<ライブレポート>原 由子、古都を舞台に45周年の旅路を軽やかに魅せたアニバーサリーライブ

2026年4月14日 / 17:00

 サザンオールスターズの原 由子が4月7日に神奈川・鎌倉芸術館 大ホールにて【伊右衛門 presents 原 由子 45th Anniversary Live「京都・鎌倉物語 2026」】の最終公演を開催した。ソロの代表曲、レア曲を含めたセットリストで満員の観客と共に大いに盛り上がり、大きな感動の余韻を残して4日間のライブを締めくくった。

 このライブは、2026年4月21日に原がソロデビュー45周年を迎えることを記念して、原の楽曲と深く関わりを持つ京都(3月31日・4月1日 ロームシアター京都 メインホール)と鎌倉(4月6日・7日 鎌倉芸術館 大ホール)でそれぞれ2日間ずつ行われたもの。4日間ともチケットはソールドアウトとなり、ファイナルとなるこの日は、全国の映画館にてライブ・ビューイングも実施された。

 鎌倉芸術館の近くでは、満開の桜が咲き誇り、原のアニバーサリーを祝福。前回から3年ぶりのライブということもあり、会場にはグッズを求める大行列ができ、熱気が充満していた。開演時間に暗転すると、客席からの手拍子に乗ってバンドメンバーが登場。サザンオールスターズの松田 弘(Dr)が先頭で姿を見せると、大きな歓声で迎えられ、斎藤 誠(Gt)、中 シゲヲ(Gt)、山内 薫(Ba)、片山敦夫(Key)、山本拓夫(Sax)、TIGER(Cho)、金原千恵子(Vn)がステージに上がった。続いて原が両手を振りながら登場してステージ前で客席に挨拶すると中央のキーボードに座り、松田がドラムスティックでカウントして「あじさいのうた」からライブがスタートした。あじさいの花を模した雨傘が天井から吊り下げられ、タイトなバンドサウンドの中、原の穏やかな歌声が会場の隅々まで広がっていく。続く「春待ちロマン」では爽やかな旋律に合わせて、スクリーンに桜の花が舞う海辺の街が描き出される。原の歌声を支えるバンドの包容力豊かな演奏が心地良い。そして、久しぶりのソロライブといえど、サザン、ソロを含めて長年ファンの心に宿っている原の歌声は変わることがなく、いつも瑞々しい。

 最初のMCでは会場とライブ・ビューイングの観客に感謝の言葉をかけると、「おかげさまで今年は『I Love Youはひとりごと』という、“衝撃のデビュー作”でソロデビューしてから45周年となります。サザンオールスターズでさえ、こんなに長く続けられるとは思ってなかったんですけど、ましてソロとして、それもこの年齢でライブができるなんて、自分が一番驚いております。みなさまのおかげです。今日は最後までよろしくお願いします」と挨拶。万雷の拍手を受けると、「それでは、最後の曲です」とボケて、バンドが全員ズッコケて会場も爆笑だ。

 大ベテランならではの余裕で観客を翻弄すると、「今日は歌っているときだけは年齢のことは忘れて、恋の歌を歌いたいと思っています」と、「恋の歌を唄いましょう」へ。金原のバイオリン、斎藤、中のギターカッティングが牽引するポップロックな演奏に乗って歌う原。山本のサックスソロが爽快に曲を締めると、続いて飛び出したのは、「シャボン」。寂し気な旋律とアレンジ、特にサビのこみ上げるメロディが秀逸で、なおかつ情景が浮かんでくる原の歌唱、表現力によって、改めて昭和歌謡曲、ポップス史に残る名曲だと感じさせられた。歌い終わると大きな拍手が沸き起こった。

 「恋の歌を唄いましょう」「シャボン」ともにサザンのアルバム収録曲ということもあり、サザンが6月で48周年を迎えることに触れると、自身について「気づいたら今年はなんと60代最後の年になってしまいました。私の周りには2月に古希を迎えた人がいるんですけれども、その人は“コキまくる”とか“一生青春”なんて言ってました。コキまくるはちょっとわかんないですけど(笑)、“一生青春”はすごく共感しますので、そんな気持ちで歳を重ねたいと思っています」と桑田佳祐を引き合いに出して、笑わせながらも力強く宣言した。

