<ライブレポート>山崎育三郎、“39(サンキュー)”の想いを込めたハートフル・コンサートツアー

2025年7月28日 / 18:00

 今年、39歳を迎え、30代最後の歳を「サンキュー(39)」で締めくくりたいという思いを重ね、山崎育三郎が2年ぶりにフルオーケストラツアーを開催した。

 【billboard classics 山崎育三郎 Premium Symphonic Concert Tour 2025~Eleganza~】――――ツアー初日、5月30日の東京サントリーホールでのステージの模様を千秋楽の岡山公演の様子も交えてレポートする。

 5月30日から7月11日まで全国5都市をめぐるコンサートツアーのタイトルは【Eleganza】。伊語で“優雅さ・エレガンス”を意味する言葉だ。「少しだけ大人になった自分がファンの皆様とともに優雅なひとときを過ごせたら」という思いを込めてこのタイトルを思いついたのだという。

 5月30日、東京・サントリーホール大ホール。まずはステージの始まりを告げる“オーバーチュア”がオーケストラのみで演奏された。山崎にとって想い出深い場所であり、今年、建て替えのために休館した帝国劇場で上演されてきた数々のミュージカルの名作をメドレー形式で披露。初日公演の共演者は今や山崎と相思相愛の間柄ともいえる指揮者の田中祐子、そして東京フィルハーモニー交響楽団と豪華なメンバーだ。

 一曲目の「最後のダンス」はパープルの照明効果もあいまって冒頭からムーディな雰囲気を醸しだし、満場の客席を一挙に独自の世界へと引き込んだ。そして、最終曲「僕こそ音楽」で一階下手側の客席出入り口の扉からついに山崎が登場。客席を一周してステージへと登壇し、帝劇デビューを飾った想い出の作品『レ・ミゼラブル』より「カフェ・ソング」を情熱的に、哀愁たっぷりに歌い上げた。“悲しい夜明け…”、“言葉にならない悼みと哀しみ…” などの壮絶な詞の数々がひと際、心に沁みる熱唱だった。

 続いては『オペラ座の怪人(オーバーチュア)』、同作品から「The Music Of The Night」、『ウェストサイド・ストーリー』から「Maria」、『ジキル&ハイド』から「This is the moment」をそれぞれに英語の歌詞で披露。「The Music Of The Night」では山崎が仮面を着けて登場。オリジナル版の詞の美しさを引き立たせるかのように艶のある声でしっとりと歌い上げた。特にレガートやピアニッシモを駆使したフレージングの上手さは山崎にしか実現し得ないもので最高の歌唱を聴かせた。

 事前のインタビューで「今回のコンサートでは旬のミュージカルナンバーもお聞かせしたい」と語っていた山崎だが、『落語心中』がそのうちの一つだ。

 「吉原へ~生きて帰る~落語心中」の三曲構成のメドレーだが、冒頭から早口の台詞とともに演技も交えながら芸達者ぶりを余すところなく発揮。男の色気や吉原の粋についてなど、普段は想像もつかない内容の台詞が次々と繰り出され、客席もいっそう高揚感に包まれた。

 前半プログラムを締めくくるのは『ファインディング・ネバーランド』から「NEVERLAND」、『トッツィー』から「裏切らない」の二曲。希望と夢を高らかに歌い上げ、ラストノートのアクロバティックな超高音も見事に決め前半プログラムを終了した。

 後半、山崎は爽やかな淡い緑色のスーツ姿で登場。山崎のオリジナル楽曲「Keep in touch」では指揮棒を手に、自ら堂々とオーケストラを振り、客席から大喝采を浴びた。

 次なるナンバーは、「長らくこの作品でオーケストラとの共演を夢見ていた」と、山崎自身が語る「Nella Fantasia(ネッラ・ファンタジア)」。伊語歌詞によるオペラティックな作品だ。山崎の明るい声の響きにひと際ふさわしく、声が自然に広い空間に共鳴し、まるで音楽に祝福されているかのように幸福感に満ちていた。

 続いて歌われたのは、「愛のカタチ」。「伝えたい、愛する気持ち。でも想いをうまく言えない・・・そんな気持ちを込めた一曲です」と語る山崎。長年寄り添った夫婦の深い絆を感じさせる切ない歌詞がジンと心に沁みた。

 ここで恒例の出演者全員参加のグッズ紹介をはさみ、、ディズニーメドレーへ。ロマンティックなものからアップテンポでチャールストン調なものまで山崎は幅広いディズニー作品の魅力を存分に、そして華やかに聞かせた。メドレー最後の曲「アンダー・ザ・シー」のキレの良さで会場からひと際、大きな喝采を浴びていた。

 続いては、山崎待望の新曲「春駆ける」。NHKの全国合唱コンクールのMCなども務め、合唱を愛する学生たちと何か一緒にできないかと考えていた山崎のためにGRe4N BOYZ(グリーンボーイズ)が心を込めて生みだした楽曲だ。「卒業ソングでもあり、新たな道を進む彼らを応援するエールでもある一曲」と山崎は語る。レコーディングにあたり、山崎は実際に現役の高校生合唱団とも共演しているのも興味深い。

 この日もサントリーホールのステージに東京都立小金井北高等学校コーラス部が駆けつけ、山崎とフルオーケストラに加え合唱団も加わっての大混声バージョンでの演奏が実現。まさに輝かしい“青春の歌”。山崎のリードでスケールの大きな世界が繰り広げられた。

