<ライブレポート>MyGO!!!!!×Ave Mujicaによる合同ライブ開催 11名の物語が歩むわかれ道の、その先へ――【DAY1:Petrichor】

2025年5月16日 / 18:00

 【MyGO!!!!!×Ave Mujica 合同ライブ「わかれ道の、その先へ」】が4月26日と27日、神奈川・Kアリーナ横浜にて開催された。

 次世代ガールズバンドプロジェクト「BanG Dream!(バンドリ!)」より誕生したリアルバンド=MyGO!!!!!とAve Mujica。彼女たちの前身バンドだったCRYCHIC。そして、アイドルユニットのsumimiと、合計4組・総勢11名が集結した今回のステージ。今年3月、誰もが固唾を飲んだTVアニメ『BanG Dream! Ave Mujica』も完結し、キャスト、ファンともに最も熱が高まったタイミングでの大舞台となった。

 ライブの全体像について先に説明しておくと、ステージは燈(CV:羊宮妃那/Vo.)と祥子(CV:高尾奏音/Key.)によるナレーションで、彼女たちの“群像劇”のように展開。ふたり率いるバンドが演奏を2巡する形で、両者があくまですれ違うように。メンバーが同時にステージに揃ったのは、アンコールでの挨拶と、CRYCHICとして演奏する瞬間のみだった。また、両日の披露曲はほぼ同一ながら、構成の違いでまったく違う印象を抱けたのも記憶に残っている。2日間を通して、MyGO!!!!!、Ave Mujicaともに、わかれ道の、その先へと向かうべく、改めて気持ちを揃えるような時間だった。

 前作アニメ『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』を含めて、我々がともに過ごしたこの1年半に、まずはひと区切りがつく。“作り話よりできた映画”とでも言わんばかりに、単なるアニメ作品でなく、彼女たちの人生を見届けなくては。そんな使命感すら抱いてしまった。本稿ではまず、26日の【DAY1:Petrichor】 について、なかでも、Ave MujicaとCRYCHICのパフォーマンスを中心に振り返りたい。

 なんといっても、いまのAve Mujicaは無敵である。TVアニメ『BanG Dream! Ave Mujica』 #1の映像をともに、全員が仮面を装着した状態で入場(ということは後ほど)。祥子による「さあ始めましょう。今宵のマスカレードを!」の合図が入る頃には、すでに“あの”ストリングスが妖気を流し込んでくる。1秒ごとに期待感が掛け算さながら増幅され、そこから一気に解放。TVアニメのオープニングテーマ「KiLLKiSS」で、“いま、ヤバいものを観ている”という感覚にどっぷりと叩き落とされる。BPM200ながら、細かな技術を求められる本楽曲。2コーラス目には、全パートがユニゾンとなる聞かせどころもあるが、まさしく客席全体の気持ちすら、そうさせてくれるようだった。

 続けて、エンディングテーマ「Georgette Me, Georgette You」で、ドロリス(CV:佐々木李子/Gt.&Vo.)とオブリビオニスの世界に没入。月の光が傷を癒すのではなく、むしろ疼かせるような楽曲で、アニメのストーリーを思い出しながら感傷に浸ると、もはや目の前で繰り広げられているのはライブを超えて、圧倒的な情報量のミュージカルだな、という想いにすらさせられる。ドロリスのボーカルが音源に増して伸びてくるのはもとより、高尾が先日、インタビュー(<インタビュー>傷すら絆に変えるのがAve Mujicaである――確かな“前進”を刻んだ1stアルバム『Completeness』)で「“打ちひしがれた人って、どのくらいしか力を出せないんだろう?”なんて考えながら、力の抜き具合を意識しています」と語ってくれたように、キーボードがボーカル以上に雄弁になる場面もあった。

