<ライブレポート>Mrs. GREEN APPLEが刻んだ現在地、そして開拓地へ――前人未踏のスタジアムツアー完走

2026年7月13日 / 18:00

 Mrs. GREEN APPLEのスタジアムツアー【ゼンジン未到とイ/ミュータブル~間奏編~】の最終公演が7月4日、5日、東京・MUFGスタジアム(国立競技場)で行われた。

 同ツアーは、4月と7月にMUFGスタジアムで4公演、5月に大阪・ヤンマースタジアム長居で2公演の全6公演で開催。MUFGスタジアム(国立競技場)での4公演開催は、今年5月で活動を終了したアイドルグループ嵐に続き史上2組目、バンドとしては史上初となる。 ヤンマースタジアム長居での2公演と、7月のMUFGスタジアム(国立競技場)の2公演は、ファンクラブ『Ringo Jam』の会員限定公演として行われた。

 ”ゼンジン未到”は2014年から行っている自主企画ライブシリーズ。第1回目から徐々に規模を拡大し、今回は国立競技場4公演を含むスタジアムツアー。文字通り、前人未踏の偉業と言っていいだろう。

 7月4日の東京の最高気温は27℃。空は厚い雲に覆われていたが、心配された雨は降らず。蒸し暑さはあるものの、ときどき涼しい風が吹き抜け、快適な環境だ。スタジアムを埋め尽くした観客はまさに老若男女。親子連れも多く、ミセスの音楽が幅広いリスナーに受け入れられていることが実感できた。

 開演1分前にはスクリーンでカウントダウンがスタート。「10、9、……0!」というJAM’S(ファンネーム)の声とともにライブは幕を開けた。まずは大自然のなかで鳥が飛び立ち、キリン、ゾウ、ライオンなどが疾走するダイナミックなCG映像が映し出され、ステージ中央に煌びやかな衣装をまとった大森元貴(Vo/Gt)、若井滉斗(Gt)、藤澤涼架(Key)が登場するとスタジアム全体から凄まじい歓声が巻き起こる。

 若井のギターフレーズから始まったオープニングナンバーは「Magic」。華やかなメロディと力強いサウンドが響き渡り、サビのフレーズはJAM’Sが大合唱。カラフルな映像と照明によって会場全体が発光し、ステージ前方からは色彩豊かな火花が発射される。「ゼンジン! 楽しむ準備はできるか? 声は届いてるか? 愛は届いてるか!? みんなの声、届けて。もっと!」と呼びかける大森もこの記念すべきステージを全身で楽しんでいるようだ。

 さらに大森の強靭なハイトーン・シャウトが鳴り響いた「私は最強」、2014年リリースに自主盤としてリリースされたミニアルバム『Introduction』収録曲「スターダム」へ。時間は過ぎていくし、人は誰でも生まれては死んでいく。だからこそ、失いたくないものを掴んでいたい――この曲に込められたそんな思いは、今もなおミセスの根底に流れている。

「【ゼンジン未到とイ/ミュータブル~間奏編~】へようこそ! ファンクラブ限定の国立競技場だからね。正真正銘のJAM’Sしかいないってことだよ? どっちの方が愛が深いか、勝負だよ。準備はできてますか?」(大森)

「JAM’S、もっと声出せるか! どんどん上げていこうと思うけど、ついてこれますか!」(若井)

「みんなに会えるの楽しみにしてきたんだけど、楽しむ準備できてますか!」(藤澤)

 ファンとのつながりを感じさせるMCを挟み、様々な時期の楽曲が放たれる。2015年のメジャーデビュータイミングでリリースされた「StaRt」ではコーラスパートを観客が歌い、ハンドクラップで演奏に参加。「アボイドノート」では緻密なギターリフとパーカッシブなドラムがさらなる高揚感を生み出し、繊細なピアノから始まった「アポロドロス」では激しさ、ストイックさ、壮大さを1曲のなかで表現し、バンドとしてのポテンシャルを見せつける。そして「familie」では、「楽しんでますか? 後ろのほうまで行っていいですか?」と大森がアリーナをぐるりと囲む花道へ。大らかなメロディラインがゆったりと広がり、〈心が帰れる場所/愛しのファミーリエ〉というフレーズでメンバーとファンの心理的な距離が縮まり、会場が一つになっていく。

