<ライブレポート>KREVA、HIP HOPとオーケストラが融合する特別な一夜

2025年12月27日 / 23:20

 これまで数多くのアーティストを手掛けてきた、日本を代表する音楽プロデューサー・武部聡志プロデュースによるオーケストラコンサートシリーズ第3弾。日本のHIP HOPシーンを代表するアーティスト・KREVAがオーケストラと初共演する【billboard classics「KREVA Premium Orchestra Concert」~produced by 武部聡志】が、12月18日 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール、12月24日東京文化会館大ホールで行われた。その東京文化会館公演をレポートする。

 クラシック音楽の殿堂・東京文化会館にラップが響き渡り、HIP HOPの可能性をKREVAが体現した夜——日本を代表する音楽プロデューサー・武部聡志、若きマエストロ・岩城直也と彼が率いるNaoya Iwaki Pops Orchestra(NIPO)が忘れがたい感動を作りだした。

 「俺もお客さんもむちゃくちゃ緊張するはず」とインタビューでKREVAが語っていたが、開演前の由緒あるホールの客席は、やや緊張感が漂っていた。しかし「Overture」がスタートした瞬間、NIPOが作り出す美しいサウンドに引き込まれ、客席に“ときめき”が広がる。クリスマスイブのこの日のために、岩城がクリスマスソングメドレーをドリーミーなアレンジで紡いだ、スペシャルな夜にふさわしい。そして白根佳尚の激しいドラムソロへと続き、「Forever Student」のイントロが奏でられる。大きな拍手に迎えられ武部とレザーの燕尾服姿のKREVAが登場する。ラップとオーケストラ、一瞬、丁々発止に“やり合っている”ように感じたが、まさに<ジャンルの数だけチャンスもあるかも>という歌詞の通り、調和し融合している。サングラスを外す締めの決めポーズは「どうだ!」と言わんばかりだった。

 武部が「このコンサートはヒップホップとオーケストラの融合を目指して、みなさんが観たことのないパフォーマンス、聴いたことのないサウンドをお届けできるんじゃないかと。どう?」とKREVAに語り掛けると、KREVAは「そうなってると思います。武部さんが念願叶って俺とやれるって言ってくれました。非常に光栄です。今日はいつもの俺のやり方ではなく、フルオーケストラのマナーに則っていきたいと思います。音楽の楽しみ方にルールはないです、あるのはマナー」と語り、「フルオーケストラとラップ、日本でこんな会場で観られるのは初めてだと思います。今日はオレがその基準を作ってやる」と「基準」へ。ドラムの白根のビートと壮大な音、突き刺さる言葉。そして濃く速いビートの「No Limit」が、こんなにもオーケストラと共鳴するのかと驚かされた。音の洪水の中でKREVAの強靭なラップがさらに鋭さを増していた。フルートが軽快なリフを奏でる「C’mon, Let’s go」 では、2バース目の<できかかった壁なんてキック>の部分で数秒だが音が消え、KREVAも止まって客席に見得を切るように視線を送る。そしてあうんの呼吸でオーケストラのポップな音が再び鳴り始める。静と動のメリハリが印象的だった。

 「ここには一人では立てなかった。武部さんに感謝」と改めてこのコンサートのプロデューサー武部に感謝すると共に「最初声を掛けてもらった時【ビルボードクラシックス】、まだ(自分には)早くね?って思った。でも挑戦だし、応えたいと言った。活動の場所、音楽における自分の可能性を限定しない。そういう気持ちが俺にはあります。だから挑戦も引き受けるし、みんなと一緒だから色々な景色が見られると思います。」と、コンサートへの強い思いを教えてくれた。

 武部のピアノがリズムを刻み「居場所」が始まる。叙情的なメロディとサウンドと共に<壁を動かせ 守るだけじゃ増えない居場所>と強いメッセージを叩きつけ、<クリスマス・イヴ ここが俺らの居場所>と歌い、客席を沸かせる。

 いつものKREVAのライブに比べるとクラシックマナーを尊重し、控え目でおとなしい客席を見て、「今日は鑑賞と感動だなって感じていると思う。でもいわゆる“俺の曲マナー”で楽しんで」と語りかけ、バイオリンとピアノのイントロから「瞬間speechless」がスタート。ウィスパーボイスで「speechless」と歌い始めると、幾重にも重なるビロードのような弦の音が美しく、間奏の武部のピアノの粒立った音、アウトロのバイオリンソロ、全ての音が壮大かつメロウな世界を作っていた。柔らかな光が差してくるような イントロの「アグレッシ部」は、原曲の楽器が生で演奏され全く違う質感になっている。ハープと弦の美しいアウトロが上品な余韻を作り出す。この日の岩城の編曲にはKREVAの楽曲への愛を隅々にまで感じることができ、KREVAも客席も大きな感動を感じていたはずだ。

