<イベントレポート>Billboard JAPANとLUMINATEが主催する【NOW PLAYING JAPAN】 第4弾では“投資と音楽”がテーマに

2025年10月3日 / 14:30

 Billboard JAPANとLUMINATEによる、ビジネスカンファレンス【NOW PLAYING JAPAN】の第4弾が2025年9月26日に東京・ビルボードライブ東京にて開催された。

 今回のイベントではBillboard JAPANとLUMINATEの責任者が、音楽著作権とストリーミングが交差する“音楽×投資”の最新トレンドについてプレゼンテーションを行った他、ゲストとして野村ホールディングスの石塚健二郎氏と経済産業省の腰田将也氏が登壇。音楽業界と金融や政策との関係性に焦点を当てながら、日本のアーティストや音楽ビジネスの持つ成長可能性について説明した。以下、同イベントの模様をお届けする。

プレゼンテーション1:エイドリアン・サローシ(LUMINATE)

 最初に登壇したのは、LUMINATEのインターナショナル部門 VP/GM を務めるエイドリアン・サローシ氏。同氏は、音楽著作権(IP)を“資産クラス”と捉える世界的な動向について、米国を中心とした音楽投資ビジネスの事例を交えながらプレゼンテーションを行った。近年、音楽ストリーミング市場の拡大により、著作権は「予測可能」「グローバル配信可能」「継続的な収益化が可能」といった特性から、投資家にとって魅力的な資産となっている。実際に、2024年においては音楽業界全体の収益の約7割がストリーミングによるものであり、米国では金融ファンドや法律事務所が音楽カタログの買収や評価に関与する機会が急増していると解説。そのような中で、LUMINATEは第三者として中立的なデータ提供に徹し、音楽の将来収益を予測する上でのファクトベースの判断材料を提示している。

 サローシ氏のプレゼンでは、ケーススタディとして米Duetti社の取り組みも紹介された。同社はLUMINATEのデータを活用し、チャート上位には入らないもののストリーミングの傾向から長期的な収益が期待できる楽曲に着目。再生数のパターンをもとに「成長」「安定」「減退」などのトレンドを分類し、投資の新しいアプローチを実践している。

 また、サローシ氏はアジア市場、特に日本への期待感にも言及した。2025年に日本のプレミアムストリーミングは1,500億回に到達しそうな勢いを見せており、5年間で3倍以上に成長している。IFPIによる「世界第2位の音楽収益国」という評価や、アジア太平洋圏で最も多くのプレミアム再生数を誇る点を挙げ、「日本は今後、グローバルな音楽投資における注目市場になる」と語り、プレゼンテーションを締めくくった。

プレゼンテーション2:石塚健二郎氏(野村ホールディングス)

 野村ホールディングス デジタル戦略部の石塚健二郎氏は、「音楽×金融のビジネスの可能性」をテーマに登壇。金融業界の視点から音楽IPに着目し、投資対象としての魅力や今後の展望について語った。プレゼンではまず、海外において音楽著作権やロイヤリティ収益を投資対象としたファンドの事例が拡大している点を紹介。アーティストにとっては権利保護や資金化の手段となり、ファンにとっては新たな体験を生む仕組みでもあると説明し、実例としてアバター技術を活用したABBAのライブプロジェクトなども挙げられた。

 日本市場に目を向けると、映画やアニメ領域ではすでに金融ファンドの導入が進んでいる一方、音楽に特化した事例はなく、課題も多いと説明。権利管理の複雑さや、活用されていない旧譜カタログの存在、そして海外流出リスクなどをさらなる発展に向けたキーポイントとして紹介。ストリーミングの普及や技術の進化により、音楽IPはより可視化・定量化が可能な資産となってきており、「安定した収益性」「投資判断のデータ根拠」「成長の可能性」といった観点から、今後の注目が高まるとした。また、プレゼン終盤では、AIを活用したデータ分析の取り組み例やブロックチェーン技術を活用したファイナンスの可能性なども紹介された。

 石塚氏は、金融と音楽の連携が、アーティストやファンに新たな選択肢をもたらすと語り、音楽業界のさらなる発展への貢献を展望として示した。

プレゼンテーション3:腰田将也氏(経済産業省)

  経済産業省 商務・サービスグループ 文化創造産業課の腰田将也氏は、政府の音楽産業の海外展開支援についてプレゼン。まずは政府全体の流れとして、戦略を議論するコンテンツ産業官民協議会の取り組みやデジタル関連産業のグローバル化の促進、またエンタメ・クリエイティブ産業政策研究会は、政府目標である「2033年までに海外売上高を5兆円から20兆円にする」ことを実現するために6つのアクションプランを設定していることを説明した。また具体的な支援の施策として、海外展開支援を目的とした補助金事業であるJLOX+においては、海外でライブを行う際に有効的なローカライズ・プロモーション支援を行っていることや、クリエイター・エンタメスタートアップ創出事業(New Music Accelerator)においては、アーティストやマネージャー含むチームに対し制作費などの補助支援を行っていることを紹介した。

 さらに、音楽産業の海外展開を目的とした調査事業についても説明。音楽分野に関しては、業界全体で共有されるべき海外展開データが存在しないという課題が存在し、その影響として、定量的な目標の設定・戦略の策定の困難などが考えられるという。そのため、調査事業では、海外展開データの把握に関する現状・課題などの基礎調査、調査の実施、将来にわたり継続的に海外展開データを把握するための体制構築に関する検討を進めており、産業全体のためにもヒアリング調査・アンケート調査への協力が必要と連携を呼びかけた。

 最後に、「経済産業省としてはさまざまなセクターの方々に必要な支援をしていきたい。どのようなことでお困りか聞かせていただきたい」と双方向との関わりを促した。さらに、「音楽産業の海外展開についてはまだまだこれから。金融業界と連携しながら音楽産業に対する資金調達や投資を充実させ、海外市場の獲得につなげていきたい」と建設的な姿勢を示した。

プレゼンテーション4:礒﨑誠二(ビルボードジャパン)

 最後のプレゼンテーションを担当したビルボードジャパンの礒﨑誠二は、LUMINATEのサービス、“CONNECT”を用いて新たな楽曲のスパイクが確認できると説明した。今年5月頃よりグローバルチャートで勢いを見せたHALCALIの「おつかれSUMMER」を例にグローバルでのストリーミングの動きや、CONNECTのAPIを用いてどのようにグローバルでシェアを伸ばしていったかを深掘りし、「おつかれSUMMER」のグローバルでの成功パターンを解説。そして「おつかれSUMMER」と同時期に起こった楽曲のスパイクについて、CONNECTのAPIを用いて探り、その結果から日本の楽曲の大きなスパイクが、他の日本の楽曲に影響を与える可能性を話した。また「おつかれSUMMER」は2003年にリリースされた楽曲であることに注目し、カタログ曲は新たな楽曲として知られやすい状況になっており、カタログ曲についてもまたまだ海外で深掘りされうるファクトを提示した。

 さらに、6月27日に開催された【Billboard ASIA Conference 2025】にてBillboard JAPANの新たな取り組みとして発表された書籍チャートについては、10月下旬にローンチ予定と改めて発表。最後には今回のカンファレンスのテーマでもある「投資と音楽」について、「創作物に対してリスペクトをもって投資が行われているのか」という視点がおざなりにならないように、「そのアーティスト(および作品)に対して一番有益なことは何か」を大切に、作品への思いをレコード会社と共有して進めていくことを呼びかけた。

Text by Haruki Saito, Sakika Kumagai
Photos by かとうりこ


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