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ジェイムス・ブレイクは「今までに感じたことのないほど自由だ」と、最近のZoom通話で米ビルボードに語った。
約12年間ポリドール・レコードと契約していたこのプロデューサー/シンガーは、現在は独立し、“インターネットのスピードに合わせて”音楽をリリースする新たな方法に挑戦しているという。
メモリアル・デーの週末の日曜日、ブレイクはポリドール脱退後初となるシングル「Thrown Around」をリリースした。「アナーキーな行動だったことは分かっている……日曜日は音楽をリリースするには最悪な日だけど、今ならやってみても楽しいと思った」と、彼は笑いながら語った。
レーベル移籍後の新たな実験のひとつとして、ブレイクはクリエイティブなコラボレーターに対して、前金(該当する場合)と“ポイント”、すなわち原盤印税の割合の両方を支払う方針を掲げている。そうすることで、全員が「曲をプッシュすることがインセンティブとなり、共に勝利することができる」と彼は語る。通常、原盤のポイントはレコードのプロデューサーにのみ割り当てられるが、ブレイクはさらに一歩踏み込み、プロデューサー以外のソングライターや、自身のクリエイティブ・ディレクターであるクラウンズ&アウルズにもポイントを提供している。
この試みを実現するため、ブレイクは“アーティストは創業者である”というスローガンを掲げる音楽スタートアップ、インディファイを活用した。インディファイでは、スタートアップ企業のようにリリースのための資金を調達し、利益を得ることができる。従来のレーベル契約とは異なり、インディファイはアーティストが楽曲単位で戦略的なエンジェル投資家とつながることができる“サービス・マーケットプレイス”だと、CEO兼共同設立者のシャヴ・ガルグは説明している。興味を持ったアーティストは、Thrice Cooked Media、Golden Kids Group、ATGといった音楽業界のプレイヤーや、アレクシス・オハニアンのような音楽志向のシリコン・バレーの重鎮を含むエンジェル投資家のオンライン・リーダーボードから、成功指標や経歴をもとにパートナーを選ぶことができる。
インディファイを利用するアーティストは、投資家が提供する先行投資とサポートの回収が完了するまで、楽曲のストリーミング使用料の一部を譲渡する仕組みになっている。(なお、インディファイは回収後の投資家の取り分から15%を差し引き、さらに投資家はストリーミングのロイヤリティの50%以上を保持することは認められていない)
2015年に設立されたインディファイは、インディー・アーティストによるバイラル・ヒットに、ガルグによると“火に油を注ぐ”ツールとして位置づけられている。同社は、アルマーニ・ホワイト、ピンク・スウェッツ、アニーズといった注目の若手アーティストたちの成功を支援してきたが、今のところブレイクがこのプラットフォームを利用した最も知名度の高いアーティストだ。「インディファイがアーティストを20から70に引き上げる手助けができることはすでに証明されていますが、私たちの目標のひとつは、メジャー・レーベルのように70から100へ引き上げることです」とガルグは語る。「ジェイムスが次世代のアーティストたちのために道を切り開き、率先してこのような挑戦に飛び込もうとしているのがわかります」
ブレイクとガルグは数年前、全米オープンテニスで初めて出会い、後にブレイクのマネージメントを通じて再会した。ちょうどブレイクが、新たに見出した自由や、今後のキャリアをこれまでとは違った形で扱っていきたいという願望について率直に話し始めたときのことだった。「Thrown Around」がリリースされる前、ブレイクはインディー・アーティストとしての取り組みとして、スーパーファン向けアプリ「Vault.FM」と提携し、未発表デモ音源を月額制でファンに提供するサービスを展開していた。
ガルグとブレイクは「レーベルでは、自分の音楽が100万もの部門の資金源になっている」という考えで一致していた。「巨大な動く船の舵を取るのは大変だし、異常な諸経費によって肥大化したビジネスでもある。ケイマン諸島にあるCEOの豪邸のために金を払いたくはない」とブレイクは語る。また、レーベルとの契約下では、自分のために資金がどのように使われているかについて“透明性が欠けていた”と感じており、たとえ自分に割り当てられた担当者が彼のプロジェクトを理解していないように見えたとしても、レーベル内でチームを選ぶ自由が“ほとんどなかった”とも振り返っている。
ブレイクはインディファイとの最初のリリース作品を選ぶ際、何度も試行錯誤を重ねていたが、その過程で「Thrown Around」が生まれ、これが彼のキャリアの新しい段階への導入としてふさわしいと即座に感じた。その理由は明確だった。この楽曲(2024年5月26日リリース)とそのミュージック・ビデオでは、ブレイクがあらゆる手段を使って自分の音楽をバズらせようと必死になるアーティスト像が描かれている。ビデオのラストでは、アルゴリズムに媚びるために試みた数々の手段によって、彼が血まみれになり、傷つき、最終的にそれでは自分の芸術を支えるにはどれも十分でなかったことを知る。