 ダンスミュージックの機能を高めた「Carrying Happiness」で心地よい多幸感を演出した後は、メンバーのソロコーナー。若井がハードロック~ヘヴィロック直系のギターソロをぶちかまし、藤澤がフルートでクラシカルな旋律を奏でる。そして大森は「BFF」を弾き語り、最後は「Variety」の一節に繋げた。「Variety」はデビュー10周年記念ライブ【MGA MAGICAL 10 YEARS ANNIVERSARY LIVE ~FJORD~】で披露され、ドキュメンタリー映画『MGA MAGICAL 10 YEARS DOCUMENTARY FILM ~THE ORIGIN~』で制作の過程が公開された楽曲で、歌うことの意味、自らの存在や死生観が感じられるミディアムナンバー。〈貴方を待っているんだ ここで〉と歌いながら観客を指さした大森の姿は、すべてのJAM’Sの心に強く刻まれたはずだ。

 気が付けばすっかり日が暮れ、国立競技場は夜の帳の中。音楽は鳴り止むことがなく、この後もシームレスに楽曲が重ねられる。まずは“ノイズが混じった宇宙からの通信”と称すべきSEからはじまった「ANTENNA」。まるで銀河のような映像、星型の花火が打ち上げられ、ミセスのエンターテインメントがド派手に立ち上がる。続く「クスシキ」ではライトスティックが赤く染まり、上空を緑のレーザーが飛び交う。アウトロでは大森が“ゆいゆいゆい~”と歌いながら手を揺らし、ステージ前方に上がる火花も同じように揺れている。細部まで完璧にこだわり抜かれた演出だ。シリアスかつダークな音像を会場のあちこちで立ち上がる炎が彩り、若井の鋭利なギターソロが鳴り響いた「Loneliness」を挟み、大切な人に向けられた「Dear」へ。「愛してるよ!」と叫ぶ大森に向けて、会場全体から大きな歓声が上がる。そして「僕のこと」。努力が報われないこともあるし、失敗すること、間違うこともあるだろう。それでもなお、僕らが辿ってきた道は美しいはずだ――そんな切実なメッセージを高らかに響かせ、豊かな感動へと結びつく。すべての言葉を手渡すように歌い、最後は大らかなカタルシスへと導いてくれる大森の歌唱力に圧倒されてしまう。

 「ナニヲナニヲ」は2015年リリースの2ndミニアルバム『Progressive』収録曲。激しく打ち鳴らされるドラム、キャッチ―で煌びやかなギターフレーズによって、ライブの熱量は一気に上がっていく。ミセス流ギターロックの最高峰「ライラック」ではライトスティックが美しい紫になり、青春という季節にぴったりの爽やかなメロディを際立たせる。〈あの頃の青を/覚えていようぜ〉から始まるオーディエンスの大合唱も気持ちいい。さらに今年1月にリリースされた「lulu.」。大森と若井が向き合ってイントロのフレーズを弾き、〈終わりが来たら/なんて言おう〉と歌い始めた瞬間、客席から驚きと喜びに満ちた声が上がる。ノスタルジックな旋律、過去と現在と未来を温かい希望でつなぐような歌詞が一つになったこの曲は、新たなライブアンセムとして浸透することになりそうだ。

 「ゼンジン、回ってきましたね。ツアーで4日間、国立競技場でやるってすごいことですからね。みなさんのおかげです。……JAM’Sのおかげですね」と改めて感謝を伝える大森。さらに映画『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』の日本版主題歌「Brand New」や現在制作中のニューアルバムのこと、「フェーズ3」以降の活動について3人でトーク。わちゃわちゃとした仲の良さもこのバンドの魅力だ。