 『赤毛のアン』を題材にしたドラマのために書き下ろした「Anneの街」では純朴な心模様を、「少女時代」ではあたたかなライティングも相まってノスタルジックに、それぞれの歌の主人公が語るような歌の世界へと、共に鍵盤のまっすぐな打音から導かれた。前回のライブのきっかけとなった2022年のアルバム『婦人の肖像(Portrait of a Lady)』からの曲との紹介で、「鎌倉 On The Beach」へ。波の音から鮮やかなブルーの照明がステージを照らし、江ノ島の映像をバックに躍動感たっぷりに歌う原を、会場いっぱいの手拍子が盛り立てる。

 さらに、1stアルバム『はらゆうこが語るひととき』収録の宇崎竜童が作曲、サザンのベーシスト・関口和之の作詞による「うさぎの唄」では、昔話風のアニメと鳥獣戯画を思わせるイラスト、ステージ両端でエンヤ~トットと踊る頬かむりをしたパフォーマー、大きなうさぎの着ぐるみが登場して、ステージは『まんが日本昔ばなし』さながらの世界観に。そんな雰囲気をガラリと変えたのが、続くカリプソ風の楽曲「夕方Friend」だ。『Miss YOKOHAMADULT YUKO HARA 2nd』(1983年)のオープニングを飾る1曲で、なんとライブ初披露。曲間でメンバー紹介を挟み、それぞれがソロを回すと、TIGERが驚異のハイトーンを聴かせてどよめかせたり、松田のソロに怒涛の拍手が沸き起こったりと、ラテンテイストの演奏に乗せてそれぞれのプレイヤーの魅力が光るコーナーとなった。

 改めて1人1人について触れた原は、松田について、「やっぱり弘君がいると私は心強いです」と心境を明かし、4月4日に古希の誕生日を迎えたことを紹介すると、松田は、「原さんのライブですごくいいスタートが切れました。がんばります!」と意気込んだ。

 ここでアコースティック・セットとなり、原がアコースティック・ギターをセッティングする間、青山学院大学の後輩でもある斎藤が当時のエピソードを語る場面も。「いちょう並木のセレナーデ」では、アコギを奏でながら歌う原の背後に、そんな青春の日々を象徴するように、大きな木が立体的に映し出され、山本が吹くハーモニカが郷愁を掻き立てる。大木は「唐人物語(ラシャメンのうた)」でインスタレーションとなって様々な情景を映し出し、ストーリーテラーとなった原のボーカルに観客はじっと聴き入った。

 キーボードに戻った原は、「私はツアー以外では旅行に行くことは少ないんですけど、歌を歌っていると、その場にいたような気になったり情景が目に浮かんだりするから、本当に音楽の力って素晴らしいなと思っています」と語ると、「旅情」を歌い出した。背後の大木が枝葉をつけ色彩を変えていく。人生の旅路を思わせる演出と、独特の包容力豊かな歌い回しが、じんわりと胸を熱くさせる。江ノ電の踏切の音から「鎌倉物語」のイントロが鳴ると一斉に客席が湧いた。この日を最も象徴する1曲であり、サザンのアルバム『KAMAKURA』(1985年)で発表されて以降、ファンにとっては大切な楽曲だ。スクリーンに次々と映る鎌倉の景色と共に楽しませると、景色は「京都物語」へと移行する。ある日の日記を綴ったような「鎌倉物語」とは対照的に、ドラマティックなメロディと演奏が古都の情景でさらにブーストされる。舞妓風のダンサーもステージを艶やかに彩った。

 生まれて初めてリードボーカルを取り、その後のソロ活動に繋がった曲、そして「この曲がなかったら、きっと45周年のライブなんてできなかったと思います」との言葉から歌われたのは「私はピアノ」。出だしのコーラスパートと同時に客席からは手拍子が自然発生。ウェットなメロディで酔わせると、ラメ入りの煌びやかな衣装を着た男女のダンサーも登場して、ムード満点にアクセントを加えた。

