<ライブレポート>飯田洋輔、堂々の初フルオーケストラコンサート終演 “威厳をもって、アグレッシブに”

2026年8月19日 / 18:00

 飯田洋輔が、この夏、自身初のオーケストラコンサート【billboard classics YOSUKE IIDA Premium Symphonic Concert -MAESTOSO-】を開催した。

 『オペラ座の怪人』『美女と野獣』など、約20年在籍した劇団四季で数々の名作のプリンシパルを務め、2024年にミュージカル『レ・ミゼラブル』のジャン・バルジャン役で再デビュー。俳優として、またソロ歌手として表現の幅を広げる飯田が、東京、京都の2都市で繰り広げた歓喜のステージ、その模様を振り返る。

大曲揃いのセットリストを、エネルギッシュに

 長年の夢であり、目標──ビルボードクラシックスのステージへの登板が決まった際、飯田は熱を込めてそう語っていた。中学、高校では吹奏楽部で活動し、大学でクラシック声楽を学んだ飯田にとって、オーケストラコンサートの開催は、いつか挑みたいと願ってきたものだったのである。劇団四季を退団し、2024年の再始動から1年半で到達した晴れ舞台。そこに、自身の声質と志向を踏まえて「MAESTOSO(堂々と、威厳に満ちて、などを意味する音楽用語)」と名づけた彼の意欲は、7月3日、まず東京芸術劇場コンサートホールで花開いた。

 幕開き、飯田とは東京藝術大学の同期入学である指揮者の高井優希のタクトが振り下ろされると、東京フィルハーモニー交響楽団の演奏によりエルガーの「威風堂々」第1番が流れ出す。まさにMAESTOSOな行進曲が場を満たしたのち、ゆっくりと登場した飯田は、続いてトスティ作曲のイタリア歌曲「Vorrei(そうなってほしい)」を原詞で朗々と歌唱した。ハンドマイクではなく、低い位置に設置されたスタンドマイクを採用したため、生声に近いバイブレーションが広いホールに響き渡る。第2部中盤、やはり原語で歌ったカンツォーネ「’O sole mio(私の太陽)」もまたしかりだが、歌手としての飯田の素養を十二分に伝えるオープニングである。

 短い挨拶を挟んだのち、第1部で披露されたのは、ミュージカルの大曲の数々。スティーブン・ソンドハイムの『Company』から「Being Alive」、『ラブ・ネバー・ダイ』から「Till I Hear You Sing(君の歌をもう一度)」「LOVE NEVER DIES(愛は死なず)」、かつてチェ・ゲバラ役で出演した『エビータ』からの「High Flying Adored(空を行く)」など、いずれも、この曲を聴くために劇場へ足を運ばせるキラー・ナンバーだ。奥行きのあるオーケストラサウンドに感情を乗せ、飯田はそれら1曲1曲をエネルギッシュに歌いあげていく。

『レ・ミゼラブル』『美女と野獣』──よみがえる出演作の輝き

 そして、劇団四季時代の飯田のレパートリーである『オペラ座の怪人』より、タイトルロールの怪人が歌うアリア「The Music of the Night」が始まると、会場のボルテージは最高潮に。この日最初のショーストップとなり、飯田も思わず「最高!」と声を上げた。喝采の中、登場したゲストの新妻聖子とデュエットするタイトル曲「The Phantom of the Opera」も、ドラマチックな照明演出をともない、地下空間での怪人とクリスティーヌの駆け引きをテンション高く再現して大歓声を浴びた。作品での共演はまだない二人だが、曲間では「案外陽気な方なのに、歌い出すとぜんぜん違う人になりますよね。怖っ!(新妻)」「いやいや、聖子さんこそ、さすがだなと……本当はこうして1時間くらい話していたいんですけど(飯田)」と天然同士(?)息の合ったトークを繰り広げて笑いを誘った。

