音楽著作権の世界的価値が10年で倍増、2024年に約7兆円に

2025年12月26日 / 15:00

 Pivot Economics創設者で、元Spotifyのチーフ・エコノミストだったウィル・ペイジによる調査で、世界の音楽著作権の価値が過去10年でほぼ倍増し、2024年に過去最高の472億ドル(約7兆3,786億5,800万円)に達したことが明らかになった。2014年の約250億ドル(3兆9,079億6,250万円)から増加したもので、世界各地のレコード・レーベル、出版、ソングライティングからの収益を含み、音楽作品のグローバルな価値を示している。

 ペイジの分析は、IFPI、CISAC、ICMPの協力に加え、250社超の音楽出版社を対象としたMiDIAの調査、さらに権利者やストリーミング会社からの直接提供データを用いて行われた。472億ドルの内訳は、レーベルが290億ドル(4兆5,326億1,300万円、前年比5%増)、ソングライターの集団管理団体が136億ドル(2兆1,256億5,960万円、8%増)、出版社の直接収益が46億ドル(7,189億2,250万円、約1%減)で、全体では前年比5.2%の成長となる。ただし成長率は鈍化しており、例えば2022年から2023年にかけては前年比11%の伸びだったのに対し、今年は5.2%にとどまった。

 その中でペイジが指摘するトレンドはいくつかあるが、とりわけ注目されるのは、価値の伸びがレーベル(前年比約5%)よりも出版社(約6%)の方が速い点だ。背景として、パンデミック期に急拡大したストリーミングの反動が薄れたこと、そしてストリーミングの再生量は増え続けている一方で、収益の伸びが鈍化していることを挙げる。これは、北米、欧州、オーストラリア、そして日本、韓国、香港、シンガポールを含むアジアの集合体という、ペイジが“リッチ・フォー”と呼ぶ高収益市場が、再生量の59%に対してストリーミング収益の87%を占める一方、新興市場では再生量が大きく増えても収益の伸びが控えめにとどまるためだ。これは従来の資本主義の常識に反するように見えるが、地域を問わず成り立っていると報告書で示している。

 一方、10年前との比較は別の重要な論点も浮かび上がらせる。とりわけ、「公正な分配の原因と結果、すなわち一方にレコード・レーベルとアーティスト、もう一方にソングライター、出版社、そしてそれらのCMOが存在する分配構造を照らし出す点だ」とペイジは記す。ストリーミングが本格的に主流となる前で、売上やダウンロードが急落していた10年前、出版分野は依然として記録的な徴収額を維持しており、世界の著作権価値はレーベル/アーティスト側が55、出版側が45という、ほぼ拮抗した配分だった。だがストリーミングの台頭と、それに伴うレーベル収益の急増により、10年後の現在では62対38と、レーベル/アーティスト側に大きく傾いている。

 もう一つの顕著な傾向は、世界的に著作権価値が急伸する中で、米国市場の存在感が弱まるどころか、むしろ強まっている点だ。Spotifyが米国でサービスを開始した2011年、IFPIが当時165億ドル(2兆5,787億2,700万円)と報告した世界のレコード・レーベル収益のうち、米国のシェアは27%だった。2024年にはレーベル価値が290億ドルに倍増する中で、米国のシェアは38%に達している。これは、米国が依然として世界で最も収益性の高い地域であるだけでなく、その地位をさらに高めていることを示唆する。報告書には「そこで成功すれば、どこでも成功できる」との言葉も記されている。また、ペイジ自身が数年前に提唱した“グローカリゼーション”、すなわちローカル言語の音楽が世界規模で成功する潮流にも踏み込み、デンマーク、ブラジル、韓国といった市場での成功例を、それぞれ異なる形で際立った事例として紹介している。

 ただし、今後の道筋は一直線ではなく、次の10年で再び倍増するとは限らない懸念もある。最大の不確定要素はAIの台頭で、現時点では法的・技術的枠組みが定まっておらず、著作権価値にどのような影響を与えるのか予測が難しい。さらに、世界的な報告体制に依然として多くの空白が残っていること、そして現在レーベルが直面している減速と同様の状況が今後出版社にも及ぶ可能性があることなど、著作権の真の価値を完全に把握する上での課題は少なくない。


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