 曲が終わるとすかさず、山内のベースがモータウンサウンド調に躍動的なビートを刻む。原が「それではそろそろ、盛り上がって行きましょうか!」と煽り、ライブアンセムともいえる「恋は、ご多忙申し上げます」が始まると、客席は一気に総立ちに。サビで〈Only you〉と歌い指をさす原に応えて、会場中から人差し指がステージに向けられて大盛り上がりに。2番では両手でクラップしながら歌う原、間奏ではギターの2人が原を挟んで演奏してさらに盛り上げる。そのまま「ハートせつなく」へとなだれ込み、観客は曲に合わせて合いの手を入れて会場一体となった。どんどん大きくなるクラップが誘発したようにステージ両端からスモークが炸裂して、「スローハンドに抱かれて (Oh Love!!)」へ。スクリーンにはエリック・クラプトンの姿がイラストで「CLAPTON IS GOD」の文字とともに描かれている。ステージからは思わず笑ってしまうぐらい豪快なスモークがガンガン吹き上がる。これぞロックンロールの真骨頂、ロックミュージシャンは非日常な世界にこそ存在するのだ。終盤、斎藤が弾くリフがデレク・アンド・ドミノス「いとしのレイラ」のイントロを思わせるフレーズへと変化すると、原がアウトロのピアノを見事な演奏でカバーして、最大級のリスペクトが捧げられた。原がハンドマイクでステージ前に出ると、銀テープが放たれ、「じんじん」が飛び出した。ダンサー4人が踊るGo-Goダンスに合わせて両手を上下に振って踊る原、客席で銀テープを手に踊る観客たち。鎌倉芸術館はカオティックな巨大ディスコと化した。

 アンコールではまずバンドメンバーが登場。インストヒット曲のザ・ベンチャーズ「急がば廻れ」(Walk, Don’t Run)を演奏開始。途中で金原がステージ前に出ると大歓声。ギターと共にバイオリンでメロディを弾き、「テケテケテケテケ~」も披露した。そこにピンク色のド派手なマラボーストールを首から提げた原が登場して、TIGERとともにザ・ピーナッツ「恋のフーガ」を歌い、双子ばりのハーモニーを聴かせると、ギターのイントロが鳴り「そんなヒロシに騙されて」へ。怒涛の畳みかけに観客は大熱狂となった。2番で〈そんなヒロシが そんなヒロシが そんなヒロシが〉とブレイクしながら原とダンサーたちがドラムセットに詰め寄り、頭を抱える松田“ヒロシ”に会場大爆笑。最後には〈そんな千恵子が そんな千恵子が そんな千恵子が〉と、金原がフィーチャーされて主役をかっさらい、歌い終えた原もしばし笑いが止まらず。

 「またいつかみなさまとお会いできる日を楽しみにしています。これからの未来が素敵なものでありますように、そんな気持ちを込めて最後にこの曲を歌わせてください」。最後に歌われたのは、「花咲く旅路」。〈世の中は ああ世の中は なぜこんなに急いてと流れゆく〉満開の桜の木を背にした原の歌声、幻想的なステージが創り出す曲の世界が、鏡のように聴く者の心を映し出し問いかける。演奏を終えた原とバンドに、万雷の拍手が贈られた。

 エンディングでバンドメンバー、エバトダンシングチームを紹介すると、「いろいろ大変なことも多い世の中ですけれども、穏やかな日々が続くことを願っております。平和じゃなきゃライブもできませんからね。今日は本当にありがとうございました!」と、全員で手を繋ぎ、感謝を伝えて終演となった。ソロデビュー45周年という長い旅路、人生の歩みを軽やかに、ユーモアを交えながら魅せた原 由子の、しなやかな強さに勇気づけられた、素晴らしいアニバーサリーライブだった。

Text by 岡本貴之

◎セットリスト
【伊右衛門 presents 原 由子 45th Anniversary Live「京都・鎌倉物語 2026」】
※2026年4月7日(火)神奈川・鎌倉芸術館 大ホール
1. あじさいのうた
2. 春待ちロマン
3. 恋の歌を唄いましょう
4. シャボン
5. Anneの街
6. 少女時代
7. 鎌倉On The Beach
8. うさぎの唄
9. 夕方Friend
10. いちょう並木のセレナーデ
11. 唐人物語(ラシャメンのうた)
12. 旅情
13. 鎌倉物語
14. 京都物語
15. 私はピアノ
16. 恋は、ご多忙申し上げます
17. ハートせつなく
18. スローハンドに抱かれて (Oh Love!!)~いとしのレイラ(Cover)
19. じんじん

20. Walk, Don’t Run(Cover)~恋のフーガ(Cover)~そんなヒロシに騙されて
21. 花咲く旅路


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