エンターテインメント・ウェブマガジン
MCのR-指定と、DJのDJ松永による1MC&1DJユニット、Creepy Nuts。「Bling-Bang-Bang-Born」や「オトノケ」の世界的なヒットや、東京ドームでの単独公演など、日本を代表するヒップホップグループとして確実な存在感を示す彼らが、初となる北米ツアー【Creepy Nuts NORTH AMERICA TOUR 2026】を開催した。
米カリフォルニア州インディオで開催される世界最大級のフェス【コーチェラ・バレー・ミュージック&アート・フェスティバル2026】のGobiステージでトリを飾った4月10日を皮切りに、13日にニューヨークシティ、15日にシカゴでワンマンを開催。17日には再び【コーチェラ】の舞台に立ち、国境を越えた19日のメキシコ・メキシコシティでのワンマンまで、10日間で5公演、総移動距離約1万kmに及ぶハードな行程を駆け抜けた。本稿では、その中からニューヨーク公演を軸にレポートを構成する。
【コーチェラ】でのトリを飾るという偉業を果たしたCreepy Nuts。その内容の充実ぶりは、会場はもちろん配信でも話題を呼んだ。さらに、米ビルボード『Best Moments From Coachella 2026 Day 1』の記事中で「Creepy Nuts ‘Rap Really F-king Good’ at First North American Show」として選出と解説がなされるなど、メディアからも称賛を集めた。
その勢いのまま西海岸から東海岸へと大陸を横断し、13日にはニューヨークでワンマンライブを開催。会場の「Hammerstein Ballroom at Manhattan Center」は、開業から約120年を誇る由緒正しいホールだ(ちなみに、シカゴ公演の会場「The Auditorium」も137年の歴史を持つ)。
会場の明かりが落ちると、スクリーンには今回のツアービジュアルを皮切りに、渋谷のスクランブル交差点、上空を飛ぶ飛行機、NYの地下鉄、抽象的なグラフィックなど、本ツアーのコンセプトを象徴する映像群が次々と投影されていく。そして「APR 13 NEW YORK CITY」の文字が映し出されると、会場からは「Creepy Nuts!」コールと大歓声が沸き起こった(グループ名を呼ぶコールは、シカゴやメキシコ公演でも同様に見られた光景だ)。その熱狂の中、ステージにCreepy Nutsが登場。DJ松永がターンテーブルをスピンしビートを放ち、「NEW YORK, Are you ready!?」というR-指定のシャウトを合図に、ライブは「ビリケン」から幕を開けた。
今回の北米ツアーに限らず、フェスなど日本でのライブでも1曲目に選ばれることが多い「ビリケン」。その幕開けは、日本で培ってきた“沸かせ方”を北米の観客にも提示する構図だったと言える。同時に、曲中で〈あの娘の夢枕に立ち/筆走らせ海を渡り/もういつの間にこの地の神〉と歌われるように、ビリケンはもともとアメリカで生まれたキャラクターが日本へ渡り、神様として定着した歴史を持つ。その意味では、この曲の披露はビリケンにとって母国への“里帰り”でもあった。また、ニューヨーク発祥のヒップホップが日本の風土で“日本語ラップ”として育ち、その系譜にあるCreepy Nutsが同地で公演を行うという事実も同様の流れを汲んでいる。故に、この楽曲を披露することは、クロスカルチャーの連続性や歴史的背景の交差を象徴していたと言えるだろう。
そして会場が一体となってジャンプした「よふかしのうた」、定番となった冒頭のコール&レスポンスから始まり、R-指定のタイトなラップと共に、ブレイクパートだけではなくサビ前でもスクラッチでリズムを作るDJ松永のコンビネーションが冴えわたる「堕天」へと展開し、会場の熱気は高まっていく。
「What’s up NY! We are Creepy Nuts! I’m on fire, I’m R-Shitei, He is DJ Matsunaga. (会場からの声に)松永さんって聞こえたぞ。ジャパニーズOK? 日本からやってきたCreepy Nutsです、よろしくお願いします!」と挨拶をするR-指定。客席からの「最高!」という声に「ニューヨーク最高!」と応じるなど、日本語と英語を交えて的確にフロアとコミュニケーションをとっていく。さらにカンペを読み上げながら、「Yesterday at pizzeria, someone said, are you samurai? I said no samurai, no ninja, no Shohei Ohtani」というMCから「japanese」へと突入。日本と、特に欧米とのカルチャーギャップを戯画化する楽曲でも、フロアが盛り上がる光景は興味深い。
また、「LEGION」や「ちゅだい」といったR-指定のパーソナリティと深く結びついた楽曲でも会場は大きく揺れ、特に「LEGION」のトラップ的なダウンビートに合わせて観客が踊る姿が印象的だった。さらに「doppelgänger」において、DJ松永のクリエイトするハードビートに対し、R-指定が細かくラップを重ねることで生み出すタテ乗りのダンスビートに呼応して、多くの観衆がモッシュ的に踊る光景もあった。これらは前述の米ビルボードがCreepy Nutsのライブを「ザ・プロディジー、スクリレックス、コーンからのインスピレーションを感じる」と評したように、現地のオーディエンスがCreepy Nutsをハード・ダンス・ミュージックの文脈で楽しんでいるという、日本とは異なる新鮮な驚きを伴うものだった。シュアなスクラッチが光るDJ松永のターンテーブル・ルーティンでも、使用するビートが明確にハードダンス方向へ振れていることからも、その親和性と連続性が窺える。そして、ひときわ大きな大合唱が巻き起こり、無数のスマホカメラが掲げられたのは、やはり「Bling-Bang-Bang-Born」だ。その光景は、この楽曲がいかにワールドワイドな人気を博しているかを如実に物語っていた。
