<ライブレポート>YMOへのリスペクトと愛が溢れる一夜限りの特別公演、日本の音楽シーンに与えた影響を再認識

2025年5月26日 / 20:00

 YELLOW MAGIC ORCHESTRA(YMO)に啓発され創作活動を行うアーティストが集結、一夜限りのトリビュートライブ【MUSIC AWARDS JAPAN A TRIBUTE to YMO -SYMBOL of MUSIC AWARDS JAPAN 2025-】が、5月20日に京都・国立京都国際会館で開催された。

 国内最大規模の国際音楽賞【MUSIC AWARDS JAPAN】において<SYMBOL OF MUSIC AWARDS JAPAN 2025>にYMOが選ばれたことから開催されたこのスペシャル・コンサートでは、バンドマスターの高野寛(G & Vo.)を中心に、網守将平(Key)、大井一彌(Ds)、ゴンドウトモヒコ(Seq & Horns)、鈴木正人(B)、高田漣(G & Vo.)という実力派たち6名がホストバンドを務め、YMOにゆかりのある豪華ゲスト・ミュージシャンたちが続々と登場した。YMOがジャンルや世代を越えて与えた影響の大きさ、そして“テクノポップ”という範疇だけに収まらないエヴァーグリーンな楽曲の多面性を再認識させるものとなった。

 ステージには、まずテイトウワがDJとして登場。YMO縛りの選曲で30分ほど名曲の数々を巧みにスピンし、終盤には坂本龍一の「Riot In Lagos」なども挟みながらダンサブルさを高めると、スクリーンにはYMOの歴代アルバムも投影されてこれから始まるショーへの期待を募らせた。

 そして、6人のホストバンドのメンバーが登場すると、ヴォコーダーなども駆使しながらYMOサウンドへの敬意に溢れた「Technopolis」、オリエンタルな旋律の「中国女」を演奏し、最初のゲストとして東京スカパラダイスオーケストラの4人のホーン奏者がステージに呼び込まれた。打ち上がる花火のようなレーザー照明も効果的だった「Cosmic Surfin’」で盛り上げると、続いては96年に発表したアルバムでカバーした「Simoon」を。エキゾラウンジ的な原曲が持つ魅力を絶妙に引き出す演奏で、YMOの音楽が内包する多様なエッセンスを体現した。

 続いてはサカナクションの山口一郎が呼び込まれ、熱量の高いボーカルとともに彼が担ったのは「過激な淑女」「以心電信」の2曲。YMOのポップサイドに光を当てて、会場内のテンションを着実にアップさせると、さらに大きな歓声を伴ってステージ上に迎え入れられたのは、岡村靖幸。序盤から客席にハンドクラップを求め、曲の合間ではターンなどを連発しながら、場内を完全に“岡村ちゃんワールド”に塗り替え、大胆なニューウェイヴ・ファンク風のアレンジを伴った「The Madmen」で熱狂させると、続いてはレーザー照明が場内にハートマークを描く中で、もうこの人が歌うしかないと誰もが納得するハマり具合で「君に、胸キュン。」を聞かせた。

 そして、故・坂本龍一を父に持つ坂本美雨は、浮遊感のある歌声で「音楽」を聞かせると、クラシカルなピアノによるイントロから生前に父がYMOで最もお気に入りの曲とも話していた「Perspective」を。歌い終えた後に「みんなでこの音楽を愛せて、とてもうれしいです」とMCで語ったのも印象的だった。続いては、この日の唯一の海外アーティストとして名を連ねたジンジャー・ルートがファンキーなギターを弾いて「Tighten Up」を取り上げる。曲中の<ジャパニーズ・ジェントルマン、スタンド・アップ・プリーズ!>という一節も連呼して会場内を一大ダンスフロアに変えると、そこにコーネリアスこと小山田圭吾が加わってYMOの起点ともなった名曲「Firecracker」を共に演奏し、グルーヴィーな2大カバー曲で盛り上げた。

 1曲ごとにサプライズが起こるようなゲスト人選と選曲の連続でヒートアップさせたところで、終盤はよりYMOリスペクト度を高めた内容による核心部分へ。独自の音色と音響による小山田のギターワークが秀逸だった「千のナイフ」、リードボーカルも取って完璧なコーネリアス流カバーとなった「CUE」で魅了すると、ホストバンドのみの演奏による「Mad Pierrot」も尽きないYMO愛を序盤よりもディープに表現した。そして、2003年生まれの原口沙輔がサンプラーで加わった「Rydeen」を経て、クライマックスは“YMO 第4の男”とも称されて全盛期を支えたシンセ奏者の松武秀樹が登場。ステージ中央に最初から用意されていた巨大にしてヴィンテージなアナログモジュラーシンセ(通称“タンス”)の数々を駆使し、松武自らがヴォコーダーで楽しそうに歌う場面も印象的だった「Behind The Mask」、太い音色のシンセによるイントロから歓声が上がり、再登場した坂本美雨がコーラスとして加わった「東風」と人気曲を立て続けにプレイし、国内外を席巻したYMOサウンドの真髄を貫禄たっぷりに響かせて締めくくった。

 なお、【A TRIBUTE to YMO】公演ではTOYOTA GROUPの水素エネルギーを活用し、CO2を排出しないクリーンなエネルギーが楽器類に供給された。会場外に設置された、水素と酸素の化学反応で電気を起こすFC発電機より給電が行われ、一夜限りの特別公演をサポートした。

Text by 吉本秀純
(C)CEIPA /MUSIC AWARDS JAPAN2025


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