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詩音(Vo.)と木天蓼(Composer)による2人組バンド・秘めごとが、4月25日に東京キネマ倶楽部にて単独公演【狼煙】を開催した。
公演タイトルにも掲げられたEP『狼煙』は、3月18日にデジタルリリース、この日ライブ会場限定CDとしても発売された。チケットはソールドアウトで、会場いっぱいに観客が詰めかけた。
ステージ上には、スタンドにセットされた拡声器、アンティーク調のランプ、木天蓼こと黒猫のパネル。サブステージには赤い秘めごとの旗が掲げられ、元キャバレーである会場の風情と相まって、開演前から独自の世界観を浮かび上がらせていた。
カノンがSEで流れ、暗転。時計の針を刻む音が響くなか、楽器隊が登場し、インスト曲「羊時計」でそれぞれの音を重ねていくと観客の手拍子が自然と沸き起こる。すると、詩音が颯爽とステージへ登場。「秘めごと、いきます」という一言とともに、「生命線」でライブの幕が開いた。深くキャップをかぶった黒い衣装、ハンドマイクで歌うミステリアスな佇まい。それでいて歌声はアンサンブルの中心を切り裂くように澄んでまっすぐに届く。続く「夜行虫」では「いける?」と詩音が客席に投げかけ、観客は手を振り上げ、自然発生的に「オイ、オイ」というコールが起こり、会場は早くも一体感に包まれていった。
「改めましてこんばんは、秘めごとです」。詩音は丁寧に挨拶し感謝を述べると、「これまでのことを振り返りながら、見つけてくださったみなさんに、いままでとこれからを届けていきたいと思います。素敵な夜にしましょう」と語った。
ミドルテンポの「漂流者」ではリズミカルな演奏に乗って泳ぐように歌い、観客を魅了。詩音の歌い出しから始まるエモーショナルな「蜃気楼」では、ピアノのアウトロが余韻を引き、深い静寂を残す。グルーヴィーな「MEW」ではメンバーたちの演奏が観客の体を心地よく揺らし、客席の手も左右に揺れていく。ピアノが静寂に響きわたるなか、「花占い」がじっくりと歌い上げられ、活動初期に発表された「狼と羊」へ。ピアノの伴奏に導かれ、アコースティックギター、ドラム、ベース、エレキギターと音が重なり合い、一声一声を刻むように歌い上げる詩音の声と相まって、楽曲は壮大なスケールへと広がっていった。
「個人的にいつかやってみたいな、世界観を表現したいなと思っていた場所だったので、今日ここで開催できたことが本当に嬉しいです。これまでで最大キャパでのライブでもあって、ひとつの挑戦で、不安もありました。でも、今日こうしてステージに立って、みんなの笑顔を見たら、そんな不安も吹き飛びました」
ここで詩音がMCで会場への思いを語った。秘めごとは2026年に入って東京でのライブはこの日が初めてだという。「今日のために、いろいろ準備してきたので、引き続き楽しんでいきましょう」。そう語ると、拡声器を手に取った詩音が、跳ねるビートの上で伸びやかな声を響かせる「君疾風」へ。エレキギターのアルペジオから始まる「逃亡者」、一転してピアノの伴奏から始まる「リンネ」へ。途中、スタンドの拡声器に持ち替えて歌う詩音。グルーヴィーなリズムとフィードバックノイズの渦が会場に蕩けるような空気を作り上げ、観客たちはその世界観に静かに聴き入る。
詩音はそのままサブステージへ移動。椅子に腰掛け、アンティーク調のライトを灯す。アコースティックギターとバンドのアンサンブルが奏でられるなか、青い逆光のなかで「カフカ」を丁寧に歌い上げた。アコースティックギターの調べとカホンの音色が会場に染み渡るなか、赤いライトに照らされた詩音は「白昼夢」を歌う。アコースティックでミニマルな音像のなかから、その声が静かに浮かび上がっていった。
「みなさん楽しんでますか?」。詩音の問いかけに大歓声が起こる。3月18日にリリースされたEPを抱えてこの日を迎えた、と詩音は語り始める。「今回のEPは、一時期SNSで投稿していたショート動画から完成させた曲が多くて。いろんな時期に作って、完成させた楽曲が並んでいます。30秒とか1分間の世界を広げて1曲に作っていくというのが初めてで、これまでの楽曲制作とは違う難しさもあったし、作った時期も違えば、感じていた感情もそれぞれ違う。だからこそ、いろんな楽曲ができたし、さまざまな状況で寄り添えるEPになったんじゃないかなと思っています」と作品について語った。
