<ライブレポート>サザンオールスターズ、“最新のサザン”が最高を更新したツアーファイナル東京ドーム公演

2025年6月6日 / 12:00

 サザンオールスターズが、全国ツアー【サザンオールスターズ LIVE TOUR 2025「THANK YOU SO MUCH!!」】のファイナルとなる東京ドーム公演を5月28日、29日の2日間にわたり開催した。詰めかけた大観衆へ何度も感謝を伝えて、10年ぶりのアルバムリリースツアーを見事に完走。このレポートでは千秋楽の模様をお届けする。

 1月11日の石川県からこの日の東京ドーム公演まで、全国13か所、全26公演を巡ってきた今回のツアーは、ファイナルも含めすべての会場でチケットはソールドアウトとなった。ツアー開始後の3月に発表された10年ぶり、16作目のアルバム『THANK YOU SO MUCH』の充実ぶりから、大いなる期待を持って全国で迎えられていることがわかる。この日はライブ・ビューイングも全国47都道府県272館の映画館で実施されており、こちらも大盛況。今さらながらサザンが日本のエンターテイメントの世界に於いて特別な存在になっていることを実感した。

 最上階までギッシリと埋まった客席に開演の影アナが流れ出し、「【THANK YOU SO MUCH!!】ツアー、いよいよファイナルとなりました! 盛り上がる準備はできていますかー!?」との煽りにドッと歓声と拍手が沸き起こる。場内が暗転すると、サポートメンバーに続き、サザンのメンバー 野沢秀行(Per.)、関口和之(Ba.)、原 由子(Key. / Vo.)、松田 弘(Dr.)がそれぞれに客席に手を振りながらステージへ。最後に桑田佳祐(Vo. / Gt.)がテレキャスターを提げて登場すると、割れんばかりの歓声で迎えられた。

 おもむろに歌い出したのは「逢いたさ見たさ 病める My Mind」。どっしりと重たいミディアムのリズムで、ゆっくりとバンドの感触を確かめるようにスタートした。1曲目としては意外な選曲にも思えるが、1991年のスタジアムツアー【THE 音楽祭 -1991-】でもオープニング曲を務めていた楽曲だ。原のピアノがサビメロと同様の旋律を間奏で弾くと、終盤で英詞を歌い、「THANK YOU SO MUCH!!」と、早速アルバムタイトルで感謝を伝える桑田に大喝采。すぐさまニューアルバムからのロックンロールナンバー「ジャンヌ・ダルクによろしく」へ。イントロと共にいきなりアリーナ中央から盛大に銀テープが炸裂すると、ステージ上のスクリーンに大きく「SOUTHERN ALL STARS」の文字が現れ、一気にテンションアップ。桑田は「東京ドーム!」と叫ぶと自らスライドギターでソロを取り、エンディングでもハイフレットにギュンギュンとスライドバーを滑らせた。

 「東京ドームに帰ってまいりました! おかげさまで、うれしいような寂しいような、千秋楽です! 延長したいです!」と心の声を吐露する桑田はライブ・ビューイングで観ているオーディエンスへ語り掛けると、なぜか「火薬田ドン」とひと声発してからライブを再開した。サポートを務めるのは、2023年に開催された【茅ヶ崎ライブ】からずっとステージを共にしてきている、斎藤 誠(Gt.)、片山敦夫(Key.)、山本拓夫(Sax.)、吉田 治(Sax.)、菅坡雅彦(Tp.)、TIGER(Cho.)というファンにとってもおなじみの顔ぶれだ。曲名通りせつないメロディが胸に迫る「せつない胸に風が吹いてた」、しっとりと男女間の心象風景を描く「愛する女性(ひと)とのすれ違い」では、桑田の情感の籠った歌声を斎藤がエモーショナルなソロプレイで際立たせる。原が弾くイントロに反応して客席が湧いたのは「海」。中央のビジョンにはキラキラと光る海の水面が輝いて、あじさいの花が映し出される等、曲を惹き立てる映像の演出も。最後のサビでは、〈言葉じゃ言えない“好きよ”〉と歌うフレーズを繰り返すライブバージョンとなっていた。続いて山本のハーモニカに導かれて「ラチエン通りのシスター」へ。どの曲も歌詞がビジョンの下に表示されており、客席では一緒に口ずさんでいるファンの姿も見られた。70年代、80年代、90年代の古くからのファンに人気のあるアルバム曲を並べた前半の選曲は、広い会場の隅々までサザンのメロディの美しさと温かさ、人間味溢れる等身大の魅力を伝えてくれた。