 オペラティック・ポップの名曲「Con Te Partirò(君と旅立とう)」(サラ・ブライトマン歌唱の「Time To Say Goodbye」としても知られる)で幕を開けた第2部には、出演作からのナンバーが続く。『レ・ミゼラブル』の賛美歌とも評される「Bring Him Home(彼を帰して)」は、原詞での歌唱により、飯田が演じながら意識していたというジャン・バルジャンと神との対話がよりくっきりと浮かび上がった。警部ジャベールの「Stars(星よ)」もまた、彼が信じる神に信念を捧げた力強く美しい宣誓の歌。ゲストの新妻も、自身の当たり役であったエポニーヌを蘇らせ、円熟の「On My Own」で観客を魅了した。

 ビーストとベルさながらの優雅なお辞儀を交わすと、二人は『美女と野獣』から「Beauty and the Beast」をエレガントにデュエット。歌い終えた新妻を見送った飯田は、やはり劇団時代に演じた『壁抜け男』からのメドレー、そして『美女と野獣』を代表する大ナンバー「愛せぬならば」を畳みかける。本編ラストは、「いつか歌ってみたかった憧れの曲」だという『CHESS』から、「Anthem(聖歌)」。これもまた、ミュージカルを代表するMAESTOSOな1曲。人間社会を包み込むスケールの大きな賛美歌が、聴く側の胸に沁みていく。

 本編で全17曲を歌い上げた飯田は、アンコールにガッツポーズで登場。6月に発表したオリジナル曲「I CHOOSE」をオーケストラアレンジで披露したのち、冒頭と同じく「威風堂々」が演奏されると、そのメロディーに、スポーツイベントでもたびたび聴かれる勇壮な英語詞「Land of Hope and Glory(希望と栄光の国)」を重ねた。ひとつのテーマ曲で全編をまとめるのは、企画当初から飯田が提案していたアイデア。オーケストラと一体となった輝かしい歌唱で、充実の初日を締めくくった。

京都公演、「Wファントム」の歌声に場内歓喜

 「ぶ厚いオーケストラサウンドに包まれる感覚は、夢にみたもの以上でした。今日得たことを大事に、次の公演につなげたい」東京公演終了直後、感激をかみしめながらそう語った飯田。約1か月のインターバルを経て、8月8日、京都コンサートホール大ホールでの公演に臨んだ。

 2度目ともあってか、飯田はリラックスした笑顔を覗かせて舞台に登場。直前に発生した熊本地震への見舞いを述べ、募金の呼びかけを行なったのちプログラムへと入っていった。

 京都公演での「The Music of the Night」は、飯田にとっても観客にとっても特別なパフォーマンスとなったことだろう。この日のゲスト、佐野正幸は、飯田が学んだ東京藝術大学音楽学部声楽科のOBであり、劇団四季時代の先輩。深みのあるバリトンと俳優としての落ちついた構えに共通点を持つ二人は、『ジーザス・クライスト=スーパースター』のペテロ、『美女と野獣』のビースト、『エビータ』のチェなど同じ役を演じる機会が多く、飯田は「常に佐野さんの背中が目の前にありました」と振り返る。

 アンサンブルに始まり、ラウル・シャニュイ子爵、そして怪人と、『オペラ座の怪人』に長年携わってきた佐野。怪人役を初めて務めたのがちょうど20年前の8月8日だったと語った事実に、観客席からも驚きの声が上がる。役と作品への愛情、そしてお互いへの信頼を確認するように、静かなイントロから一節ずつ歌いついでいく二人。声を重ねて浮かび上がるのは、まさに至高の怪人像だ。

 「洋輔くんと一緒に歌うのは、僕の夢でもあった。独立したのは僕が後だから、これからは『先輩』として、よろしく」と笑顔を見せた佐野は、続けて第2部で『スカーレット・ピンパーネル』の「炎の中へ」をデュエットし、『ラ・マンチャの男』の名曲「見果てぬ夢」をソロで披露。レジェンドの健在を示した。

