<ライブレポート>ダミアーノ・デイヴィッド、内なる寂しさをポップに昇華 ソールドアウト初来日公演

2025年10月29日 / 21:00

 イタリアのロックバンド、マネスキンのリードボーカリストであるダミアーノ・デイヴィッドが、2025年10月27日に東京・有明ガーデンシアターにて初の来日ソロライブを行った。今年5月に1stソロアルバム『ファニー・リトル・フィアーズ』、9月には新曲を5曲追加したニュー・バージョン『ファニー・リトル・ドリームズ』をリリースした彼は、29日には大阪・Zepp Osaka Baysideにて大阪公演も開催。両公演ともソールドアウトと、その人気の高さを証明した。

 定刻となり、暗転したステージに「DAMIANO DAVID」のロゴが浮かび上がると客席から大きな歓声が上がる。地響きのようなシンセの重低音が鳴り響くなか、サポートメンバーがおもむろにセッティング。やがてシンセがリズミカルなシーケンスフレーズへと変化し、自然発生的にハンドクラップが鳴り響くと同時にドラムがビートを叩き出すと、早くも会場の熱気は最高潮に達し、そこへ満を持してダミアーノが登場すると、空気が一気に炸裂するような歓声が場内を包み込んだ。

 「Hello Tokyo!」と叫び、まずは「Born With a Broken Heart」でこの日のライブに幕を開ける。ステージはドラムを中心に、ベース、キーボード、2人のギター、そして男女コーラスがシンメトリーに並ぶシンプルなフォーメーション。ダミアーノはラメの入ったダークカラーのベストとパンツというスタイル。もちろんベストは素肌に羽織り、タトゥーの浮かぶ胸元をあらわにしたその姿は、どこか退廃的で危うく、それでいて目が離せない圧倒的な存在感を放っていた。

 序盤からシンガロングとコール&レスポンスの応酬で観客との一体感を一気に高め、そのまま「The First Time」へ。エコーをたっぷりと含んだドラム、分厚くうねるディストーションギター、きらびやかなシンセが幾重にも重なり合うウォール・オブ・サウンドは、フィル・スペクターからの影響を色濃く感じさせる。静と動を激しく往復する展開に合わせ、目も眩むようなストロボが空間を切り裂いた「Mysterious Girl」、ローファイなピアノのバッキングに導かれ、ドラマティックでどこか哀愁を帯びたムードに浸らせる「Voices」へと、ダミアーノは次々に楽曲を繋いでいく。彼の歌声は、艶やかでありながらも繊細さを内包し、ケレン味たっぷりの旋律を確かな説得力で歌い上げていた。

 ここでベストを脱ぎ捨て、上半身裸に。鍛え上げたその肉体はまるで彫刻のようだ。ザ・ストロークスのギタリスト、アルバート・ハモンドJr.とのコラボ曲「Cinnamon」を官能的に、情感たっぷりに歌い上げたあとは、お馴染みのカバー曲へ。この日はブルーノ・マーズの「Locked Out Of Heaven」を取り上げ、突き抜けるようなハイトーンボイスを披露した。

 続く「Talk to Me」は、シングル「Water」がグローバルで23億回以上再生(ルミネイト集計)を記録した南アフリカ出身のシンガーソングライター、タイラと、シック(Chic)のギタリストであり、プロデューサーとして数々の名盤を手がけてきたレジェンド、ナイル・ロジャースが参加したメロウなソウルポップ。裏打ちのディスコビートと軽やかなギターカッティングが、オーディエンスの体を自然と揺らしていく。

 「さらにスローでロマンティックな曲をやるよ」とダミアーノが告げ、アコースティック・ギターの流麗なアルペジオに導かれるように「Nothing Breaks Like a Heart」へ。美しいメロディを1音1音確かめるように丁寧に紡ぐ歌声は、次第にエモーショナルな熱を帯びていき、壮大なバンドアンサンブルとともにこの夜最初のクライマックスを迎えた。

 セットリストはここで一転し、ダミアーノの内省的な側面に光を当てた楽曲たちが中心となる。「Perfect Life」では、2人のギタリストがかき鳴らすアコースティック・ギターに合わせ、彼はシルクのようなファルセットを披露。後半では、サビの掛け合い〈In your perfect life〉〈Got lost〉を観客と共に荘厳なメロディに乗せてシンガロングし、再び会場がひとつになった。

