レディー・ガガ、米ラスベガスを熱狂の渦に巻き込んだ【ザ・メイヘム・ボール】開幕公演のベスト・シーンを振り返る

2025年7月18日 / 17:00

 レディー・ガガは、当初2025年に本格的なツアーをする計画はなかった。自身がヘッドライナーを務め、話題をさらった【コーチェラ】でのパフォーマンスと、シンガポールでの公演のみが2025年のコンサートの予定だった。

 だがニュー・アルバム『メイヘム』が米ビルボード・アルバム・チャート“Billboard 200”で1位を獲得し、自身の週間ストリーミング再生数としては過去最高を記録、収録されているブルーノ・マーズとのデュエット曲「Die With a Smile」が同ソング・チャート“Hot 100”で5週1位を獲得し、現在もTOP10にランクインしているなど、大反響を受けたため、ガガは考え直した。

 現地時間2025年7月16日に米ネバダ州パラダイス(実質的にラスベガス)のT-Mobileアリーナで開幕した【ザ・メイヘム・ボール】は、演劇的で刺激的なエネルギーに満ちたライブ体験で、その一部が彼女のキャリアを通じてのベスト曲に数えられる『メイヘム』の最高傑作や、同じサウンドとテーマの世界観を共有する過去のダンス系楽曲のパフォーマンスをファンに届ける。ツアー初日は完売で、アリーナの外は37度の暑さだったにもかかわらず、マザー・モンスターがステージに現れた瞬間から観客は盛り上がる準備ができていた。

 3月にツアーを発表した際にガガは声明で、「2018年以来のアリーナ・ツアーです。スタジアムには何か刺激的なエネルギーがあり、そこでのショーのあらゆる瞬間が大好きです。しかし【ザ・メイヘム・ボール】では、私が愛する生の舞台芸術に合うような異なる体験を、より親密で、より近く、よりつながりを感じられるものを創造したかったのです」と述べていた。

 以下、レディ・ガガの【ザ・メイヘム・ボール】初日からのベスト・シーンとセットリストを紹介する。

 マザー・モンスターへの愛が綴られたファンからのテキスト・メッセージがオペラのアリアに乗せて紹介された後、ガガは【コーチェラ】で披露した時と同じ、畏敬の念を抱かせる曲順でライブを開始した。赤い巨大な輪のフープ・ドレスで「Bloody Mary」を歌い、輪が開くと檻に閉じ込められたダンサーたちが現れる演出、狂気じみた「Abracadabra」、衝撃的な「Judas」、そしてセクシーでキッチュな「Scheiße」。その全てを通じて、ガガは本物の演技力がポップ・パフォーマンスをいかに高めているかを示した。彼女のボディ・ランゲージは、威厳ある格式から制御された混沌、そしてしなやかな色気へと自然に変化していった。

 2010年代後半に一時的に離れていたものの、幸いなことにガガは最近アートハウス的な演劇性を再びポップ・カルチャーにもたらしている。「ようこそ、“メイヘム”へ。ようこそ、オペラハウスへ。ここは私の家」」と彼女はライブの早い段階でドイツ訛りの声で呟いた。首を伸ばして隣のダンサーを見下ろすガガ。そのダンサーは、過去のガガを彷彿とさせる衣装を身にまとっていた。「私の家で何をしている?」ハートの女王のチェス・ゲームのような雰囲気を漂わせる「Poker Face」の迫力あるパフォーマンスの流れで、ガガは演出でそのダンサーを“処刑”(『彼女の首をはねろ!』)。曲の終了後、彼女の呼吸が実際に聞こえ、ガガがステージで歌う際には本当に生で歌っていることを思い出させる良い瞬間だった。

 『メイヘム』の注目曲「Perfect Celebrity」では、ガガは【コーチェラ】で披露した独創的で不気味な演出を再び披露した。骸骨でいっぱいの巨大な砂場の中で、薄手の白いドレスを着たガガが、骸骨に腕をさりげなくかけながら歌い始める。次の楽曲(「Disease」)では、彼女の周りの骸骨たちが砂漠の砂から立ち上がり、不気味なバック・ダンサーとしてパフォーマンスに加わった。

 【ザ・メイヘム・ボール】の大部分は、彼女の迫力あるライブ・バンドとエネルギッシュなダンサーたちによって盛り上げられているが、「Paparazzi」ではガガが最もシンプルなステージの動きを、引き込まれるような視覚的な物語に変えることができることを示していた。象徴的なミュージック・ビデオで披露したものと同様の金属製の松葉杖を手にランウェイをゆっくりと進むガガは、メディアとセレブの有害な共生がテーマの楽曲を、時に優しく、時に力強く歌い上げる。その背後で透けるような白いトレーンが翻り(映画『雨に歌えば』の有名なファンタジー・シーンを彷彿とさせる)、やがて虹色の輝きに包まれる。観客を沸かせる名曲が終わりに近づくと、ガガはたくましいポーズを決め、ポップ・ミュージックのヴァルキリーそのものの姿でステージに降り立った。

 アリス・クーパーとクラッシック・ホラー映画を等しく取り入れた「Killah」のパフォーマンスでは、ガガはゴシック調の豪華な衣装を身にまとい、途方もなく大きな回転する頭蓋骨の前で羽を伸ばした。この楽曲はアルバムの中で最も印象的な曲の一つで、【ザ・メイヘム・ボール】の演出で思う存分ファンキーで奇抜な姿を見せることができたガガは、ランウェイを回転しながら移動し、地獄のような長大な叫び声を天井に響き渡らせた。バンシーのような叫びを終えたガガが一瞬だけキャラクターから外れて素に戻ったが、その瞬間に彼女がどれほど楽しんでいるかがわかり、とても美しい光景だった。