再び拡声器を手に、手拍子が起こるなか「劣等感」へ突入。「歌って!」とマイクを客席に向け、観客のシンガロングを誘う。拡声器とマイクを交互に持ち替え、高音の歌声も織り交ぜて表現力豊かに魅せていく。疾走感に満ちたロックチューン「シアン」では「オイ、オイ」とコールが起こり、続く「乱反射」へ。1時間半近く歌い続けているはずなのに、疲れの色は微塵もなく、むしろ声の幅が広がっていくようだった。
「今日の単独公演は【狼煙】ということで――遠くからも見える合図のように、ここからまた始めるぞ、ここから巻き返していくぞという決意の狼煙と反撃の狼煙を上げにきました」。詩音は、木天蓼と二人で始めて、ゼロからのスタートだったこと、「狼と羊」を放った当初はライブをしない方向だったけれど、少しずつ見つけてくれる人が増えてライブをやってみようということになり、また出会ってくれた人も増えていったこと、ひとつひとつの歩みを確かめるように語った。
「楽器隊のメンバー、スタッフさん、ここにいる秘め員(※ファンの総称)たち、関わってくれる一人ひとりのおかげで、いまがあると思っています。今日の狼煙は、ここにいる全員で上げたい狼煙です。みなさん、力を貸してくれますか? まだまだいけますか?」
観客たちの歓声が起こる中、楽器隊一人ひとりの激しいソロプレイから、「まだまだ楽しんでいきましょう!」と「愛愛愛」へ突入。ダンサブルな楽曲で、会場の熱はさらに高まっていく。詩音が手拍子を促し、「くそ」と小さく呟いてから「新世界」へ。ライブ映えする骨太なバンドアンサンブルに、スタンドの拡声器も駆使しながら表情豊かに歌い上げていく。「みんな一緒になってください!」という呼びかけの中、疾走感に満ちたロックソング「ハウル」へ。マイクを客席に向け、掛け合うように歌い、さらなる一体感を作り上げていった。
スタンドにマイクをセットし、詩音は客席を見渡しながら静かに語り始めた。「秘めごとは『私を見つけてください』という言葉を掲げて始めて、その言葉は、無意識のうちに自分自身を見つけるために、いつも自分自身に問いかけていた言葉だったのかなと思っています。人前に立つのは得意じゃないけど歌は届けたくて、目立ちたいけど目立ちたくなくて、自分に自信を持てないくせに大の負けず嫌いで――そういう自分の矛盾した部分が多くて。本当の自分って、やりたいことってなんだろうと思っていた時期もありました。でも、伝えたいことを歌で表現して、それを受け取って返してくれるみんながいて、直接感じられるライブという場所があって、なんだかんだ歌い続けてきて、ここに立っている自分が本当の自分で、やりたかったことなんだと実感することができました。何度でも言わせてください。みつけてくれて、ありがとう」。会場が大きな拍手に包まれる。
「でも、まだまだみなさんと一緒に見たい景色もあるし、見せたい景色もあって。ライブの本数は多くないけど、これからも一緒に歩んでください。今日はちゃんと未来に繋げていきます。アンコールなしです。本当にありがとうございました」
ピアノの伴奏に乗せて、「蒼き春」へ。ライトに照らされたサブステージにはストリングス隊の姿が。さらに、楽曲が進むなかで天井から白い紙吹雪がゆらりゆらりと舞い落ちていく。ライトに照らされたその光景は幻想的で、神々しくさえあった。詩音は深々とおじぎをし、アンサンブルが鳴り続けるなかステージを後にする。弦楽器とバンドの演奏が荘厳に会場を包み、観客の拍手とともに鳴り響くなか、ライブは大団円を迎えた。
誰もいなくなったステージのスクリーンに映像が映し出される。「大切なお知らせ」という文言とともに告げられたのは、バンダイナムコミュージックライブ内の音楽レーベル・MoooD Recordsからのメジャーデビュー決定の報せだった。7月8日にメジャー1stミニアルバムをリリースし、収録曲から「リンネ」が4月26日に先行配信されること、最後には「みつけてくれて、ありがとう」という詩音と木天蓼からのメッセージが画面に浮かび上がった。秘め員たちの鳴り止まない拍手とともに、新たな章の狼煙を高らかに上げる、秘めごとにとって記念すべき一夜となった。
Photo by ヨシハラミズホ
◎公演情報
【秘めごと 単独公演 「狼煙」】
2025年4月25日(金)
東京・東京キネマ倶楽部
【秘めごと LIVE TOUR 2026 「森羅」】
2026年7月19日(日) 神戸・クラブ月世界
2026年8月2日(日) 名古屋・新栄シャングリラ
2026年8月22日(土) 東京・I’M A SHOW
※チケット情報などは後日発表
◎リリース情報
ミニアルバム
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