ブランデー戦記、【BRANDYSENKI 1ST ALBUM RELEASE TOUR】のオフィシャルレポートが到着

2025年7月28日 / 16:25

 ブランデー戦記が、7月20日に【BRANDYSENKI 1ST ALBUM RELEASE TOUR】を東京・Zepp Shinjuku(TOKYO)で開催した。

 ブランデー戦記はカルチャーの“匂い”がする。それは、彼女たちの生み出すサウンドや、まとった空気感からだけではない。1stアルバム『BRANDY SENKI』のリリースに伴う全国6都市ツアー(チケットは全公演完売)の千秋楽となったこの日、新宿・歌舞伎町のZepp Shinjukuに集ったオーディエンスの姿を見て、その考えは確信に変わった。思い思いのスタイルでグッズを着こなしたファンたちは、おそらく大半がZ世代。最近の蓮月(Vo./Gt.)のビジュアルに憧れてか、人生で初めて金髪にしたという女性の声も耳にした。手垢のついた言葉だが――ブランデー戦記にはそういう「カリスマ性」みたいなものが確かにあるのだ。

 メンバーの選曲と思しき、場内のBGMも興味深い。スピッツ、ターンスタイル、クレイロ、XG、ピンクパンサレス、リンキン・パーク、ニルヴァーナ…etcと、国籍もジャンルもごちゃ混ぜのセレクトはブランデー戦記のルーツと現在地をそのまま体現しているように思うが、特にMCなどで言及はなし。「気になったらShazamしてね!」ということなんだろう。『BRANDY SENKI』のアートワークがスマッシング・パンプキンズ『Gish』のオマージュだったり、「The End of the F***ing World」がドラマ『このサイテーな世界の終わり』からの引用だったり、直接的なリファレンスを示しておきながら、面倒な考察はさらりと煙に巻く自由なスタンス。いやはや、どこまでも掴みどころのないバンドである。

 暗転。いつものようにピクシーズの「Where is My Mind?」と共にボリ(Dr.)→みのり(Ba.)→蓮月とステージに登場し、三銃士よろしくグータッチを交わす3人の表情は、ツアーを経て培った自信と安堵も垣間見えた。けたたましいドラムを合図に蓮月がギターをかき鳴らすと、疾走感に満ちた「春」で幕開け。バンド史上最大出力の演奏とライティングで、あっという間にフロアの空気を塗り替えていく。続く代表曲「ストックホルムの箱」、カオティックなジャムから雪崩込んだ「僕のスウィーティー」では、みのりが「歌えるー? もっと聞かせて!!」と珍しくオーディエンスを煽る光景も。言うまでもなく、中盤の<ラララララ>ではシンガロングの嵐だ。この夜のZeppは音の分離が素晴らしく、みのりの地を這うベースラインと美声コーラスの掛け合わせは、これまで以上に(元ピクシーズの)キム・ディールの遺伝子を勝手に感じたりもした。

 最初のMCで軽めの挨拶を済ませると、「The End of the F***ing World」と「Coming-of-age Story」で再びアルバムの世界へ。結成からわずか3年とは信じがたい阿吽の呼吸。アメリカ先住民のウォーペイントを連想させるメイクを施した、ボリの正確無比なドラミング&ムードメーカーっぷりもブランデー戦記の魅力だろう。ライブでは必ずといっていいほど、全編で「ボリー!」と野太い声援が飛ぶ。ここからはもう独壇場だ。蓮月とみのりのコーラスがユニゾンする「Twin Ray」、巨大なミラーボールがダンス・フィールを盛り上げる「悪夢のような」、そしてストロークスへの愛をぶちまける「黒い帽子」「水鏡」(この曲はストロークスの「Ode to the Mets」が下敷きになったと睨んでいる)のコンビネーションもたまらない。

 この日最大のサプライズは、「ツアー・ファイナルということは、タダでは終われないですよね?」という蓮月のMCの後に初披露された新曲「赤いワインに涙が…」だ。カントリーの代名詞であるバンジョーの旋律に、昭和歌謡を彷彿とさせるメロディと歌詞が際立つ新機軸で、ファンからの反応も上々。これまで「Fix」のみでしか弾いてこなかった、グリーン・カラーのギブソンで哀愁漂うギター・ソロを奏でた蓮月は、手応えを感じて嬉しそうに微笑む。フランスの作家=フランソワーズ・サガンによる同名の短編集からインスピレーションを受けた「赤いワインに涙が…」は、ブランデー戦記にとって初めてアルコールがタイトル/歌詞に登場する楽曲ということもあり、新たな代表曲となりそうだ。そんな歌謡曲ムードを受け継ぐように、バンドの出世作「Musica」へとバトンを渡すセットリストも完璧。<私がクラシックを分かる様になったら結婚してくれる?>――この曲にはやはり、日本語でロックをやることの矜持というか、抗いがたい魔法がある。「私にとってすごく大切な曲」と紹介された「Fix」の狂おしいエモーションが、そのまま「ラストライブ」の急展開&大団円へと収束していくクライマックスでは、蓮月がギターを抱えたまま床に倒れ込む。どこを切り取っても絵になるバンドだが、予定調和のアンコールをやらない潔さにも痺れてしまった。

 終演後、筆者はとある家族とメンバーの素敵な会話を目にする。どうやらその家族の長女は小学生で、ブランデー戦記をきっかけにギターを弾き始めたらしく、バックプレートに3人のサインをもらっていた。フェンダーの次世代アーティスト支援プログラム「Fender Next™」への選出も象徴的だが、ブランデー戦記の存在は、ひとりの少女がギターを手に取る「理由」になっているということだ。オアシスが16年ぶりに復活し、<今夜俺はロックンロールスターだ>とリアム・ギャラガーが高らかに宣言したこの夏。極東の島国で<I wanna be a rock star.>と歌い続けてきた蓮月もまた、正真正銘のロック・スターになれたのかもしれない。

Text by 上野功平
Photo by Edo Sota

◎公演情報
【BRANDYSENKI 1ST ALBUM RELEASE TOUR】
2025年7月20日(日)
東京・Zepp Shinjuku(TOKYO)


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