NASAの優秀な人材を惹きつける「午後5時以降の魅力」とは?139億円の経済効果を築いた米地方都市の音楽エコシステム戦略

2026年7月30日 / 13:30

 米アラバマ州ハンツビルの音楽経済は好調が続いており、同市のミュージック・オフィスがそれを裏付ける数値を公表した。

 同機関の最新レポートによると、2018年以降、アーティスト、会場、レコーディング・スタジオ、フェスティバル、音楽業界の経営者、レコード店などを含むハンツビルの音楽エコシステムは、直接的な経済波及効果において40%近く成長し、直接的な粗付加価値(GVA)は35%増加しました。現地時間7月28日に発表されたこのレポートは、市の音楽エコシステム監査を契機に会場整備への資金提供とハンツビル・ミュージック・オフィス(HMO)の設立が実現した2018年から2026年までのデータをもとにまとめられている。

 HMOは、4,000万ドル(約65.4億円)を投じた円形劇場「オリオン・アンフィシアター」のオープンと並行して2022年に立ち上げられた。以来、テキサスのプロモーターResound Presentsと提携して特別イベントを市内に誘致するとともに、ミュージック・オフィスの連合「Association of Music Offices(AMO)」の設立にも寄与してきた。ハンツビルは現在、人口ベースでアラバマ州最大の都市となっている。

 HMOとクリエイティブ経済のコンサルティング会社Sound Diplomacyによって発表された「ハンツビル音楽の経済効果レポート」には、市の音楽経済への投資と8年間の実施結果が詳述されている。レポートによると、市の音楽成長の重要な要素は、収容人数8,000人のオリオン・アンフィシアターによるものだった。この施設は全国規模のアーティストを惹きつけ、15万人以上の市外からの訪問者をこの地域にもたらした。

 「Sound Diplomacyの独自評価により、同会場の運営と来場者の消費が、総額8,520万ドル(139.3億円)の経済効果と5,010万ドル(81.9億円)のGVAを生み出したことが示された。運営開始からの18か月間で、この円形劇場は624人のフルタイムおよびパートタイムの雇用を支援し、1,023人の個人に収入機会を提供した。市外からの来場者の支出だけでも7,680万ドル(125.6億円)の生産効果を生み、501人の雇用を支え、宿泊施設に1,000万ドル(16.3億円)、レクリエーションとエンターテインメントに680万ドル(11.1億円)、飲食に650万ドル(10.6億円)、小売に530万ドル(8.6億円)と、主要な地元産業に直接資金が投入された」と、同レポートは詳述している。

 2022年にハンツビル初の音楽担当官者となったマット・マンドレラ氏は、このレポートは「市長の音楽イニシアチブにとって大きな勝利です。私たちは脇目も振らずに一生懸命働いてきました。そしてついに、(音楽の取り組みが)機能しているだけでなく、期待を上回っているという、確固たる具体的な証拠を得たのです」と述べている。

 またレポートでは、ハンツビルのダウンタウンにある「フォン・ブラウン・センター」(8つのフレキシブルな会場を持つライブ・エンターテインメントの拠点)にも焦点を当てている。同施設は2025年だけで、推定3,750万ドル(61.3億円)の総経済効果と530万ドル(8.6億円)の地方税を生み出し、3,590人の雇用を支えた。さらに、【サウス・スター・ミュージック・フェスティバル】の初開催についても取り上げている。このフェスは、悪天候により2日間の日程の2日目を中止せざるを得なかったにもかかわらず、地域経済に2,410万ドル(39.4億円)の押し上げ効果をもたらした。

 調査が開始された2018年当時、ハンツビルにはオリオン・アンフィシアターやレポートで言及されたいくつかの会場が存在せず、市は他の主要な音楽市場に後れを取っていたとマンドレラ氏が米ビルボードに語る。「素晴らしい地元のアーティストはありましたが、大物アーティストを観るとなると、ナッシュビル、アトランタ、バーミンガムに行かなければならないという意識がほとんどの人の中にまだありました。つまり、非常に大きな経済効果を他都市に流出させていたのです」同氏はハンツビルがナッシュビルやメンフィスなどの音楽シーンが盛んな都市から車で数時間の距離にあることに触れ、「その効果をできる限り市域内に取り込めるようになったことが、おそらく最大の変化です」と述べた。

 ライブ音楽やパフォーマンス・スペースなどの興行活動が主導する音楽エコシステムは、市内で2,400以上の雇用を直接支援しており、その数は2018年以来145%増加している。これらの雇用は市の労働人口の2%強を占めるに過ぎないが、他の経済部門の人材確保・定着にも寄与しているととマンドレラ氏は指摘する。ハンツビルには、NASAのマーシャル宇宙飛行センター、米陸軍航空ミサイル司令部、ボーイングの事業所、そして全米最大級のFBI施設がある。

 「ボーイングやNASAのような組織から高給を提示される優秀な人材は、通常、どの拠点で生活するかを選べる立場にあります。だからこそハンツビルがそうした人材にとってより魅力的であるためには、彼らが“午後5時以降にできること”が必要だったのです」とマンドレラ氏は語る。同氏によれば、ハンツビルのFBI事務所は新任者向けの案内資料にオライオン・アンフィシアターの写真を使用しているという。「音楽はどの都市も魅力的にします。そして地域が望む形でそれを実現することが本当に重要なのです」

 マンドレラ氏は、このレポートが全米の他のミュージック・オフィス、とくにAMO加盟組織にとっての設計図となることも期待している。「AMOの観点から言えば、各州のミュージック・オフィスはこのレポートを活用して、上層部に対し“可能な限り多くの都市にミュージック・オフィスを設立すれば、このような具体的な見返りが得られる”と示すことができます。すべての州が異なる都市に5つのミュージック・オフィスがあると想像してみてください。潜在的には、音楽経済全体をシフトさせる可能性があります」と彼は語る。

 レポート全文はこちらから確認できる。


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