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Creepy Nutsが、2月11日にワンマンライブ【Creepy Nuts LIVE at TOKYO DOME】を東京・東京ドームにて開催した。
チケットは早々に完売となり、追加販売された見切れ席もソールドアウトし、完全満員となったこの公演。当日は朝早くからグッズに並ぶファンや、開場を待つオーディエンスでドーム周辺はごった返し、その注目度の高さを感じさせる。
開演時刻の18時。会場の明かりが落ちると、真っ暗なステージにふたつの影が浮かび、オーディエンスは大きな拍手を送る。R-指定がマイクを手に取り、DJ松永がDJブースにセットしターンテーブルを回すと、ライブは「中学22年生」からスタート。ド派手な演出ではなく、非常にシンプルにステージの幕開けに、手拍子で応えるオーディエンス。そして〈ビルボードで1位を獲る人生〉というリリックで人差し指を上げるR-指定に歓声が沸き起こり、会場の熱気は高まっていく。
スクリーンに「Creepy Nuts Live at TOKYO DOME」という文字とふたりの姿が浮かび上がると、楽曲は「doppelgänger」へ。〈よく似てんな/俺お前のドッペルゲンガー〉という言葉で観客を指差して、観客とリリックを接続し、オーディエンスも当事者とするようなパフォーマンスは見事だ。そのまま「ビリケン」に流れ込み、DJ松永はミキサーでの音の抜き挿しとスクラッチで楽曲に変化をつけ、そのフィジカルな展開とステージに、観客は拍手と歓声、ジャンプで応える。
「東京ドーム調子どうですか! 今日は約5万人の大人数の前で、マイク一本とターンテーブルでどれだけやりあえるか楽しみです。客演もダンサーもないぞ。唯一客演があるとしたら、お前ら一人ひとり全員やな。俺らの歌をアテに、“よふかし”できればと思います」というMCから、ライブは「よふかしのうた」へ。〈お前に手を引かれて/東京ドームまで来てしまった〉というリリックの粋な織り込みも素晴らしい。そしてコール&レスポンスで始まった「堕天」から、彼らにとってもリリース時とは対象への認識が大きく変わったといっていい「紙様」、MVなどを通して彼らの注目を高めた「合法的トビ方ノススメ」と、クラシック楽曲、かつジャズ的な要素を取り込んだ楽曲が連続されていく。
MCでは「めちゃくちゃデカイな」と感慨深げに話すDJ松永。R-指定も「デカいし、大声の圧が違うわ。マジで楽しみ方は自由やからな、俺らのライブは。動きたいように動いていいし、ここまできて周りの反応を気にしなくていいから」と呼びかける。一方「人前に出るのがすごい久々だし、照れる。あんまり見ないでほしい。思春期みたいな気持ちになる」と、DJ松永は突然に自意識を発露させ、「中学生みたいな顔してるなと思ってた。でも、いつまで経ってもそれは直らんよな、分かるわ」とR-指定も同意する。そのままここ最近のふたりの話に入り、「Rはご家庭があるから人と話してると思うけど、俺は喋らなすぎて、いまどう立ち振る舞っていいかすらわからない」というDJ松永。
ライブは、アルバム『LEGION』収録の「はらぺこあおむし」で再開。冒頭のフックを歌い終わると、楽曲をプルアップ(※主にレゲエで使われる、曲を切ってかけ直す手法)し、「俺らがラップ始めた頃、居酒屋で無料のキャベツをずっと食ってた時に、仲間(梅田サイファーのメンバー・テークエム)が言ったパンチラインをみんなで言ってくれますか」と呼びかけ、〈はらぺこあおむしだった俺ら〉というバースを観客と合唱。その一体感をより強めていく。そのまま”生きづらさ”を許し合いたいとメッセージを伝える「オトナ」から、〈なんならFANZAプレミアム会員〉と、どう考えても東京ドームで大声で歌うことではないリリックに5万人の観客が手拍子するという、異常すぎる時空を生み出した「ちゅだい」、ライブならではのがなりとフリーキーさで彩られた「耳無し芳一Style」へと進んでいく。そして”5万人を踊らせるターンテーブル・ルーティン”という、世界的にも稀有なパフォーマンスであるDJ松永のルーティン披露から、5万人が踊り合唱した「Bling-Bang-Bang-Born」へ。その意味でも、彼らの過去から現在までを繋ぎ、その根底にある意識やスキルを披露し、その決着としての世界的ヒットという一連を、このパートでは提示していた。
