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7月23日、マカロニえんぴつが自身のオフィシャルファンサイト『OKKAKE』の設立5周年を記念したスペシャルなワンマンライブ【OKKAKE設立5周年記念ワンマン☆ ついに新宿LOFTでやるよ!~いつもありがとうマカロッカー、そしてロフト50周年おめでとうございます(涙)(尊)~】を東京・新宿LOFTで開催した。
マカロニえんぴつが新宿LOFTのステージに立つのは、おいしくるメロンパンと共演した2019年2月のライブ以来、約7年5か月ぶり。半世紀にわたり日本のロックシーンにとって重要な場所であり続けた「生きる伝説」的なライブハウス新宿LOFTに、今この時代において最も重要なロックバンドの1組であるマカロニえんぴつが帰ってくる。この日はそんな特別なライブだったのだが、結果的に、それはただの「凱旋ライブ」という範疇を超えたライブだった。それは新しい季節に向かって歩き始めたマカロニえんぴつの始まりを見るような、そんな鮮烈なライブだったのだ。
開演時間が来て、真っ赤な照明に照らされたステージにお馴染みのSEであるザ・ビートルズの「Hey Bulldog」が流れ始めると、フロアに詰まった観客たちから大きな歓声が上がる。高野賢也(Ba)、田辺由明(Gt)、長谷川大喜(Key)、そしてサポートの高浦”suzzy”充孝(Dr)がステージに登場し、最後にはっとり(Vo/Gt)が姿を現すと、はっとりはギターを抱えながら「やるかー。飛ばし過ぎるなよ!」と一言。そしてSEがズバッと途切れると、一瞬で心を鷲掴んで解き放つようなドラムの打音が響き、ファンサイト名にもなっている「OKKAKE」が始まる。観客たちは早くもクラップをしたり、一緒に歌ったりと、一気に密度の高いフロアに熱気が充満する。バンドを見つめるファンの視点で綴られた歌詞、その中の〈ずっと歌っていてくれるよな?〉というフレーズが鮮明に耳に飛び込んでくる。2019年のマカロニえんぴつが歌うこの歌詞と、今のマカロニえんぴつが歌うこの歌詞の響き方には、変わらないものと変わったものがそれぞれ確実にあるだろう。歌は歌われれば歌われるほど、聴かれれば聴かれるほどに、たくさんの意味を抱いていくものなのだ。
立て続けに「レモンパイ」、「愛のレンタル」、「たましいの居場所」と曲は続く。甘美なディスコファンクのグルーヴに差し込まれる長谷川の鍵盤の瞑想的なフレーズが「邪」と「聖」の混ざり合いをイメージさせる「愛のレンタル」、そのオリジナリティあふれるサウンドで体を揺らしながら、いろんなものが抱き合い、混ざり合い生まれる混沌としたものに心と身体を開く喜びを感じる。それになにより、ライブハウスで聴くバンドの音は最高にいい。この数年でホールもアリーナもスタジアムも経験してきたマカロニえんぴつの成熟した音作りの妙もあるだろう。やはり、いいロックバンドといいライブハウスは最高の化学反応を起こすことを実感する。
最初のMCでは、はっとりが「後ろも照らしてくれるかな」と、フロアの後方まで観客の顔を覗き込もうとするように照明さんに合図。田辺が「LOFTでワンマンをやるのは初めてだからね」と告げると、はっとりは「LOFTは歴史もあるし、敷居も高い場所で、何年もかけてやっとこのメインステージに立てたんだよね」と、何度もそのステージに立ちながら、同時にずっとあこがれの場所であり続けた新宿LOFTへの想い、そしてその場所が今年で50周年を迎えたことへの祝福を告げた。
メジャーデビューEP『愛を知らずに魔法は使えない』(2020年)に収録され、今やバンドを代表する人気曲となっている長谷川作曲の「ルート16」、インディーズ期のミニアルバム『エイチビー』(2015年)収録の「恋の中」、さらに同じくインディーズ期の「two much pain」(2017年)などなど、様々な時期の楽曲が披露されていく。その後披露された「八月の陽炎」(2021年)は、メジャーデビューも果たし完全なるブレイク期にリリースされた楽曲だが、この曲が生まれたのはコロナ禍でもあり、今にして思えば変わりゆく社会や自分たちの状況に翻弄されながらも、大切なものを守り抜こうと足を踏ん張り、拳を握り締めているような力強さを感じさせる。そして、はっとりの「みんなが好きな曲をやりますよ」という言葉に続き始まった、初の全国流通盤「アルデンテ」(2015年)収録の「零色」。アウトロが最高だった。
いろんな時代のマカロニえんぴつが、披露される楽曲を通して、この2026年の夏に生きていた。思い出は身体やプレイに蓄積されていて、どれだけ忘れたと思っていても、ある瞬間に急に蘇るものなのかもしれない。思い出は自分にしか作れない。全力で生きれば、いい思い出になるだろう。今この瞬間だって思い出になる。そういうことの尊さを、新宿LOFTのステージに立つマカロニえんぴつの演奏を聴きながら感じた。
