれる。
パートンは自身の人生を、音楽キャリア以上に一つの使命として捉えていた。彼女は2020年に米ビルボードに対し、「聖書には“多く与えられた者は多くを求められる”とありますよね。だから私は毎日自分の人生をそう捉えているし、神が私にそれを求めていると考えています。私もそれを自分に求めているし、人からも求められていると思います。私がインスピレーションになれるのだとしたら、そうなりたい。それが私を幸せな気持ちにさせてくれるんです」と語っていた。
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