 三線の音が響き渡ると、「神の島遥か国」へ。沖縄の民族衣装をまとったダンサーが登場して一気に世界が変わる。サビに合わせてステージも客席も沖縄民謡に倣って両手を頭上に掲げてヒラヒラさせるカチャーシーで踊る和やかな空間に。セカンドラインのリズムに乗った和洋折衷で紡がれた楽曲は、新作アルバム、ツアーのテーマとも親和性を感じるものだった。「おいで~」と歌い手招きする桑田のアクションに応えて盛り上がるファンたち。さらに鼓の音を導入に「愛の言霊(ことだま)~Spiritual Message~」が始まると、「うぉぉ!」とどよめきが起こった。ステージ前方に炎が揺らめいて、サイケデリックな映像と共に、難解なリリックを畳みかける桑田。トランペットのアバンギャルドの咆哮から、TIGERのロングトーンで照明がパーっとアリーナを照らし、転調してラップパートへ繋がり演奏がブレイクして桑田がシャウトした終盤の流れは鳥肌ものだった。

 ニューアルバムがチャート1位を獲得したことを報告して称賛の拍手を集めると、ここからはアルバムからの最新曲が続く。「桜、ひらり」では桜の花びらのように軽やかな演奏と歌で今と未来を慈しみ、松田のカウントから始まった「神様からの贈り物」では力強いサウンドとアンサンブルでポップミュージックへの憧憬を聴かせる。ビジョンには、尾崎紀世彦や坂本九、弘田三枝子といった昭和を代表する歌手や作詞家・作曲家の姿が映し出され、歌い終わると桑田は美空ひばり口調で「どうもありがと」とポツリ。「史上最恐のモンスター」ではステージの照明が落ち、ビジョンに自然や動物、地球が映し出される中、プログレッシブな演奏を展開。緊張感のあるメロディ、問題提起的な歌詞とも相まって場内が静まり返った。

 そんな雰囲気を引き継いだ「暮れゆく街のふたり」では、桑田がギターを置きマイクスタンドに向かい抒情的に歌い上げた。ガラリとムードが変わったパワーポップ「風のタイムマシンにのって」は、原のリードボーカルによる楽曲。関口がブイブイ鳴らすベースの弾むリズムに、それまで座っていた観客が再び一斉に立ち上がって手拍子を送った。最後は桑田が口笛で軽快に曲を締めた。

 ここで、アコースティックセットへ。腰かけてアコギを抱えた桑田は、ツアー開始後にメンバーそれぞれに体調不良があったりしたことを明かすと、松田、野沢、関口、原に「調子はどうですか?」と語り掛けてメンバーの体調を確認。それぞれに元気な声を聴かせると、桑田が関口と出会った頃に作った曲として、デビューアルバム収録曲「別れ話は最後に」を披露。野沢のパーカッションを活かしたボサノバチックなアレンジが心地良く、東京ドームはすっかりリラックスムードに包まれた。

 「来月でデビュー47年。アルフィーより年下です! まだまだ上がいるからやめられません! 石破(首相)さんよりは年上です。タカミー(高見沢俊彦)よりは年下です」との発言に続いて桑田がアコギをかき鳴らして歌い出したのは、「ニッポンのヒール」だ。途中でピー音が入るシニカルな歌詞とバンドの演奏力で攻めた意味深な選曲は、鋭い感性とユーモアで時代を歌ってきたロックバンドならではの矜持とスピリットを感じさせた。