 ここからは恒例の全員参加ステージへと突入。まずはお馴染みの「Congratulations」でキックオフ。山崎もオリジナルソングらしくステージと客席内を縦横無尽に歩き回り、全身を大きく使って力強く歌いあげる。最後の決めのポーズも見事に決まった。

 そして、2024年に全国ツアーを敢行した【Handsome】から「Witch GAME」。チャールストン調のレトロな雰囲気のテーマをカッコよく披露。続いての「On your side」では客席のジュエルライトとの調和も見事で客席はさらに熱気を帯びていた。ラストは、山崎自らステージ上から客席に向かってジュエルライトの振り方を指示。そして指揮台をジャックし、見事なエンディング。ここで東京公演の全プログラムは終了だ。

 アンコールでは、山崎が再び都立小金井北高等学校コーラス部のメンバーとともに「栄冠は君に輝く~誰が為」を熱唱。若き合唱団との美しく、感動的なアンサンブルで一連のストーリーを締めくくった。

 さて、ここで東京・初日公演に加え、7月11日に開催されたツアー千秋楽・岡山公演の模様を、同公演ならではのシーンや山崎のトークにフォーカスを充ててお伝えしよう。岡山は山崎の母の故郷であり、山崎にとって子どもの頃から10代の頃、毎夏を大好きなおばあちゃんと過ごした第二の故郷だ。

 7月11日、岡山芸術創造劇場ハレノワ大劇場。冒頭一曲目の『レ・ミゼラブル』から「カフェ・ソング」を歌い終わると、その壮絶な音楽と詞に少ししんみりとした客席の雰囲気を覆すかのように、山崎は子どもの頃、祖母が同世代のお仲間を一挙にカラオケ喫茶に集め“いっくんミニライブ”を毎年開催してくれていたというほのぼのとしたエピソードを披露。

 実はこの日、祖母も会場に駆けつけており、山崎は“ミニライブ”でよくリクエストのあった「少年時代」、「箱根八里」の冒頭部分をアドリブで披露。山崎のトークも心なしか岡山弁のアクセントも入り交じり、客席空間には何ともアットホームな雰囲気が流れていた。

 後半ステージの「春駆ける」。ここ岡山では、地元の岡山城東高等学校合唱部が出演した。清楚な制服に身を包んだメンバーたちが全身を大きく使って伸びやかな歌を表現。美しく厚みのある、しかしどこまでも純粋で心あたたまるハーモニーを聞かせた。

 山崎も少年時代の夏休みの想い出に自らの姿をオーバーラップさせるかのように、彼らの輪の中に自然に溶け込み、童心に帰って音楽を楽しんでいた姿が印象的だった。

 当日、冒頭で「今回のツアーは何が何でもたくさんの想い出が詰まった岡山で締めくくりたかった」と客席にその強い思いを吐露していた山崎。アンコール曲を歌い上げた後、客席への感謝の言葉やアクションは決して派手なものではなかったが、その分、その真摯な姿の心の奥深くに万感の思いが詰まっているように感じられたのが印象的だった。

 “サンキュー”の想いが詰まったハートフルなフルオーケストラツアー。40代を迎える山崎のさらなる進化と、今後のツアーにも期待が高まる。

text:朝岡久美子
phot:石阪大輔(東京公演)、井本翔太(岡山公演)

◎公演情報
【billboardclassics 山崎育三郎 Premium Symphonic Concert Tour 2025 ~Eleganza~】

開催日時・会場:※終演
2025年5月30日(金) 東京・サントリーホール 大ホール OPEN 17:30/STRAT 18:30 ※終演
2025年6月10日(火) 大阪・フェスティバルホール OPEN 17:30/STRAT 18:30
2025年6月20日(金) 静岡・アクトシティ浜松 大ホール OPEN 17:30/STRAT 18:30
2025年7月2日(水) 北海道・札幌文化芸術劇場hitaru OPEN 17:30/STRAT 18:30
2025年7月11日(金) 岡山・岡山芸術創造劇場ハレノワ 大劇場 OPEN 17:30/STRAT 18:30

出演:
山崎育三郎
音楽監修・ピアノ:宗本康兵
編曲監修:山下康介
指揮・管弦楽:
【東京】指揮:田中祐子 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
【大阪】指揮:田中祐子 管弦楽:大阪交響楽団
【静岡】指揮:田中祐子 管弦楽:中部フィルハーモニー交響楽団
【北海道】指揮:栗田博文 管弦楽:札幌交響楽団
【岡山】指揮:栗田博文 管弦楽:岡山フィルハーモニック管弦楽団

<公演公式サイト>
https://billboard-cc.com/yamazaki-eleganza

主催:ビルボードジャパン(阪神コンテンツリンク)、【北海道】道新文化事業社
企画制作:ビルボードジャパン
後援:米国ビルボード

<公演に関するお問合せ>
【東京】DISK GARAGE https://info.diskgarage.com/
【大阪】キョードーインフォメーション 0570-200-888(12:00~17:00/土日祝休)
【静岡】サンデーフォークプロモーション静岡 054-284-9999(平日・土曜日12:00~18:00)
【北海道】道新プレイガイド 0570-00-3871(10:00~19:00/火休)
【岡山】YUMEBANCHI(岡山) 086-231-3531(12:00~17:00/土日祝休)


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