<ライブレポート>テクノポップ・有機・シンセサイザーがパーティー開催 6組が鳴らした“新しいテクノ”

2026年3月18日 / 18:25

 とある“金晩”のこと。虎ノ門ヒルズで、不思議なパーティに誘い込まれてしまった。

 日時は、3月6日19時からきっかり4時間。会場は、虎ノ門ヒルズ ステーションタワー8FにあるTOKYO NODE LAB。こちらで開催されたのが、【テクノポップ・有機・シンセサイザー Curated by CDs & nyalra】なるパーティである。

 全世界で売上200万本を突破する人気インディーゲーム『NEEDY GIRL OVERDOSE』を手がけたシナリオライター・にゃるら。幼少期よりDTMに触れ、トラックメイカーとして活躍の一途を辿る22歳・原口沙輔。彼らがタッグを組み、音楽を軸に生み出したキャラクターこそ、テクノポップ・有機・シンセサイザーちゃん(以下:シンセちゃん)。

 なんとも声に出して読みたい名前の彼女については、本メディアが2025年秋に実施したインタビューで、ある程度は明らかとなったところ(参考:<インタビュー>にゃるら&原口沙輔が生み出す新次元プロジェクト――テクノポップ・有機・シンセサイザーちゃん)。同取材中、にゃるらから「シンセちゃんがパーティのメインとして出演していて、カジュアルな層から音楽好きな層までひっくるめたパーティができたら」との発言もあったが、その展望が早くも実現に至ったわけだ。

 実際、この日のフロアには、シンセちゃんの初パフォーマンスを拝もうと企む早耳なリスナーから、“どうしてここに?”という根っからの音楽好きにしか見えない者まで、さまざまなレイヤーからのゲストが集まっていたように思う。また、“パーティ”ということはもちろん、シンセちゃん以外にも出演者が。彼女をヘッドライナーとして、生みの親といえる原口、『NEEDY GIRL OVERDOSE』の楽曲制作を担当したAiobahnほか、合計6組がステージに立つことに。本稿では全出演者分のパフォーマンスについて、駆け足ながら触れていきたい。

 1番手は、作家・DJのidrop。オーガナイザーが“テクノポップ・有機・シンセサイザー”というだけあって、この日は全出演者が“僕が考えたテクノ”を提示していくのだが、筆者が入場した時点ですでにBPMが140近くに。Seigg「Gummy Floor」をベースに、Human Safari「Amor」などで艶っぽいサックスを鳴らす展開を挟むなど、早くから東京の夜を賑わせていく。19時のビルの8階とはいえ、本気のテクノセットだ(かつ、こうしたクラブパーティはピークタイムに向けてゲストが徐々に集まる通例があるなか、開演時点でフロアがすでにほぼほぼ埋まっていたし、当日券の列も発生する盛況ぶり。シンセちゃんの求心力たるや)。

 “こんな時間から速くして大丈夫か?”と思っていたところ、先ほどより電子音を“マシマシ”に、ゲストをバウンスさせてきたのが、ボカロP・すずめのめ。REMO-CON「Score」をはじめ、国内アーティストによるTech-houseなども織り交ぜつつ、持ち時間後半にはChick Corea「Spain」のチルなサウンドでクールダウンさせたり、かと思えば再びソウルフルな流れに引っ張って行ったりと、面白いくらいにフロアの空気を掴んでいく。最後には、やり切った表情でガッツポーズを握っていたことも付け加えておきたい。

 続いては、ボカロP・Saku。こちらは“生楽器テクノセット”として、ハンドベルなどをリアルタイムで鳴らし、ビートに重ねていく。全体感として水音のようなエレクトロ~ドリームポップな色調で、パーティ後半に向けた癒しの時間に。優しい質感から、“テクノ”という概念の幅広さを思い知らされた。

 “ぼこぼこ”と擬音がつくようなディープハウスから始まったのが、メディアミックスコンテンツ『電音部』より、「いただきバベル (Aiobahn +81 Remix) 」などで知られる韓国出身・AiobahnのDJセット。先ほどまでとまた別の角度から鼓膜を揺らされるのが心地よい。

 さすがは“職人”といったところで、Supadelics「Freak Out」を選曲して頭の触れる展開を作りつつ、おそらくは『交響詩篇エウレカセブン』関連音声をループに使ったマッシュアップや(このあたり、不鮮明にて恐縮だが)、トランスな展開に寄り道もしつつ、最後は浜崎あゆみ「M」を組み込んだマッシュアップをドロップ。気持ちが平成に飛ばされる、なんとも情報量の多いセットだった。彼の持ち時間中、会場併設のカフェの座席から明らかにゲストの腰が離れまくっていたあたり、Aiobahnは間違いなくフロアに選ばれるDJだ。