 サポートメンバー紹介から、サザンのメンバー紹介へ。関口はベースで「「ヒゲ」のテーマ」(ひげダンス)をプレイ。原、野沢、松田と続き、斎藤から「変態おじさん!」と紹介された桑田はギターで応えてオチを付けたりと、サザンファミリーの仲の良さと演奏力の高さが垣間見えるコーナーだった。桑田と原、ベースの関口が出会った大学時代に作られたというエピソードもグッとくる「悲しみはブギの彼方に」のタイトルが告げられると、歓声と共に迎えられた。桑田はここでもボトルネックを薬指にはめて弦を滑らせる。桑田のギターソロといえばスライドというぐらい、今や円熟味溢れるその音色は、アマチュア時代から長年培われたものだろう。イラストのアニメーションをバックに歌われた「ミツコとカンジ」では、桑田が弾くペイズリー柄のテレキャスターが久々に登場。ギター、ベースによるリフを中心にしたキメでノスタルジック且つ微笑ましい1曲となった。

 「夢の宇宙旅行」が始まると入場時に配布されたリストバンド型ライトが一斉に輝き東京ドームを埋め尽くして、ステージにはスモークが吹きあがる。カラフルに変化する客席に向かって、映像に登場した桑田の両目から光線がアリーナへと発射されるシーンも。曲がフェイドアウトすると、ステージの上部に数人のダンサーが出現して、「ごめんね母さん」へと続いていく。ハンドマイクで桑田が歌うのは、昨今の社会不安の闇を想起させるもの。AIの存在を思わせる映像も印象に残った。ギターのカッティングから、ステージはネオンサイン、客席はライトの光で埋め尽くされて、「恋のブギウギナイト」でダンスホールへと化す。妖艶な女性ダンサーたちを従えて、桑田の独壇場ともいえるサザン・ワールドが展開された。男性ダンサーが見せたブレイクダンスに驚きと共に歓声が上がる。アウトロで「ピアノ売ってちょうだ~い タケモトピアノ」と、古き良きテレビCMのフレーズをごく自然に差し込む桑田節も健在だ。

 「新曲もたくさん聴いてもらってありがとう! ここらへんでいつもの曲やってもいいですか?」そう呼び掛けてから「LOVE AFFAIR~秘密のデート~」へ。歌いながら何度も「ありがとね!」と客席に感謝を伝える桑田。その声に応えてオーディエンスは大音量のハンドクラップをステージに返す。桑田は投げキッスで感謝を示すと、すかさず曲は「マチルダBABY」へと繋がっていった。ブラスセクションの奏でるリフが繰り返し鳴り響き、ステージ前面に炎が立ち昇ると、ワンコーラスが終わるたびにパイロも大音量で炸裂して興奮を掻き立てる。さらに原が弾くシンセのリフレインが「ミス・ブランニュー・デイ (MISS BRAND-NEW DAY) 」の始まりを告げると、「Hey! Hey!」とフレーズに合いの手を入れる声が会場中から自然発生した。レーザーが飛び交い、サビでは緑色の光で客席が埋め尽くされる光景は壮観のひと言。そしてさらなるカオスへと誘うのは満を持しての「マンピーのG★SPOT」 だ。もはや何者なのか解読することも野暮に思える、いつもの被り物とトンボのような羽を背にしたビジュアルで歌う桑田、ステージ上を占拠した戦隊もの風レオタード衣装のダンサーたちとのハチャメチャなステージングで爆発的な盛り上がりとなって、本編は終了となった。

 「終わっちゃったねえ」「もう少しやりたかったなぁ~」「みなさんはどうですか?」「もっと行きますか?」「皆さまAre You Ready?」「たくさんのご声援、御礼申し上げます」と、間髪入れずにビジョンに表示される意欲的な言葉に、客席から大拍手が起こると、すぐにメンバーがステージに戻ってきた。アンコールの1曲目は「Relay~杜の詩」。モノクロのビジョンに映る桑田はアコギを弾いて歌い、最後は両手を広げて「この杜(ここ)が好きだよ」と曲を歌い終えると、あたたかな拍手に包まれた。ステージも客席も眩い光に包まれて「東京VICTORY」が始まり、メンバーもオーディエンスも一緒に右手を突き上げる。終盤で桑田が右手を上げながら、さらに煽る熱い場面もあり、明日へのエネルギーを分かち合った感動的なハイライトシーンとなった。

