<ライブレポート>jo0ji、煮ル果実との念願の初共演で広げた【馴染】の輪――2マンツアー東京公演

2025年3月27日 / 19:00

 シンガー・ソングライターのjo0jiによる東名阪2マンツアー【馴染】。初日の大阪にはOmoinotake、名古屋にはWONKと、jo0ji自身が“馴染”になりたいと熱望したアーティストを招いて熱い対バンを繰り広げてきた今回のツアーのファイナルが、3月21日に東京・Spotify O-EASTで行われた。この日の対バン相手は、jo0ji自身がずっと好きで聴いてきたアーティストである煮ル果実。お互いのカバー合戦も飛び出した、愛とリスペクトに溢れた一夜の模様をレポートする。

 まず登場した煮ル果実は「LIFE BAUTE」からライブをスタート。イントロが鳴り始めた瞬間歓声が沸き起こる。続いてステージの真ん中に置かれた花のオブジェが光り、ボーカロイドを駆使して「ボーカル」を務めるAI、ムウが「演奏とパフォーマンスをお楽しみいただけますと幸いです」と挨拶すると、「アイアルの勘違い」の力強いサウンドが鳴り出した。テクニカルなフレーズからエモーショナルなリフまでを大胆に行き来するギター、ゴリゴリと重低音を響かせるベース、切れ味の鋭いフィルを決めるドラム。どこまでも生々しいバンドサウンドの上でボーカロイドと煮ル果実の声が絡み、場内の空気の温度を一気に上げていった。

 続く「ハングリーニコル」のサビでは、煮ル果実の動きに合わせてオーディエンスの手が上がり、本人も飛び跳ねたり体を激しく折り曲げたり、サウンドに合わせて熱くアクション。ダンスミュージックからメタル→ジャズ→ロックと目まぐるしくサウンドを展開させていくこの曲が、この日最初のハイライトを描き出した。「今回こうやって、本来お会いできなかった方ともお会いできる機会をjo0jiさんが与えてくださった。感謝しています」。そんな言葉とともに“煮ル果実”というプロジェクトに込めた思いを口にすると、それまで手にしていたギターを置き、ハンドマイクで歌う「命辛辛」へ。煮ル果実が煽る声にフロアからも声が上がり、一体感はさらに高まっていく。

 その後も煮ル果実によるラップが冴え渡る「ファニー・インシピッド・キャンディ・ベンダー」に拡声器で歌い叫ぶ「トラフィック・ジャム」と、楽曲を畳み掛けていく。どの曲でも最初の音が鳴った瞬間に歓声が起き、jo0jiを知って衝撃を受けたという煮ル果実。jo0ji自身も彼らの曲をよく聴いていたらしく、それが今回の初共演につながったようだ。「ラブコールを受け取ったような気持ち」とその心境を言葉にすると、「灰Φ倶楽部」からライブは再びスタート。力強いカウントから「紗痲」に突入すると、捲し立てるような歌とキャッチーな四つ打ちのリズムでボルテージは最高潮。「歌ってくれますか?」という言葉にフロアからも歌声が生まれ、多くの人を巻き込んでいった。

 そして「LOST SHIP」を壮大に披露すると、「またいつの日にか、みなさまとお会いできることを願っております」とムウが最後の挨拶。そして煮ル果実は“jo0jiとの出会いの曲”だという「不屈に花」のカバーを披露し始める。どっしりときたバンドサウンドの上で力いっぱい歌い上げる彼の姿からは、今日のホストに対する大きなリスペクトが伝わってきた。最後は「ZOO」。手拍子が巻き起こるなか真摯なメッセージを伝え切ると、煮ル果実は深々と礼をしてステージを去っていった。

 いよいよjo0jiのステージが始まった。青い光に照らされ、波音が響くステージに祭囃子が聞こえてくる。そして登場したjo0jiが「行けるかい?」とギターを鳴らし、「明見」を歌い出した。ずしりとした質量を感じさせるロックサウンドと力感のこもった歌がフロアを揺らす。手を突き上げるオーディエンスを見渡して「いいねえ」と一言。その言葉に歓声が沸き起こった。