 「右手に青、左手に夏。二つ合わせて、青と夏!」(若井)というコールから始まった「青と夏」でライブは一気にクライマックスへと向かう。軽快でしなやかなグルーヴが楽しい「コロンブス」では若井と藤澤が花道へ。「ゼンジン! どこまでも行こうぜ、永遠に一緒にね!」(大森)という言葉に導かれた「GOOD DAY」では、モータウン的なサウンドのなかで〈明るい希望を謳うのはダサいこと?〉というラインがゆったりと広がり幸福なバイブスに包まれた。

 本編ラストは「ダーリン」。ピアノと歌で静謐に始まり、徐々にスケールが大きくなっていくこの曲は、一昨年12月25日に放送された『Mrs. GREEN APPLE 18祭』(NHK総合)のテーマソングとして書き下ろされ、日本全国の18歳世代から集められた本音と向き合いながら制作された楽曲。葛藤や挫折、その先のあるはずの光を高らかに歌い上げたこの曲は、7万人のJAM’Sの感情を大きく揺らし、奥深い感動へとつながっていった。終盤には国立競技場の外から会場を取り囲むように無数の花火が打ち上げられ、すさまじいスペクタクルが出現。エンディングにおける、観客全員の大合唱にも強く心を揺さぶられた。

 鳴り止むことがない拍手と歓声に導かれ、メンバーが再びステージへ。アンコールの最初の曲「CONFLICT」は、活動初期から存在していた楽曲であり、ゼンジン・シリーズに欠かせないナンバー。葛藤を抱えたままで進んでいくという決意を刻んだこの曲を国立競技場で演奏することの意味をいちばんわかっているのは、会場に足を運んだJAM’Sたちだろう。大森がアコギを奏でた「風と町」はNHK連続テレビ小説『風、薫る』の主題歌として制作された新曲。フィドル、ハモンドオルガンを取り入れたカントリー・テイストの音像、日々の営みに思いを寄せる歌詞がじんわりと伝わってきた。

 「フェーズ3は、現在地を大事にしようということを掲げて始まって。それはもちろんそうなんだけど、始めて半年以上経って思うことは、まだ見ぬ開拓地に進んでいきたいなって。僕らはまだまだハングリーで、楽しいことを探して、みんなに音楽を届けることが生きがいで。僕ら自身も想像がつかないところに、みんなと一緒だったらいけそうな気がするんだけども、一緒にいってくれますか? ミセスにしか出来ないことをやり続けようと思ってます。時代が変わろうとも、一緒にみなさんと歳を取っていきたいなって思ってます。いいですか?」(大森)

 そんな言葉とともに届けられた最後の曲は「ケセラセラ」。なるようになる。そんな思いをとともに日々をがんばるすべての人に向けられたこの曲が、ここにいるすべての人たちに共有されていく。この日いちばん大きいシンガロングともに演奏された「ケセラセラ」はまちがいなく、このツアーの充実ぶりを象徴していたと思う。

 最後にメンバー全員で感謝を伝え、ライブは終了。夜空にはドローンによる「Ringo Jam 10th」の文字とロゴマークが浮かんでいた。最新鋭のテクノロジーを活かした演出も素晴らしかったが、言うまでもなく、中心にあるのは音楽そのもの。切実で普遍的なメッセージが込められた歌詞、ジャンルを超えたポップネスに貫かれたサウンド、そして、メンバー自身が放つ歌と声と演奏をダイレクトに受け取れたことこそが【ゼンジン未到とイ/ミュータブル~間奏編~】の意義だったのだと思う。

Text by 森朋之
Photo by 田中聖太郎写真事務所、Andrew Timms、Jordan Hughes、Jordan Munns、Matty Vogel

◎公演情報
【ゼンジン未到とイ/ミュータブル~間奏編~】
4月18日(土)東京・MUFGスタジアム(国立競技場)
4月19日(日)東京・MUFGスタジアム(国立競技場)
5月4日(月)大阪・ヤンマースタジアム長居※FC限定公演
5月5日(火)大阪・ヤンマースタジアム長居※FC限定公演
7月4日(土)東京・MUFGスタジアム(国立競技場)※FC限定公演
7月5日(日)東京・MUFGスタジアム(国立競技場)※FC限定公演


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