 5番手は、DJ・プロデューサーのRisa Taniguchi。ここしばらく上モノに意識が向きがちだったところで、ビート・ドラム主体と留守足腰の強いセットを組んできた。Balthazar & JackRock、JKSなど真正面からのテクノで、終盤戦として本格的に踊らせようとしてくる。とにかくBPMを下げず、タイトな面で一貫した選曲によって、我々の足が止まらない。

 個人的ながら、今回の出演陣で最もユニークなグルーブを紡いでいたように感じられたのが、原口沙輔。ベースで鳴っているビートに対して、ターンテーブルをリワインドさせるに近い音(だが、実際は機材に触れていなかったようにも見えた)を4~8小節おきにぶつけていき、その音すら曲の一部であるかのように操っていく。途中、ケンドリック・ラマーの声や、KANDYTOWN「Get Light」のイントロにも聞こえる音をチョップし、ほんの一瞬だけ挿入するなど、音楽を聴いていながら、映画のワンシーンが次々に切り替わる、映像的な体験をした気がする。

 本人曰く「風変わりなトラックと萌え四つ打ちを、なんとかテクノ文脈に押し込もうという感じ」だったとのこと(参照:https://x.com/sasuke_maschine/status/2029941941979467812。実際、彼のセット後半では『這いよれ!ニャル子さん』に登場するフレーズをサンプリングしたマッシュアップに、Aiobahn +81「天天天国地獄国 (feat. ななひら & P丸様。) 」から、さらには宝鐘マリン,Yunomi「Unison」までアンセム的な楽曲をプレイし、シンセちゃん登場への期待を大いに煽ってくれた。

 そしていよいよ、主役の登場だ。純白の修道服に、金髪縦ロールに近い髪型。これまた白いマスクを目元に携えたビジュアルは、“登場”というより“降臨”という言葉の方が相応しく思えてしまう。“このビジュアルで、本当にテクノを鳴らすのか……”と最初は思っていたものの、結果的に約30分間、極上のテクノポップを鳴らし続けてくれた。

 主たる使用機材は、Ableton Move。32パッドを有するコントロールサーフェスで、プレイスタイルとしては同機材で上モノを鳴らし、音を歪ませ、同時に歌唱やダンスをするというもの。1曲目「me・愛・ラ・sun・虫」から共通して、黄緑色のネイルを施した指の腹ーー言い換えるとすると、第二関節あたりを盤面にべたっと敷く奏法が特徴。曲については、ウェービーなビートや、<急いで 繋いで 待って メーデー キスして 明音 低音 基音 和音 奇音 会って FORTUNE いいね>といった難解で幾何学的な歌詞も相まって、どうしてか“禅”な印象を抱いた。

 前述したように、かなり速いテンポ感ながらも、ループするフレーズのなかで考え、思考し、感じるものがテクノだと思っている。その点で、こうしたプレイスタイルや歌詞の語彙は正真正銘、概念としてもテクノであり、筆者にとってはすなわち禅だった。

 披露した全4曲のうち、中盤2曲は未発表の新曲に。片方は、ジャジーなキーボードが鳴るなかで途中、アーメンブレイクらしきドラムパターンが挟まれるアッパーチューン。先ほどの「me・愛・ラ・sun・虫」に比べて攻撃的、かつビートに遊び心を感じる一曲で、シンセちゃんは2コーラス目でラップも披露。ラップ→ビルドアップ→程よく“禅”でウェービーな展開に切り替わるなど、褒め言葉として展開が目まぐるしい。

 もう片方は、醒めない恋やそれに伴う倦怠感を歌った楽曲。ここまでの2曲とは異なり、ボーカルがピッチの上を当てにいくというか、ファルセットに近いところで歌唱していくフロウを用いていて、かなり新鮮な雰囲気に仕上がっていた。

 最後に締めくくるは「エレクトリック・ミラージュ・感情」。前者の新曲に比べると本当に軽やかに聞こえる本曲には、〈うん。シンセサイザー弄ってるの、好き。 自分をコードで繋いで調律するの。〉など、自己紹介ともいえるフレーズも登場。音楽ではなく、ライブ空間の話となり恐縮だが、ここでのパフォーマンス中、このサウンドの“ヤバさ”に気づいただろう海外リスナーが「OH MY GOD!!!」と叫びながらフロアに突撃していく様子と、その光景を見守るフロア入口の物販スタッフのすべてを認めてくれるような笑顔が、本プロジェクトが飛躍していく可能性を担保してほかならないように見えた。

 全体を通して“揺らぎ”を感じ、それでいて心に残ったテクノポップ・有機・シンセサイザーちゃんのパフォーマンス。ひと言で表すのが難しいが、彼女にとってはこれが初のステージだったわけである。今後の可能性に期待を寄せつつ、あの海外リスナーの熱狂フェイスを思い浮かべながら、今宵も「エレクトリック・ミラージュ・感情」を再生させていただくとする。

Text by 一条皓太
Photo by Miyo Sally

◎公演情報
【テクノポップ・有機・シンセサイザー Curated by CDs & nyalra】
2026年3月6日(金)
東京・TOKYO NODE LAB


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