 続く「Next Summer」もアコギをフィーチャーした美しいミドルバラード。マネスキンで見せるグラマラスでカリスマ的な姿とは対照的な、繊細で儚げな一面がふと垣間見える。さらに、ピアノの響きとコード進行がジョン・レノンの初期ソロ作品を思わせる「Sick of Myself」、スキ・ウォーターハウスを迎えたレコーディング音源では、どこかプリンスにも通じるサイケデリックな質感が漂う「The Bruise」と続き、オーガニックなバンドアレンジが、ダミアーノの“メロディメイカー”としての非凡な才能を際立たせていった。

 「これは、個人的にお気に入りの一つ」と紹介した「Tangerine」は、往年のロッカバラードや50’sポップを現代的にアップデートしたロマンティックな楽曲。クライマックスではダミアーノがパワフルなロングブレスを披露し、客席からは大きな歓声が巻き起こった。

 背中が大きく開いたジャケットを素肌に羽織り、ここからライブはいよいよ後半戦へ。多幸感あふれるポップチューン「Zombie Lady」では観客とコール&レスポンスで盛り上がり、軽快なモータウンビートの「Tango」ではステージ上をくるくると回転しながらアドリブでスキャット。そして「Angel」では、コーラスのタチアナとジョージが振付を合わせて歌う姿がなんとも微笑ましく、会場全体に温かな空気が広がった。立て続けに披露されるアップリフティングなナンバーたちに、ダミアーノは一気にギアを上げていく。

 フランク・オーシャンにも通じるメロディセンスを感じさせる「Over」を経て、本編ラストは壮大かつドラマティックな「Mars」。鳴り止まぬアンコールに応え、再び「The First Time」を披露したあと、「Naked」、そして「Solitude(No One Understands Me)」と続け、この日のステージは幕を閉じた。

 MCでは、マネスキンとしての成功のあとに周囲の急激な環境の変化に大きな戸惑いを経験したこと、そしてそこから深く自身と向き合い、ソロプロジェクトを始めたことでようやく再び曲が書けるようになったことを語っていたダミアーノ。コンポーザーとして、そして表現者として新たな地平を切り開いた彼は、そこで得たものを今後バンドにどうフィードバックしていくのか。これからの活動にも目が離せない。なお、本公演のセットリストはプレイリストとして公開されている。

Text by 黒田隆憲
Photos by Masashi Yukimoto

◎リリース情報
『ファニー・リトル・ドリームズ』
2025/11/21 RELEASE
SICP-6762 3,300円(tax in.)


音楽ニュースMUSIC NEWS

ずっと真夜中でいいのに。、過去ALを数量限定アナログレコードで3タイトル同時リリース決定

J-POP2025年10月29日

 ずっと真夜中でいいのに。が、過去フルアルバム3タイトルをアナログレコードで同時リリースすることが決定した。  今回リリースするのは、1stアルバム『潜潜話』、2ndアルバム『ぐされ』、3rdアルバム『沈香学』の3作。生産上の都合につき全て … 続きを読む

GLIM SPANKY、奥山葵主演ドラマ『スクープのたまご』主題歌となる新曲「カメラ アイロニー」デジタルリリース&MV公開

J-POP2025年10月29日

 GLIM SPANKYが新曲「カメラ アイロニー」をデジタルリリースし、ミュージックビデオを公開した。  本楽曲は現在放送中の奥山葵主演ドラマ『スクープのたまご』主題歌で、GLIM SPANKY書き下ろしの新曲である。“カメラ”をキーワー … 続きを読む

Absolute area、ミニAL『Memories』12/17リリース決定

J-POP2025年10月29日

 Absolute areaが、ミニアルバム『Memories』を12月17日にリリースすることが決定した。  ソロとなったことでバンドサウンドに縛られない自由な発想が広がり、アレンジや表現の幅も大きく進化。リード曲「スノードームに閉じ込め … 続きを読む

T字路s、メジャー1stAL『MAGIC TIME』発売記念イベント11/12開催決定

J-POP2025年10月29日

 T字路sが、メジャー1stアルバム『MAGIC TIME』発売記念トーク&ミニライブイベントをリリース日である11月12日に東京・泪橋ホールにて開催することを発表した。  本イベントは、アルバム『MAGIC TIME』の制作エピソードやラ … 続きを読む

Rude-α、チプルソとタッグ組んだ新曲「ONE」リリース&MV公開

J-POP2025年10月29日

 Rude-αが、チプルソとタッグ組んだ新曲「ONE」をリリースした。  本楽曲は、Watson、JUBEE、kZm等の作品も手掛けるDAIKI (AWSM.)をプロデューサーに迎えた哀愁あるビートに、Rude-α&チプルソのフロウが絡み合 … 続きを読む

Willfriends

page top