選んだこの道を、胸を張って

 佐野との対話の中で「人生には、勇気を出して踏み出さなければならないときがある」と語った飯田。そんな思いを反映してか、セットリストには、旅立ちや冒険、挑戦をテーマにした曲がいくつも含まれていた。第1部ラストの「Climb Ev’ry Mountain(すべての山に登れ)」(ミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』より)、第2部の「コンパス・オブ・ユア・ハート」(ディズニーシーアトラクション『シンドバッド・ストーリーブック・ヴォヤッジ』テーマ曲)は、ともに旅立つ人の背中を押す歌。佐野と歌った「炎の中へ」も、革命に身を投じる人々が自らを鼓舞する曲である。

 胸を張って、恐れずに、前を向いて──マイクに向かう飯田を、指揮台からたびたび振り返り、曲間にはアイコンタクトを欠かさなかった高井優希。学生時代以来となった東京公演での共演を「感無量です」と語った彼の愛情あふれるリードが、大阪交響楽団持ち前の情熱的なサウンドとともに、さらに歌唱を後押しする。

 そして迎えた、終幕の時刻。「生まれたときから周りに音楽があった。これからも強い意志を持って、歌うことを選び続ける人生になると思います」と、飯田は観客に語りかけた。アンコール曲は、東京と同じく「I CHOOSE」。天賦の歌声と磨き上げた表現力、そして強い意志を持って、選んだ道を進んでいく。はるかな旅路は、まだ始まったばかりである。

 公演の模様は、9月11日22時よりBS10プレミアムでTV独占放送される。飯田は9月16日より東京・自由劇場でミュージカル『夢から醒めた夢』に出演。続いて11月20日より東京・シアタークリエでミュージカル『メイビー、ハッピーエンディング』に出演する。また、来年2月7日に石川県立音楽堂コンサートホールで開催される【ファンタスティック・オーケストラ・コンサートvol.3『ザッツ・ミュージカル!』】へのゲスト出演も決定した。

text:大谷道子
photo:石阪大輔(東京)、桃子(京都)

◎公演情報
【billboard classics YOSUKE IIDA Premium Symphonic Concert -MAESTOSO-】
2026年7月3日(金)
東京・東京芸術劇場 コンサートホール
OPEN 17:30 / START 18:30

2026年8月8日(土)
京都・京都コンサートホール 大ホール
OPEN 17:00 / START 18:00

出演:飯田洋輔
ゲスト:
【東京】新妻聖子
【京都】佐野正幸
指揮:高井優希
管弦楽:
【東京】東京フィルハーモニー交響楽団
【京都】大阪交響楽団
編曲監修:山下康介

<公演公式サイト>
https://billboard-cc.com/yosukeiida2026

主催・企画制作:ビルボードジャパン(阪神コンテンツリンク)
協賛:【京都】大和ハウス工業株式会社
後援:米国ビルボード、【東京】TOKYO FM、【京都】FM大阪

<セットリスト>
第1部
1. 威風堂々
2. Vorrei
3. Being Alive
4. Entr’acte
5. Till I Hear You Sing
6. High Flying Adored
7. LOVE NEVER DIES
8. The Music of the Night
9. 【東京】The Phantom of the Opera
10. Climb Ev’ry Mountain

第2部
11. Con Te Partirò
12. Bring Him Home
13. Stars
14. ’O Sole Mio
15. コンパス・オブ・ユア・ハート
16. 【東京】On My Own 【京都】見果てぬ夢
17. 【東京】Beauty and the Beast 【京都】炎の中へ
18. 壁抜け男メドレー(街の絵描き / 壁抜け讃歌 / 壁抜け男のソロ)
19. 愛せぬならば
20. Anthem
EC1. I CHOOSE
EC2. 威風堂々

◎番組情報
BS10プレミアム『billboard classics YOSUKE IIDA Premium Symphonic Concert -MAESTOSO-』
9月11日(金)22:00~24:00
9月23日(水)22:00~24:00※再放送
https://www.bs10.jp/premium/feature/detail/20260903/


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