「So hot! So amazing! DJ Matsunaga, his technique is so good, my English not good, but my rapping is so f**king good! 俺たちCreepy Nuts、アメリカで初のツアーを開催しています。その最初の場所が、ここNY。ありがとう! NYのお客さんはめっちゃすごい盛り上がって最高。みんな熱い! SO GOOD.」と、英語と日本語を織り交ぜながら、興奮冷めやらぬ様子でオーディエンスへ語りかけるR-指定。さらに「ここからまだまだ一緒に楽しい時間を過ごしたい。Let’s enjoy together, let’s excite together. Let’s dance together.」と続け、会場との一体感をより一層高める。
そのライブの後半戦は「dawn」から幕を開けた。四つ打ちのビート上でDJ松永がターンテーブルプレイによってメロディパートを構築し、R-指定もゆったりとしたフロウでラップを乗せ、オーディエンスは心地よさそうに身体を揺らす。そこから、低い温度のラップとハイトーンを織り交ぜた独特の音程で歌い上げる「エマニエル」、オリエンタルなトラックにマンブルラップにも近いアプローチを乗せた「Mirage」、そしてクリアなラップが印象的な「眠れ」と、ラップのスタイルを変えながら、“クリエイション”を横断的なテーマとする3曲を立て続けに披露した。そして「かつて天才だった俺たちへ」「二度寝」へと展開。海外公演で改めて聴くと、特にこの2曲に込められたメッセージ性は、日本だけではなく全人類に通じる、非常に普遍性の高いものだと感じさせられた。それは「かつて天才だった俺たちへ」で大きく左右に振られる手や、「二度寝」でのクラップなどを通して、その意味合いはオーディエンスにも伝わっていることが見て取れた。
また【コーチェラ】week2に加え、メキシコ公演では新曲「Fright」が披露された。新曲ということもあってか、メキシコではスタートこそ聴き入るリスナーが多かったが、曲が進むにつれて手が上がっていき、ラストは一体化する光景が見られた。それがテーマや言葉の壁を超え、「パフォーマンス力」でCreepy Nutsが観客を引っ張っていったことを実感させられる一幕だった。
「It’s so crazy time! 最高! ありがとうございます!ここからは日本語で喋るけど、わからない人はソウルで聴いてください。Creepy Nutsは日本でラップとDJと自分たちの音楽を突き詰めてきました。 そして色んな道を経て、NYでワンマンすることができて、めちゃくちゃ嬉しい。Next time, we want to take it to the next level.」というMCから、「In English “room for growth”, this is how we say in Japanese, “NOBISHIRO”!」とマイクパフォーマンスし、ライブは「のびしろ」へと突入していく。そして「アンコールは普段は無いけど、『おかわり』します」という言葉から再び「Bling-Bang-Bang-Born」へ。割れんばかりの大合唱に包まれてショーは幕を閉じた。
どの会場でも鳴り止まない歓声が、その成功を何よりも雄弁に物語っていたCreepy Nutsの初となる北米ツアー。また、オルタナティブR&Bシーンの世界的潮流を牽引するザ・ウィークエンドが開催中のグローバルスタジアムツアー【After Hours Til Dawn】において、9月20日の埼玉・ベルーナドームからスタートするアジア各国公演への参加も決まり、新たなアプローチを展開していくこととなる。これらの動きを経たうえで、今後彼らがどのような楽曲を生み出し、対“世界”を踏まえてどう提示していくのか、興味は尽きない。
Text:高木”JET”晋一郎
Photo: Hiroya Brian Nakano, umihayato
Retouch:Hiroya Brian Nakano
◎リリース情報
シングル「Fright」
2026/4/10 DIGITAL RELEASE
◎公演情報
【The Weeknd: After Hours Til Dawn Tour】
2026年9月20日(日) 埼玉・ベルーナドーム(西武ドーム)
開場 15:00 / 開演 17:00
SPECIAL GUESTS:Creepy Nuts / ¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$U
※「SPECIAL GUESTS」の出演は開演時間からを予定
J-POP2026年5月22日
浜野はるきの新曲「好意症」が、本日5月22日に配信スタート。あわせて同曲のミュージックビデオも公開された。 本楽曲は、1番苦しかった恋愛を今の浜野はるきが描いたヘビーな初恋ラブソング。 今回MVには、若手俳優の村並莉久が出演。「好意症 … 続きを読む
洋楽2026年5月22日
シエナ・スパイロのデビュー・アルバム『ビジター』が2026年7月3日にリリースされることが発表になり、デジタルアルバム、国内盤CD、輸入盤(CD、レコード、カセット)の予約受付がスタートした。 国内盤CDは「百万人に一人の逸材」と評され … 続きを読む
洋楽2026年5月22日
サイモン&ガーファンクルの初期の代表作『パセリ・セージ・ローズマリー・アンド・タイム』の発売60周年を記念して、日本独自企画の7インチ紙ジャケットSACDハイブリット・エディションが2026年7月8日にリリースされる。 SACDハイブリ … 続きを読む
洋楽2026年5月22日
“キング・オブ・ポップ”=マイケル・ジャクソンの軌跡を描く映画『Michael/マイケル』。日本公開を目前に控えた6月4日に開催されるジャパンプレミアに、本作のキャストと製作陣から4名の登壇が決定した。 来日するのは、主人公マイケル・ジ … 続きを読む
J-POP2026年5月22日
坂本真綾が、7月29日にアルバム『余韻』をリリースする。 今作のDisc1には、2015年にスマートフォン向けRPG『Fate/Grand Order』のローンチに伴いリリースされた主題歌「色彩」から、2025年に発表された最終章主題歌 … 続きを読む