 ちなみに、両楽曲が2日目に披露された際、「KiLLKiSS」は#12でメンバーが再出発する映像から、ストリングス抜きで一気にバンドイン。その際の勢いはこの日と桁違いだったし、初日に比べてドロリスの歌声を掠れ声で、さらに弱い発声にして表現を深めた「Georgette Me, Georgette You」。こちらはAve Mujicaパートのラストナンバーとして演奏し、いわゆる“エンディング感”をさらに強めるなど、楽曲によって備える役割がかなり変わっていたと付け加えたい。

 あと、絶対に書き残しておきたいのが、後者の楽曲でドロリスが最後、オブリビオニスの横に歩み寄り、彼女の髪を指で下からそっとつまんで重力でなびかせたシーン。褒め言葉として、“重たい”。これは初日にはない演出で、ふたりのどちらが発案したのかわからないにせよ、アニメの内容を超えると同時に、三角初音というキャラクターを完全に理解しまくっていた。人は、重力に逆らえない。

 「Ave Mujica」では曲中、アモーリス(CV:米澤茜/Dr.)が歌詞を再現すべく、ドラムスティックを回しながら左腕で弧を描いて三日月を浮かび上がらせてみせる。そこから手元のスティックを気だるげに放り、即座にもう片手のスティックを持ち替えるシーンが最高だった(配信では、カメラの方にスティックが向けられていた)。一方、まだ仮面をしていた頃のモーティス(Gt.)を演じる渡瀬結月。ほとんど微動だにせずギターを構えている様にひやひやさせられる。

 現時点までの3曲ですでに大満足。しかしながら、#1での“仮面外し”をここから完全再現。アモーリスがきゃるんとかわいく、麗しく、かつ皮肉めいたドヤ顔で一人ひとりの仮面を剥ぎ取っていく“ハイパーにゃむちタイム”に突入したのだが、その際のオブリビオニスの唖然とした表情といったら。

 そして、このシーンを目撃した我々観客。面白いくらいに歓声を上げてしまったし、特にアモーリスがモーティスの顔に手をかけたときのこと。それまで姿をひそめていた女性ファンが一気に沸き上がっていたが、あのときの黄色い歓声はいまでも脳内で鮮明に再生できる。ところで、今回の劇はプレスコ形式で当て振りをしていたが、そのあたりは彼女たちの“人形らしさ”を担保してのことか。あえて生ボイスでなかった意味がありそうなため、読者各位にもぜひ理由を考えてみてもらいたい。

 ステージ2巡目を迎えて、Ave Mujicaはラストブロックも担当。「Imprisoned XII」は、月に捨てられたゆりかごで歌うかのように、アコースティックギターで孤独を表現する。「Crucifix X」では途中、波動弾のような低音衝撃波に身を包まれることに。“Kアリーナ横浜のネジを緩ませたのでは?”と思うほどの、ありえないサブベース。その間、冒頭の「KiLLKiSS」然り、ことあるごとにスクリーンにバンドロゴを映し出す大味な演出も、いちいちカッコいい。

 「八芒星ダンス」にも語りどころが。オブリビオニスが鍵盤に腕から身体を預けて、愛でるようにキーボードを弾いたり、ティモリス(CV:岡田夢以/Ba.)が顔を振り回しながら“信用のベース”をかき鳴らしたり、アモーリスが後ろでとにかく荒ぶっていたり。いくつ目が合っても足りない圧巻のステージで、そんな状況でも全員の目を瞬時に釘付けにしたのが、モーティスによる“ギター回し”。背中の方へと大胆にギターを滑らせ、フロントでキャッチしてから脇をキュッと閉めるところまで、これまたアニメを完全再現である。

 そのまま、キャラクターの顔がビートに合わせて次々に映し出される「顔」と、Ave Mujicaは傷すら絆に変えられるバンドだと、彼女たちにとっての幸せを描いたかのような「天球(そら)のMúsica」をもって、ライブ本編は幕を下ろした。

 さて、前述した“仮面外し”の直後にも、2日間でのハイライトのひとつ。『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』#3より、歩道橋の上での燈と祥子のやり取りが投影された後、CRYCHICの5名が揃って「人間になりたいうた」「春日影」を初披露。これがもう、完全に“総合芸術”でしかなかった。

