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シンガーソングライターのルイが、4月4日にワンマンライブ【鏡みたいですね】を渋谷Spotify O-Crestで開催した。
2023年夏の「ひとめ惚れ」配信リリースを皮切りに、いろんな愛情の形を描きだしてきたルイ。昨年秋には、弾き語りワンマンライブ【誰-DARE-】で“ルイとはなんたるか”と誠実に向き合い、今年2月にはミニアルバム『who』の制作を通して、自分らしい作風を追求すると共に人間の不確定さを映し出した。
「恋人や家族、友人のことを知ろうとすることは、結果的に自らを知るきっかけになる」といった気づきや「演者と観客はお互いのバイブスが影響しあうからこそ、同じ時間で過ごしていることを忘れたくない」という想いを、ライブタイトルの『鏡みたいですね』に託し、ひとつひとつの愛の形を肯定したのである。
老若男女が駆け付けた会場は、後ろまでギュウギュウに埋め尽くされて超満員。SEが徐々に大きくなっていくと、「もう待ちきれない」と言わんばかりに盛大な拍手が場内を包みこんだ。一足先にステージ上に現れたバンドメンバーは、軽やかに孤独を謳う「燕」のイントロを投下。その演奏と歓声を全身に浴びながらルイは登場し、ステージ中央に据えられた鍵盤をエネルギッシュに弾く。ブライトな歌声に絆されたのか、1曲目にして自然とクラップが湧きあがるほどの大盛り上がり。ここぞの瞬間に前方を射抜く視線はあまりにも実直で、「音楽を、言葉を伝え抜く」という意志が色濃く反映していた。
とはいえ、イケイケドンドンなパワープレイにならないのもルイの魅力のひとつ。「運命の蜜」で軽快に指を弾ませ、優しい温度で語りかけたかと思えば、「枕にキスをした」では打ち明けられないもどかしい想いを震える歌声に憑依させる。今にも泣きだしそうな声色で<ずぶ濡れのまま枕にキスした>と発して頭を抱える姿なんて、ストーリーの主人公が目の前に現れたのかと思ったほど。嬉しさも悲しさ溢れてしまう――、その自然体で生々しい表現が、観る者の心を惹きつけるのだろう。心の赴くままに抑揚や強弱をつけて、甘く儚い「傷だらけのドクター」を描出し、緻密に物語を展開していった。
楽器を持ち変える過程でノイズが入ってしまった場面では、フランクに「ごめんねー」と声をかけるルイ。パフォーマンス中はカリスマ性を輝かせる演者であっても、MCでは解けた雰囲気で寄り添う彼のポリシーを垣間見た瞬間だった。
そのまま流れるようにして、アコースティックギターのターンへ。真っすぐに前を観て<自分一人愛せないままに>と言葉を投げかけ、彼の代名詞ともいえる「愛の囚人たち」を投入。たっぷりと吐息を混ぜたり、主張するように張り上げたり、自由自在に声の形を操っていく。歌だけで響いてくる良さがある「タネを蒔く」は、ソロの弾き語りで披露。放たれていく音や言葉は“魂を削った”と称するにふさわしく、彼が「時間が経っても自分の言葉で歌える曲」と豪語するのにも納得だ。約5年前に作られた曲でありながら、色褪せないリアリティがしっかりと息づいていた。
この日は「ひとめ惚れ」を始めとする3曲を、アコースティック編成でパフォーマンスする一幕も。何度もライブで歌われてきた楽曲も、いつもと違う楽器で味付けされると、趣きの違う色彩を魅せる。自然体なノリでコールやクラップを巻き起こし、一体感のある空気を作り上げた。
いよいよ『鏡みたいですね』もラストスパートへ。<もう傷つきたくない>と弱さを見せる「青のLIFE」、<二人の未来を 咲かしてやるさ>と晴れやかな決意を口にする「真夏のリズム」とムードの違う作品をシームレスに繋ぎ、一色にとどまらない心情の振れ幅を演出。助走のままに飛びこんだのは、『who』のリードソングである「サンダー止まらない」だ。ハンドマイクを片手にくるっとターンをしたり、ぴょこんと飛び跳ねたりと、ご機嫌な様子のルイ。きっと“楽しいメーター”が、振り切っていたのだろう。観客のエネルギーをパワーに還元して煌めく姿は、もともと人前に立つことが苦手だったなんて1㎜も感じさせない。みんなで<恋する僕は避雷針>の特大シンガロンをする頃には、フロアの熱気は最高潮となっていた。
続く「ブルーアワー」になると、ほんのりと落ち着いたトーンに。爽やかなサウンドと共に憂鬱を溶かす言葉で、明日へ希望の光を射していく。<涙流した君の明日がどうか晴れ模様>と編み上げる声は優しく、真心のこめられた祈りのように広がっていた。あっという間に最後の1曲へ。ラストナンバーとなったのは、『who』の結びにもなっている「ハートの7」だ。ちょっとだけ切なさを香らせながら、一歩踏み出す勇気をささやかに刻みながら、丁寧に情景を浮かび上がらせていく。ノスタルジーを伴って淡々と奏でられていく音楽に、オーディエンスもうっとりと身を委ねる。じんわりとした温かさをひとりひとりの胸に残し、本編は幕を下ろした。
一呼吸おいてアンコールへ転じると、ルイはアコースティックギターの弾き語りで「タイムマシン」をドロップ。ほの暗い照明のなかに佇み、感傷的に言葉を紡ぎだしていく。スコーンと抜けていく高音が麗しいのは言わずもがな、少しだけざらついた低音がスパイスのように耳に残る。オオトリにはバンドメンバーと一緒に「ラブ・アメーバ」で多幸感あるステージを作り出し、ポップスターたる片鱗を覗かせたのだった。
ミニアルバム『who』を軸にしたセットリストで、いろいろな愛情の形を表して魅せたルイ。憂いも切なさも哀しみも全部抱きしめて、「それが恋愛なんだ」と肯定していたと いってもいいだろう。多くの人に備わっている嫉妬や独占欲といった綺麗なだけじゃない感情からも目をそらさず、ストレートに歌詞へ落としこむ彼は、とんでもなく素直だし美しい。なおかつ、どの曲にも実体験を経由したリアルが宿っているからこそ、魂から削り出された本物として聴衆の胸に届くのだ。
来たる4月12日には、心斎橋Live House Pangeaにて大阪公演も決定している。命を注いで生み出されるルイの真摯な表現を、ピュアな煌めきを、ぜひ直に浴びてほしい。
Text by 坂井彩花
Photo by 稲垣ルリコ
◎公演情報
【鏡みたいですね】
2025年4月4日(土)
東京・渋谷Spotify O-Crest
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