MCでは「初披露の曲もこんなについてきてくれるん? すごいわ。昔からの曲も威力を増してると思うし、贅沢やわ」と観客に呼びかけるR-指定。続く「風来」「dawn」「ロスタイム」という”時間の経過”が通底する3曲に続き、「俺は堅苦しいことや指図されるのが苦手やし、足並み揃えたりが本当にできない。だけどそうやって生きてる時の全感情を、間違いないものだと思いたい。唯一、自分にとってブレてないのはラップすること。どんなに世の中や考え方、自分自身が変わっても、マイクさえ、ペンさえあれば、ラップができる。何が起きても、ひとりぼっちでも、ラップを選ぶと思う」と、シリアスに自分自身の内省を言葉にするR-指定。そして「だってこれは、アカペラでも聴けるラップやから」という言葉から、アカペラで「生業」へ。ノンビートの上で、時に間を取り、時に畳み掛け、時に言葉の高低を使い分け、そのラッパーとしての矜持をドームで形にする姿勢。そして「ぶちかましたライブ……今日やな」という言葉、途中で織り込まれたフリースタイルには、強く心が揺さぶられる。
そのままDJ松永がビートを流すと「LEGION」へ。タフなビートの中で、オートチューンも含めた多彩なラップで、多面性や多様性を描く。その原点と現在とのあり方や意識を自傷的とも言えるスタンスで書く「15才」から、その“15才”が東京ドーム公演という栄光を手にした時に生まれた心情と、その過程とをつまびらかにする「Get Higher」という流れは、いまの彼らにしか作れない構成であり、この場所にいるであろう、過去の彼らと同じような存在にも届くものだろう。
「20年前、日本語ラップに出会った時からは想像もできない場所に立ってる。ラップに出会って、やっと人と肩を並べて、誇れるものが生まれた。いまも自分は子どものままなんやな、と驚くこともあるけど、見てくれよこの景色。“のびしろ”のほうがあったんちゃうかな」とR-指定は伝え、大歓声に包まれるなか「のびしろ」へ。セカンドバースは「お前ら歌ってくれ」とマイクを観客にむけ、大合唱と手拍子がドームに広がる。DJ松永のスクラッチも印象に残る「かつて天才だった俺たちへ」、普遍的なメッセージを伝える「二度寝」と、Creepy Nutsの持つポジティブさに貫かれた曲に続き、楽曲は「オトノケ」へ展開。会場の熱気は最高潮に。
「ありがとう。今日はめっちゃかませてるように思える。東京ドームええやん」というR-指定に、「面白い。おもしれーハコじゃん、東京ドーム」と返すDJ松永。ここからエンディングが近いというのに、感動的な話ではなく、完全に余談を始めるふたり。「(こういう場で)どっちかは『日本の音楽シーンに足跡を刻んだ』みたいな話をすんねん。でも、こういうやつがおってもええよな。その最たるものがCreepy Nuts。だって俺が【UMB】(【ULTIMATE MC BATTLE】)で優勝して、満を持してリリースしたソロアルバムで、俺はなんて言ったと思う? ”使えない奴ら”」という言葉から、Creepy Nutsの原点とも言える「使えない奴ら」がスタート。そして彼らがスターダムに登る過程で歌われた「土産話」のラストは、〈年末空けといてよかったわ〉と、2024年末の『紅白』出場を念頭に置いたリリックへとラストが変更され、その物語の決着が変化するのも、ひとつのドキュメンタリーだと感じた。
「本当にいい景色が見れましたよ。よかったわ、しか言われへん。東京ドームありがとう。まともな想いは曲の中でしか言われへんけど、しょうもなくて、最高で、スペシャルな“通常回”でした」という言葉に続き、ラストは「通常回」。マイクを置き、ターンテーブルを止め、「めちゃくちゃ楽しかったわ東京ドーム、ありがとうございました!」という言葉でライブを締めくくった。
東京ドームという規模に対して、1MC1DJで、マイクとターンテーブルで、これまでの楽曲を詰め込んだ構成で、シリアスなメッセージからどうかしてるトークまで織り込み、これまでのライブと変わらない”通常回”で、5万人という観客を熱狂させたCreepy Nuts。今後5月から始まる全国ツアー、そしてライブ後に発表された10月からのアジアツアーはどのような”通常回”になるのか、楽しみでならない。
Text:高木“JET”晋一郎
Photo:Kawado、Hiroya Brian Nakano、RIO NAKAMURA
◎公演情報
【Creepy Nuts LIVE at TOKYO DOME】
2025年2月11日(火・祝) 東京・東京ドーム
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