MCでは、2016年に初めて新宿LOFTに出演したときのことを振り返るメンバー。「まずはBARステージに立たなければいけない」という慣例通り、マカロニえんぴつと新宿LOFTの物語もBARステージから始まったという。当時、新宿LOFTの名物ブッカーである樋口寛子氏に「KANさんを思い出した」と言われたことが喜びだったと、はっとりは語った。他にも、新宿界隈で開催されるサーキットイベントでは新宿LOFTはメインステージになるため、やはりあこがれの会場だったこと。邦ロックシーンのトレンドが四つ打ちの盛り上がるロックになっていった頃に、トレンドに乗り切れないながら試行錯誤をしながら『エイチビー』を作った頃のこと。用意した言葉をMCで話してもまったく自分の言葉にならないから、言葉を取り繕うことを辞めたこと。バンドマンたちのハードな打ち上げで酔っ払い過ぎた田辺が機材を全部LOFTに忘れて帰った夜。昔はライブハウスが苦手だったという長谷川。新宿LOFT名物のオムライス。マカロニえんぴつの中に蓄積されてきた、いろいろな思い出が言葉になって出てくる。なんと高野は初ライブからすべてのライブのパスを家で保存しているらしく、その言葉を聞いたはっとりは「賢也って愛深いよね!」と驚いていた。
はっとりは「誰にも心を委ねられなかった頃、ここに居場所を作らなきゃいけないと思っていた」と語った。そして、「その頃に作った曲です」と言って、今は廃盤になっている会場限定CDに収録された「enough」(2016年)が披露される。さらに続けて「悲しみはバスに乗って」。この2曲が続けて演奏されたことには大きな意味を感じさせた。この2曲には、はっとりの中に本質的に根付く、幸福と悲しみへの眼差しが刻まれているように思える。「悲しみはバスに乗って」の〈ありふれた日、ありあまる日/ありきたりな幸せ〉というフレーズのリフレインが胸に刺さる。
はっとりが「ライブハウスが好きなんだ、俺たちは!」と叫んだ疾走感あふれる「keep me keep me」。田辺が観客を煽りまくっていた「夏恋センセイション」から高浦のドラム繋ぎで始まった高野作曲の「イランイラン」。ライブは後半に入りさらに熱気を増していった。「ワンドリンク別」「言い訳ばかりの男」「洗濯機と君とラヂオ」と、盛り上がり必至のキラーチューンたちが立て続けに披露され、会場も熱狂的な空気に満たされる。そして、そんなアグレッシヴな楽曲たちによって生まれた興奮の奥にある心を掬い上げるように、「愛の手」、そして「幸せやそれに似たもの」が、バンドの確信を響かせるようなヘヴィな演奏で披露された。
最後のMCではっとりは、かつての自分たちを振り返りながら「あのときがあったから今こんな景色を見ることができている。全部が大事な時間だった」と語った。そして9月にリリースが発表されているEP『運命さがし EP』のことも「楽しみにしていてほしい」と触れながら、「俺、まだまだやりたいです。もっと自分を、痛みを、できるだけ同じ形で分かち合いたい。もっと生きたい。まだまだ期待していてください!」と告げた。
MCの中ではっとりが何度か使った「生き様」という言葉は「OKKAKE」の歌詞にも出てくるもので、ロックバンドにとってそれが如何に大事なものであるかを実感する。「あなたが掴んだ、マカロニえんぴつという音楽でした」という言葉に続き、本編ラストに演奏されたのは「ヤングアダルト」。そして普段はアンコールをやらないマカロニえんぴつだが、この日は特別にアンコールで「ハートロッカー」が披露された。「ハートロッカー」は10年以上前にリリースされた曲だが、この曲で繰り返し歌われる〈もっと遠くへ〉という言葉こそ、もしかしたら今のマカロニえんぴつの心を象徴しているのかもしれない。今の自分の心を、かつての自分が歌っていたのなら、それはどんなに深く大きな喜びだろう。マカロニえんぴつはもっと遠くへ。マカロニえんぴつにしか辿り着けない場所へ。きっといつかの思い出と同じように、何かが始まりそうな予感が新宿LOFTに満ちていた。
Text by 天野史彬
Photo by 酒井ダイスケ
◎公演情報
【OKKAKE設立5周年記念ワンマン☆ ついに新宿LOFTでやるよ!~いつもありがとうマカロッカー、そしてロフト50周年おめでとうございます(涙)(尊)~】
2026年7月23日(木)東京・新宿LOFT
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