 20分間のインターバルの後、第2部は「EGAO」から。 武部のピアノの美しい調べが響き渡り、白根の電子ドラムが強烈なビートを刻み、KREVAの優しい歌とのコントラストに引き込まれる。後半の分厚い弦の音がさらに感動を増幅させていた。ハープの艶やかな音色のイントロから「成功」へ。ジャズの薫りも漂う美しいアレンジに、心が揺れ動く。まるでオペラのような歌だった。<桜の木の下 合格発表 胴上げ>の部分に「さくらさくら」のメロディを散りばめる岩城の粋なアレンジ、間奏では岩城の鍵盤ハーモニカ、武部のピアノソロが響き渡る。「普段ライヴでは歌わない曲を結構やっているので、みんな喜んでくれていると思います。」とKREVAが語っていたように、レアなセットリストと、新たに息吹を吹き込まれ、豊かな表情を見せる楽曲に、客席は笑顔と涙だ。そしてNIPOが軽快で瑞々しい「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」を演奏し、だんだんとテンポが上がっていき「国民的行事」へ。KREVAはオペラのような表現の歌でオーケストラの音と完全に一体化。まさにラッパーとオーケストラが作り上げた唯一無二の世界観だった。

 「もらい泣き× Link」は、以前、日比谷音楽祭のクロージングイベントで武部のピアノと高校生の合唱で「ハナミズキ」を演奏した際、KREVAの新たな歌詞によるラップのパフォーマンスで参加して以来のコラボだ。武部のリクエストに「ただのカバーだと面白くない。この日限りのコラボで、過去から現在、そして未来に繋ぐ歌を披露したい」と、オーケストラが「もらい泣き」を演奏し、「Link」を歌う。<基準は自分の羅針盤><これは俺の歌  だけどこの瞬間に 君の歌>というフロウが心に突き刺さってくる。武部が「KREVAありがとう!自分のプロデュースした曲が生まれ変わったよう」と素晴らしいマッシュアップに感激していた。そして「(岩城)直也の編曲はKREVAの曲を愛しているのが伝わってくる」と語るとKREVAも「直也は才人!」と若きマエストロのアレンジ、才能を絶賛していた。

 唯一ドラムが入らない「Expert」では、武部のピアノとオーケストラとKREVAの身体から生まれるグルーヴだけで表現された。KREVAは「緊張する」と語っていたが、素晴らしい音像から強烈なグルーヴが生まれ、客席の感動が伝わってきた。夏の眩しさと夏の終わりの切なさを感じさせてくれる「イッサイガッサイ」は、もちろん全員でDr.Kポーズだ。「カノン」が組み込まれたアレンジと演奏に引き付けられた。本編ラストは「音色」だ。楽器ひとつひとつの音の重なりと響きがどこまでも美しい音色になって、切なさを際立たせる。

 客席からの鳴りやまないアンコールの拍手と、ステージに残ったオーケストラも拍手を煽ると、KREVAと武部、岩城が揃って再びステージに登場。そして武部が打ち合わせの時から熱望していたというKICK THE CAN CREWの「クリスマス・イブRap」が投下されると、大歓声があがる。ドリーミーなアレンジに彩られた名曲がまさに特別な夜を作り上げる。KREVAのバースのラップとしてのクールさは格別だ。

 ラストの「Na Na Na」は「あなたたちは声という素晴らしい楽器を持っています。みんなで一緒に演奏しよう」というKREVAの言葉に客席が一気に盛り上がり、ドラムが作るビートから、全員で歌う練習をして、本番へ。客席は総立ちで、これまでおとなしく観ていた観客は最後の最後に大合唱し、まさに大団円。降り注ぐ拍手を全身で感じKREVAは「最高だ」と高揚した表情を見せていた。全員がステージを去った後も拍手は鳴りやまず、KREVAはステージに戻ってきて感謝の言葉を伝える。KREVAの笑顔とオーディエンスの笑顔が、このコンサートが想像を超える感動を感じさせてくれたことを物語っていた。

 HIP HOPは“吸収する音楽”と教えてくれたKREVA。どんな音楽と融合してもその真ん中にあるのは“言葉”だということを、この日のコンサートで改めて強く感じさせてくれた。その圧倒的な伸びとキレのあるラップは、オーケストラとの融合でさらに“威力”を発揮し、まるで物語を語るオペラのようにも感じた。新たな発見だった。たくさんの人にこの感動を感じて欲しい。再演を希望したい。

text:田中久勝
phot:石阪大輔

◎公演情報
【billboard classics「KREVA Premium Orchestra Concert」~produced by 武部聡志】
2025年12月18日(木) 
兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
2025年12月24日(水) 
東京文化会館 大ホール

出演:KREVA
音楽監修・ピアノ:武部聡志 
指揮・編曲:岩城直也
ドラム:白根佳尚
管弦楽:
【兵庫】NIPO×大阪交響楽団
【東京】Naoya Iwaki Pops Orchestra(NIPO)

<公演公式サイト>
https://billboard-cc.com/krevaXtakebe


https://kreva.club/

主催・企画制作:ビルボードジャパン(阪神コンテンツリンク) 
企画協力:KOUJOUSHIN
制作協力:ハーフトーンミュージック
協賛:株式会社パイロットコーポレーション、【兵庫】大和ハウス工業株式会社
協力:ローランド株式会社
後援:米国ビルボード、ビクターエンタテインメント株式会社、【兵庫】FM802、【東京】J-WAVE

<セットリスト>
2025年12月24日(水) 東京文化会館 大ホール
1.Overture
2.Forever Student
3.基準
4.No Limit
5.C’mon, Let’s go
6.居場所
7.瞬間speechless
8.アグレッシ部
9.EGAO
10.成功
11.国民的行事
12.もらい泣き×Link
13.Expert
14.イッサイガッサイ
15.音色
EC1.クリスマス・イブRap
EC2.Na Na Na

 


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