 「来月(6月25日)でデビュー47周年です。デビュー50周年という大きな目標もあるにはあるんですけど、これからも皆さんを楽しませられるようにサザンオールスターズ頑張りますので、よろしくお願いします!」そんな力強い宣言から、「もっとやりますか東京ドーム!!」と桑田が叫んで松田のバスドラがパワフルにビートを刻むと、原のピアノが奏で始めた「希望の轍」のイントロに客席がドッと沸き立つ。いつ聴いても感情がこみ上げるエモーショナルな珠玉のメロディに、会場は手拍子を送りバンドと1つになった。

 畳みかけるように突入した「勝手にシンドバッド」のコーラスに合わせて金のテープが盛大にアリーナに放たれた。ステージ上にはサンバダンサーたちだけでなく、マスクマンの悪役レスラー、そろばんを片手にステージを縦横無尽に動き回るトニー谷に似た人物、さらにジャイアンツのマスコット、ジャビットとシスタージャビットも登場して、ジャンルも文化も混在した開放感満点のクライマックスへとオーディエンスを巻き込んでいった。「東京ドーム! ライブ・ビューイング、行きますよ!」と10回のカウントで曲を締めると、「サザンオールスターズ!」と叫んだ桑田。メンバー、サポートメンバー、「エバトダンシングチーム」のダンサーたちを紹介すると、原が「そして、桑田佳祐ー!」と改めて紹介して、「どうもありがとう! サザンオールスターズでした!」と、全員でラインナップして一礼。観客、スタッフへの感謝を伝えて「いつかどこかでまたお会いできる日を楽しみにしています!」と挨拶した。最後は、「闘魂注入します! 1、2、3、ダー!!」と、東京ドーム中が拳を突き上げて、ツアーファイナルは大団円となった。

 10年ぶりのアルバムリリースツアーということで、アルバム曲を14曲中12曲披露したのが、近年のライブと比較してとても新鮮に感じられた。もちろん、ライブで聴きたい定番曲は山のようにあったものの、これだけのキャリアがあるバンドが今もなお新曲を作り続け、最新のサザンを最高のライブの中で届けてくれること、ファンにとってこれ以上の喜びはないはずだ。これからもサザンオールスターズへの期待と信頼は揺らぐことがない。そんなことを思ったツアーファイナルだった。

Text by 岡本貴之
Photos by 西槇太一

◎セットリスト
【サザンオールスターズ LIVE TOUR 2025「THANK YOU SO MUCH!!」】
※2025年5月29日(木)東京ドーム公演
1. 逢いたさ見たさ 病める My Mind
2. ジャンヌ・ダルクによろしく
3. せつない胸に風が吹いてた
4. 愛する女性(ひと)とのすれ違い
5. 海
6. ラチエン通りのシスター
7. 神の島遥か国
8. 愛の言霊(ことだま)~Spiritual Message~
9. 桜、ひらり
10. 神様からの贈り物
11. 史上最恐のモンスター
12. 暮れゆく街のふたり
13. 風のタイムマシンにのって
14. 別れ話は最後に(アコースティックセット)
15. ニッポンのヒール(アコースティックセット) 
16. 悲しみはブギの彼方に
17. ミツコとカンジ
18. 夢の宇宙旅行
19. ごめんね母さん
20. 恋のブギウギナイト
21. LOVE AFFAIR~秘密のデート~
22. マチルダBABY
23. ミス・ブランニュー・デイ (MISS BRAND-NEW DAY)
24. マンピーのG★SPOT
<アンコール>
1. Relay~杜の詩
2. 東京VICTORY
3. 希望の轍
4. 勝手にシンドバッド


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