 【ザ・メイヘム・ボール】では【コーチェラ】で観客が聴けなかった楽曲はたくさんあり、その中から一番のお気に入りを選ぶのは難しい。だがいくつか挙げるとすれば、「Applause」はまさにその名のとおり拍手喝采で迎えられた(ファンは明らかに『アートポップ』の楽曲を聴けることに大喜びしていた)。そして「Summerboy」では、汗まみれで絡み合うダンサーたちに囲まれながら、ガガがギターを弾きまくる姿が見られ、予想外の楽しさがあった。しかし「Million Reasons」が最も印象的だったかもしれない。ガガはこの比較的荘厳なバラードを、自分と過去の自分のアバターとの挑戦的な対決に変貌させた。

 次にガガは、曲線を描く小さなヴァイキング船からソロで「Shallow」を熱唱した。船の全長にH・R・ギーガーを思わせる背骨が走り、マストの先端には人間の頭蓋骨が取り付けられていた。そして米ビルボード・ソング・チャート“Hot 100”の首位を飾った最新バラード「Die With a Smile」を、豪華な木材で作られた、珍しい複雑な構造のアップライト・ピアノに座って歌った。それはルネサンス期のイタリアでロンバルディアの職人が作った、独創的だが実用性に欠ける楽器を思い出させた。このパフォーマンスはこの夜最大の反応を引き出し、コーラスでの観客の合唱はデュエット・パートナーのブルーノ・マーズの不在を補うほどだった。

 「リトル・モンスターズは決して死なない!」とガガは叫び、車輪付きの担架から立ち上がり、最終曲の一つ前の曲「Bad Romance」を歌い始めた。オリジナルの「Bad Romance」の衣装を超えるのは難しいが、このルックは記憶に残るものだった。動物のような耳に巻き上がるヘアピースを被り、長い枝のような指を振りかざすガガの衣装は、映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』のホットドッグの指とシェイクスピアの『真夏の夜の夢』のニック・ボトムを足して2で割ったようなデザインだった。

 アンコールでは、ガガはメイクを落とし、ハイファッションの衣装を脱ぎ捨て、サングラス、黒いビーニー、ザ・クランプスのTシャツ姿でステージに戻り、「How Bad Do You Want Me」を歌った。これは明らかにマザー・モンスターのウィニング・ランだった。彼女はドラマチックな演出を捨て、単に人間としてステージに存在し、カジュアルな喜びで走り回り、後方の観客に大きな笑顔を向けた。ガガはライブの早い段階で、「今夜ステージに上がる前、皆さんが私のためにここに来てくれたことが信じられませんでした」と、コンサート開始前の緊張を明かしていた。アンコールの頃にはその疑念は明らかに完全に消え去り、ガガは自身が熱狂的なファンに与えた喜びを享受していた。

◎セットリスト
レディ・ガガ【ザ・メイヘム・ボール】
2025年7月16日(水)米ネバダ州T-Mobileアリーナ
Bloody Mary
Abracadabra
Judas
Aura
Scheiße
Garden of Eden
Poker Face
Perfect Celebrity
Disease
Paparazzi
LoveGame
Alejandro
The Beast
Killah
Zombieboy
LoveDrug
Applause
Just Dance
Shadow of a Man
Kill for Love
Summerboy
Born This Way
Million Reasons
Shallow
Die With a Smile
Vanish Into You
Bad Romance
How Bad Do You Want Me


音楽ニュースMUSIC NEWS

Creepy Nuts、ニューシングル『Mirage/眠れ』9月リリース

J-POP2025年7月18日

 Creepy Nutsが、2025年9月10日にニューシングル『Mirage/眠れ』をリリースする。  本作には、TVアニメ『よふかしのうた Season2』のオープニングテーマ「Mirage」と、エンディングテーマ「眠れ」に加え、各曲の … 続きを読む

Aile The Shota、東京ガーデンシアター単独公演からライブ映像2本をプレミアリレー公開

J-POP2025年7月18日

 Aile The Shotaが、2025年7月19日12時より楽曲「Eternity」「AURORA TOKIO」のライブ映像をYouTubeでプレミアリレー公開する。  今回公開される映像は、3月16日に開催された東京・東京ガーデンシア … 続きを読む

Vaundy、森山未來&窪塚愛流が出演「再会」MV公開

J-POP2025年7月18日

 Vaundyが、新曲「再会」のミュージックビデオを公開した。  新曲「再会」は、2025年7月5日より放送開始となったTVアニメ『光が死んだ夏』のオープニング主題歌。MVには、俳優の森山未來と窪塚愛流が出演しており、森山未來演じる主人公が … 続きを読む

Ettone、9/10に1stシングル『U+U』でデビュー リリースイベント&ショーケースイベントも開催決定

J-POP2025年7月18日

 Ettoneが、1stシングル『U+U』(読み:ユーアンドユー)を9月10日にリリースすることが、決定した。  anri、chiharu、koyuki、mirano、pia、shion、yuzukiからなるクリエイティブガールグループ、E … 続きを読む

和田アキ子、オールタイムベストアルバムを10月リリース

J-POP2025年7月18日

 和田アキ子が、2025年10月22日にオールタイムベストアルバム『和田アキ子 オールタイムベスト』をリリースする。  本作の収録曲は、TikTokで5億回以上の再生を記録した「YONA YONA DANCE」や「古い日記」「笑って許して」 … 続きを読む

Willfriends

page top