<ライブレポート>SCANDAL×日食なつこ 音楽とともに同世代の2組が見つめる社会のこと 【Grooving Night】×【Women In Music】

2026年4月10日 / 17:00

 3月15日、神奈川・ビルボードライブ横浜にて【Grooving Night Premium with Billboard JAPAN Women In Music】が開催された。今回のイベントは、「音楽・社会・人をつなげる」をテーマにした企画ライブ「Grooving Night」とWomen In Musicがコラボした公演で、今回は特別編として、これまでホストをつとめてきたSIRUPから初めてSCANDALにバトンをつなぎ、日食なつこをゲストとして迎えた。本稿では、第2部の模様をレポートする。

 最初にステージに登場した日食なつこは、グランドピアノに静かに向かい、「ビルボードライブ横浜を、SCANDALさんと、日食なつこの名の下に貸し切りにしています! 今日は楽しんで行ってください!」という宣言でライブをスタートさせた。1曲目に演奏されたのは、春の横浜にぴったりな選曲で「やえ」。曲の始まりはひらひらと、終盤では吹き荒れるような桜の景色が目に浮かぶような、鮮烈な音楽を響かせる。続く「風、花、ノイズ、街」ではサポートドラマーのkomakiを呼び込み、この会場にふさわしいものとして用意したという特別なドラムのミニキットにスタンバイ。日食とkomakiがステージで向き合う形で、軽快なビートと鍵盤の旋律が追いかけっこをするようなサウンドで楽しませてくれた。

 「julep-ment flight」ではジャジーなピアノの合間に、komakiが軽やかに口笛を披露するなど、ミニマムでアコースティックなライブだからこその繊細な表現が光る。後のMCでは日食が「ナイスな口笛でしたね、同じ音を今出せる?」とリクエストするとkomakiが「あれは一番緊張するんですよ」と言いながら曲中と同じように見事に吹いてみせ、観客から拍手が沸いた。その後も「ハイウェイは気にも留めない」で凛とした歌声と臨場感溢れるサウンドスケープを放ち、ラストの「水流のロック」へ。勇敢な言葉とメロディで会場の熱量を上げ、ピアノのリフとドラムの繊細なプレイをパズルのように組み上げて観客を魅了していく様が圧巻。観客は食事やお酒を楽しみながらのリラックス空間で、迫力と高揚感に満ちた日食なつこの爽快なステージを楽しんでいた。

 続いて、今回初めてイベントのホストを務めるSCANDALが登場。黒いシックな衣装で現れた4人は、この場所ならではのアコースティックアレンジで次々と楽曲を披露していく。1曲目の「ピンヒールサーファー」から全員が椅子に座ったスタイルで、RINAがカホンを叩いたりウィンドチャイムを鳴らしたり、繊細かつエネルギッシュな演奏が曲の新たな表情を浮き彫りにした。「会わないつもりの、元気でね」はアコースティックながら躍動感のある演奏で、アウトロではMAMIのギターソロも鮮やかに会場を彩った。

 MCでは「皆さん楽しんでいただけてますでしょうか? 今日、SCANDALを初めて観るという方は? 普段はあまりアコースティックライブをやらないんですけど、またどこかでお会いできたら嬉しいです。良かったらバンドセットも観てください」とHARUNA。そして落ち着いた大人な雰囲気のビルボードライブ横浜に、ぴったりの選曲だったのが「Soundly」。アンニュイなスローナンバーで、それぞれが楽器を愛おしそうに奏でながら〈今しかできないSoundに/ちょっとだけ乗っけたirony〉という歌詞が印象的だった。10代から共にバンド活動をしてきて30代になった彼女たちならではの成熟した空気感がこの場所と共鳴していた。

 そして最後は「ライブの定番曲ですが、今日はゆったり落ち着いて聴いてください」というHARUNAの言葉で「瞬間センチメンタル」へ。30代に入り「良い力の抜き方で歌えている」というインタビューでの言葉通り 、しなやかで安定感のある、今の彼女たちだからこそ奏でられる音だった。今年は結成20周年を記念して8月に大阪城ホール公演を開催するSCANDAL。ガールズバンドとして長く活動を続けてきた彼女たちの包容力と誇りを感じさせるパフォーマンスだった。

 ライブ後のトークコーナーでは、最初にSCANDALがパジャマ姿で登場。セットのベッドに腰かけてのパジャマパーティースタイルで、まずはライブの感想を。RINAが「楽しかったね」と言うと、HARUNAは「普段はバンドセットなので新鮮に感じてもらえたんじゃないかな」と続ける。そこからゲストの日食なつこもパジャマ姿で再び登場。3冊の本の中にトークテーマが書かれており、日食が最初に選んだのはブルーの本で「誰もが生きやすい社会のためにできることは?」と書かれていた。日食が「3月8日は国際女性デーということで。誰もが生きやすい社会のために、自分の腕の範囲内でできることは何かを考えていきたいですね。私は周りに気を遣いすぎてしまうので、あえてグダっとする瞬間を作って、みんなが入ってきやすい空気を作るようにしています」と話した。

 そしてTOMOMIが「私たちのファンの中にLGBTQの方も多くいらっしゃって。そういうことを当たり前のこととして気軽に話せる存在でありたいと思っています。海外でライブをすることもありますが、ジェンダーだけじゃなく、国籍も超えてコミュニケーションを取れる場所を提供することが、私たちの役割なのかなと感じる時があります」と続けた。

 会場のお客さんからいただいたアンケートからは、MAMIが「皆さんが衝動的にやって良かったなと思うことは何ですか?」という質問を読み上げた。日食が「国産レモンを食べたときに出た種を衝動的に20個ほど発芽させました。3年経って、1本が木になり、育てています」というエピソードを披露。一方RINAは「私は先月、車を買いました。自分に大きいお金や時間を使うのが苦手だったけれど、やってみようと思い衝動的に動きました。車があることで、いつでもどこでも行けるという気持ちをゲットできて嬉しいです」と語った。

 最後に盛り上がったのは、同世代の彼女たちによる「平成の思い出」トーク。モーニング娘。、ポケモン、プリクラ、前略プロフ、キリ番、魔法のiらんどなど、次々と飛び出すキーワードに、声を弾ませながら語り合う。それだけでなくHARUNAが「最後は日食さんと一緒に、スペシャルコラボで『Oh, Pretty Woman』のカバーをお届けします」と言い、セッションがスタート。音楽を通して、トークを通して、そしてパジャマで心の距離もグッと縮まった彼女たちの音楽が、会場全体を柔らかく温かな空気で包み込んだ。女性であること、そして社会と関わることを考えるきっかけになるようなテーマ性のあるイベントだけれど、お互いを知り音楽を楽しむというシンプルな喜びを感じられたことが、最も大切なメッセージとして伝わってきた。

 演奏が終わり「良い出会いでした」とHARUNAが言うと、日食は観客に向けて「これをきっかけに双方のアーティストをいろんな形で追いかけていただけたら!」とにこやかに話して締めくくった。夜景も美しい春の横浜を散歩でもしながら帰ろうか、と思えるような余韻が「Grooving Night」ならでは。今後も素敵なアーティスト同士の出会いやセッションを期待したい。

Text by 上野三樹
Photo by ヨシモリユウナ

◎公演情報
【<特別公演>Grooving Night Premium
with Billboard JAPAN Women In Music
SCANDAL × 日食なつこ】
神奈川・ビルボードライブ横浜
2026年3月15日(日)
1stステージ OPEN 15:00 / START 16:00
2ndステージ OPEN 18:30 / START 19:30


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