「ジェイムスは、他のユーザーと同じようにインディファイにオンラインで登録して、使いました」とガルグは語る。ブレイクは最終的に、インディファイのリーダーボードで見つけたGood BoyとStellar Musicの組み合わせで「Thrown Around」のチームを構成した。(後にStemが加わり、ディストリビューションを担当した。)
Good Boyの共同設立者ジョン・ザモラは、「この曲がリリースされる前に、ジェイムスとの契約金はすでに回収していました。それ以上は言えないですが、かなり大きなシンクを獲得しました」と語る。Good Boyのチームは、ブレイクの映画・テレビ向けのライセンス(シンク)の機会を広げるために信頼できるパートナーを招き、資金調達、リリース戦略、運営面でサポートした。だが何より、ソングライターにより良い報酬を提供するという共通の想いでブレイクとつながりを築いた。
ここ数年、ストリーミングにおけるソングライターの報酬減少が取り上げられているが、プロデューサーとは異なり、ソングライターは通常原盤制作から収益を得ることができない。こうした状況に対して、“ポイント”提供という解決策を提示するインディー・レーベルも現れている。米ビルボードが2023年12月に報じたように、Good Boy、The Other Songs、Facet Records、Nvak Collectiveといったレーベルがこの動きに加わっている。
Good Boyの共同設立者エリー・リズクやトレ・ジャン・マリーらも、ソングライターとのコラボレーターにポイントを提供しており、ブレイクも「Thrown Around」を通じてこのムーブメントに加わろうとしている。
そしてデジタル・マーケティングの支援を目的に、ステラー・ミュージックが、ブレイクのインディファイとの契約に参加した。「自分が音楽を始めた頃とは状況が変わった」とブレイクは語る。「当時はミステリアスな存在でいるのが簡単で、マスクをしたプロデューサーがたくさんいた。でも今は、それをやりながら音楽を発表するのはかなり難しい。もう、そういう時代じゃないんだ」
ブレイクはマスクをかぶるような極端なことはしなかったが、キャリア初期に“悲しげな”ミステリアスな天才音楽家というイメージを持たれていた。だが、ここ最近はそのイメージに反発している。最近のインスタグラムのリールでは、「僕が永遠に悲しい音楽を作るために、悲しくい続けてほしいと思っている人たちのために、悲しいふりをする練習をしている」と冗談交じりに投稿し、ファンをからかってみせた。
ブレイクは米ビルボードに対し、「これほどまでに自分の音楽のプロモーションと深く結びついていると感じたことはない」と語る。彼は「Thrown Around」のマルチメディア・ストーリーテリングを構築するにあたって、ステラー・ミュージックの共同創設者であるライアン・ピーターソンと継続的に連絡を取り合い、ブレインストーミングを行った。「意味のあるものにしたかったんです。ジェイムスがメジャー・レーベルを離れ、独立へと進んだという深い物語がありますから」とピーターソンは語る。「彼とは、常にテキスト・メッセージでアイデアをやり取りしています。」
「Thrown Around」のミュージック・ビデオは、SNS投稿をしなければならないアーティストの葛藤を描いた、“メタな”SNS投稿として、断片的にそのストーリーが予告されていった。現時点でこの曲が米ビルボード・ソング・チャート“Hot 100”にランクインするかは不明だが、ブレイクは「Thrown Around」が自身のキャリアにおいて「これまでのどのシングルキャンペーンよりも成功している」と主張している。
さらに重要なのは、デジタル・ストーリーテリング、無駄のない予算設計、エクイティ・インセンティブ、そして曲単位でパートナーを自由に選べる仕組みが、今日の市場においてクリエイティブかつ経済的な成功を生み出しているという事実である。現在、ブレイクは次のシングルのために、再び同じチームと協力する計画を進めている。「(“Thrown Around”で)何か画期的なことを成し遂げられたと感じている」とブレイクは語り、「未来が楽しみだ」と続けた。
By: Kristin Robinson / 2024年6月5日 Billboard.com掲載
◎公演情報
【FUJI ROCK FESTIVAL ’25】
期間:2025年7月25日(金)、26日(土)、27日(日)
会場:新潟県 湯沢町 苗場スキー場
※ジェイムス・ブレイクの出演は26日となります。
INFO:FUJI ROCK FESTIVAL
https://www.fujirockfestival.com/
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