 続けて、ぐんぐんと空へと駆け上がっていくようなサウンドが広がる「眼差し」へ。ドラマティックに展開するバンドのアンサンブルに乗って、jo0jiの歌にもますます熱が入る。それにしても、ドラム、ベース、ギター、キーボード、どの楽器もめちゃくちゃパワフルなプレイを展開しているなかで、そのすべてを突き抜けるようにして耳の奥まで入ってくる彼の歌声はやはり圧倒的である。コードを首の後ろから回してハンドマイクで歌う「escaper」でも、ゴリッとしたグルーヴを完全に掌握して自身への援護射撃に変えてしまう。どこか気怠げで、でもその薄皮一枚をめくった奥にはとんでもなく熱いものが煮えたぎっているような、その歌と佇まい。アーティストとしての求心力とはこういうことをいうのだろう。その後フラフラとステージをうろつきながら「歌うところがあるんすけど、歌ってくれますか?」という言葉とともに「Nukui」を届けると、O-EASTに起きる〈everything is all right〉の大合唱。「ありがと!」とjo0jiはフロアに笑いかけたのだった。

 今回のツアータイトルについて「東京に音楽やりに出てきてからというもの、“馴染”の人がどんどん増えてきて。馴染の人がどんどん増えていったらいいなと思って、馴染になりたい人を呼んだ」と説明すると、この日のゲスト、煮ル果実との“馴れ初め”を語りだす。「田舎って、やることないからカラオケ行くんすよ」と言いつつ、彼の楽曲を歌っていたことを明かすと、「つうことで、煮ルさんの曲をやりたいと思います」と歌い出したのは「アイアルの勘違い」。“ニル”繋がりでニルヴァーナ「Smells Like Teen Spirit」のリフとリズムをサンプリングしたヘヴィなサウンドをぶちかますと、一転して切なげなピアノのサウンドから始まる「BAE」を歌い上げ、バックライトに照らされるなか、ストリングスの音色が美しい「ワークソング」へ。額に手を当てフロアを見渡しながら語りかけるように歌うjo0ji。アッパーなリズムにその距離感の近い歌が合わさると、まるでそれは希望そのものだ。そして先ほど煮ル果実もカバーしていた「不屈に花」を披露すると、「ありがとう」の声に大歓声が巻き起こった。

「新曲を12日に出したんだけど聴きました? いい曲だよね」。再び話し始めたjo0ji。「未来は明るいということを言いたくて作った」というその曲「謳う」が始まっていく。アコースティックギターとハンズクラップだけで始まった曲は、2コーラス目で一気にスケールの大きな風景を描き出す。もちろんリリースされたばかりというのもあるが、この曲が持っている「みんなとひとつになる力」はとんでもない。彼のきわめて個人的な心情や風景が、音楽になることによってこれだけ多くの人と繋がれるというのは、まるで魔法のようだ。そんなjo0jiの音楽の力を象徴するように鳴り響いた「謳う」はこれからのjo0jiの“テーマソング”になっていくだろう。そんな予感を感じさせる美しい光景が広がったのだった。

「最後の曲です、今日はありがとう」と唐突にライブの終わりを告げると、「≒」を届け、一度ステージを去ったjo0ji。アンコールでひとり戻ってくると、キーボードの前に座り「弾き語りやります」と未音源化曲(「新規録音」が通称のためタイトル未定とさせてください)を歌い始めた。弾き語りとはいえ、“素朴”とか“シンプル”とかとは程遠い豊かな音楽が溢れ出す。そしてバンドメンバーを呼び込んで紹介すると、7月に渋谷クアトロでワンマンライブ【special oneman live「onajimi」】を開催することを発表し、大きな拍手を浴びるのだった。祝福ムードのなか披露されたラストチューンは、煮ル果実を呼び込んで彼の楽曲である「ヲズワルド」のカバーを披露。心から嬉しそうな顔でセッションを繰り広げると、「また会いましょう!」とライブの幕を下ろしたのだった。

Text:小川智宏
Photo:Ayumu Kosugi

◎公演情報
【jo0ji 2man tour 馴染】
2025年3月21日(金) 東京・Spotify O-EAST

▼セットリスト
煮ル果実
M1.LIFE BAUTE
M2.アイアルの勘違い
M3.ハングリーニコル
M4.命辛辛
M5.ファニー・インシピッド・キャンディ・ベンダー
M6.トラフィック・ジャム
M7.灰Φ倶楽部
M8.紗痲
M9.LOST SHIP
M10.不屈に花(jo0jiカバー)
M11.ZOO

jo0ji
M1.明見
M2.眼差し
M3.escaper
M4.Nukui
M5.アイアルの勘違い(煮ル果実カバー)
M6.BAE
M7.ワークソング
M8.不屈に花
M9.謳う
M10.≒
M11.タイトル未定(未発表曲)
M12.ヲズワルド(煮ル果実コラボレーション)

【jo0ji special oneman live 「onajimi」】
2025年7月12日(土) 東京・渋谷CLUB QUATTRO
OPEN 17:45 / START 18:30


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