 というのもMyGO!!!!!、Ave Mujicaと比べて、“あ、やっぱりなんか違うな”という違和感を、我々に共有してくれたからである。語弊を恐れずに言えば、上手く歌い、演奏できるのに、あえてそうしない。途中でピッチが飛んだり、演奏もややぼやけて曖昧な部分があったり……アンサンブルが所々噛み合わず、技術が気持ちに追いついていない初々しい姿を、ステージ表現として逆に“正確無比”に落とし込んでいたからである(と同時に、羊宮が曲終わりに渾身のロングトーンを披露するなど、その後の“可能性”をちらつかせる部分もあったとは補足しておきたい)。

 さらにいえば、いまでこそ「立希です」のぶっきらぼうな挨拶とともに一礼を欠かさない立希(CV:林鼓子/Dr.)が、この場面では頭を下げなかった。こうしたパフォーマーとしての意識の違いを感じさせる細かな点などもそう。単なる演奏ではなく、演技であること。メディアミックスの表現として最高峰のものではないだろうか。その点において『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』#3にて描かれなかった、CRYCHICの初ライブにおけるMCなどの模様がキャストによって演じられるなど、アニメの“その先”を新たに見せてくれた優しさが胸に沁みる。

 2日目の幕間映像でも言及があった通り、それこそ「普通の私たちが、普通にバンドしてた、普通のバンドだった」というのが、CRYCHICに与えられたアイデンティティである。キーボードの音色で暖かな感情になる「春日影」も、この後に演奏された安定感抜群な「春日影(MyGO!!!!! ver.)」も、懐かしいけれどどこか違う。いまの居場所でもないし、そこで鳴らす音でもない。

 この特異点を目の前にした暖かな違和感こそ、このタイミング、今回のライブでしか抱けない一回きりのものである。あくまで筆者の感想と前置きしつつ、MyGO!!!!!、Ave Mujica、そしてsumimiももれなく、いまの居場所がいちばんよい。CRYCHICは、終わるべくして終わったバンドであるーーそんな気持ちにさせられるパフォーマンスだった。

 全19曲を披露したライブのうち、あくまで抜粋で取り上げた形となるが、初日を終えてまだ完全に見えてこない部分もあった。ただ終演前のMCにて、林が「この伝説はまだ始まったばかり」「明日のDAY2で、この物語がどう幕を閉じるのか。みなさまぜひ刮目してください」。さらには、青木陽菜(要楽奈役/Gt.)も「晴れやかな気持ちで。もちろんいろんな気持ちを抱えながら。どんな気持ちでも。迷いを持って見てもよいですし、みなさまの気持ちに寄り添いながら、一緒に楽しいライブを作れたら」と語ってくれたように、本当の“答え”はこの翌日に待っている。

 11名の物語がどんな結末を迎えるのか。引き続き、レポートしていきたい。

Text by 一条皓太

◎公演情報
【MyGO!!!!!×Ave Mujica 合同ライブ「わかれ道の、その先へ」】
2025年4月26日(土) 
神奈川・Kアリーナ横浜
出演 : MyGO!!!!!、Ave Mujica、CRYCHIC、sumimi
<セットリスト>
【DAY1 : Petrichor】
sumimi
M1 Here, the world!
M2 Sweet Escape

MyGO!!!!!
M3 聿日箋秋
M4 迷路日々
M5 迷星叫
M6 壱雫空

Ave Mujica
M7 KiLLKiSS
M8 Georgette Me, Georgette You
M9 Ave Mujica

CRYCHIC
M10 人間になりたいうた
M11 春日影

MyGO!!!!!
M12 碧天伴走
M13 春日影(MyGO!!!!! ver.)
M14 詩超絆

Ave Mujica
M15 Imprisoned XII
M16 Crucifix X
M17 八芒星ダンス
M18 顔
M19 天球(そら)のMúsica


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