【2026 IFPIレポート】世界音楽市場317億ドルで11年連続成長、AIとグローバル化が次の競争軸に

2026年3月19日 / 13:30

 現地時間2026年3月18日、英ロンドンにて国際レコード産業連盟(IFPI)の2026年グローバル・ミュージック・レポートをめぐるパネル・ディスカッションが開催され、音楽業界の主要幹部が成長を続ける市場の現状と今後の課題について議論した。

 今回登壇したのは、Dennis Kooker(President, Global Digital Business, Sony Music Entertainment)、Samira Leitmannstetter(Vice President, EMEA Regional Marketing, Warner Music Group)、Alfredo Delgadillo(CEO & President of Universal Music Mexico)、Victoria Oakley(CEO, IFPI)の4名だ。

 パネルの冒頭では、2025年の世界音楽市場の実績が説明された。IFPIによると、世界の音楽産業の収益は前年比6.4%増の317億ドル(約5兆600億円)に達し、初めて300億ドルの大台を突破した。これで市場は11年連続の成長を記録したことになる。IFPIのVictoria Oakleyは、音楽が完全にグローバルな成長フェーズに入ったと強調し、データ追跡対象58市場のうち57市場で収益が拡大している点を挙げた。成長を牽引する最大の要因はストリーミングだ。有料サブスクリプションのユーザー数は8億3700万人に達し、音楽収益の52%以上を占めるまでに拡大した。

 一方で、フィジカル市場では、アナログ・レコード売上が19年連続で成長を続けており、熱量の高いファン、いわゆる“スーパーファン”の存在が市場を下支えしている。音楽消費がデジタル中心へ移行する中でも、体験価値への需要は依然として強い。

 地域別では、新興市場の躍進が際立っており、中国は21.1%の成長で世界4位の市場に浮上し、メキシコもトップ10入りを果たした。ブラジルも8位にランクインし、グローバル市場の重心が従来の欧米中心から多極化していることが浮き彫りとなった。スペイン語楽曲が世界各地で消費されている現状も紹介され、今や言語は障壁ではないことがわかる。さらには、デジタル流通の進展がローカル音楽の国際展開を加速させていることが明らかになった。

 アーティストの成功事例も、こうした変化を象徴している。バッド・バニーによるスペイン語アルバムが【グラミー賞】で<年間最優秀アルバム>を初めて受賞し、さらにロゼが、ブルーノ・マーズとのコラボ「APT.」で、IFPIグローバル・シングル・チャートを制し、欧米出身ではないアーティスト、英語以外の歌詞が含まれる楽曲として初の首位になるなど、音楽の主流は確実に多言語化・多文化化している。

 マーケティング戦略も大きく変化している。Warner Music GroupのSamira Leitmannstetterは、EMEA地域の25以上の市場をまたぐ展開において、グローバル戦略とローカル文化の適合が鍵になると指摘。データ分析と現地チームの連携により、バイラル・ヒットを各市場に最適化する手法が主流になっていると話した。また、ファンは単なる受け手ではなく、SNSやショート動画を通じて文化を拡散する主体へと変化しており、長期的なファンダム構築の重要性が増していると述べた。

 こうした成長の裏側で、業界が直面する課題も浮き彫りになった。その一つがストリーミング詐欺だ。AI生成楽曲やボットによる再生数の水増しにより、正当なアーティストの収益が侵害されるケースが増加している。Victoria Oakleyはこれを“静かだが深刻な脅威”と表現し、業界全体でのゼロトレランス対応を呼びかけた。

 AIをめぐる議論も大きな焦点となった。過去1年間で12件以上のAIライセンス契約、20件以上のパートナーシップが成立し、音楽とテクノロジーの関係は新たな段階に入っている。Sony Music EntertainmentのDennis Kookerは、適切なライセンスと透明性、報酬の確保が前提であるとしたうえで、AIはアーティストとファンの関係を強化するツールになり得ると述べた。一方で、Sony Musicがディープフェイク対策として135,000件以上の削除対応を行った実績も明らかにし、リスク管理の重要性を強調した。

 パネルの総括として登壇者たちは、音楽産業の本質的な価値となる優れた音楽、アーティストとファンの関係性、グローバルな流通力は変わらないと口を揃えた。技術や市場構造がいかに変化しても、この3点が業界の中心であり続けるという認識だ。

 今後5年間では、AIの本格的な実装とさらなる市場の多極化が進むと予測され、Victoria Oakleyはより多様な地域からの成功事例が増えると展望を示し、音楽のグローバル化は一層深化すると締めくくった。2026年のIFPIグローバル・ミュージック・レポート(英語)は、IFPIのウェブサイトよりダウンロード可能だ。


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