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1960年代を象徴する存在であった、英国の歌手/ソングライター/女優として活躍したマリアンヌ・フェイスフルが死去した。享年78歳だった。
英BBCに寄せられた声明には、「歌手、ソングライター、女優のマリアンヌ・フェイスフルの訃報を深い悲しみとともにご報告いたします。マリアンヌは本日、愛する家族に見守られながらロンドンで安らかに息を引き取りました。彼女が亡くなったことは本当に残念です」と記されている。死因は明かされていない。
フェイスフルは、オーストリアの貴族と英国諜報部員の娘として、英ロンドン北部のハムステッド地区で生まれた。1960年代初頭にフォーク・シンガーとしてキャリアをスタートさせた彼女は、ザ・ローリング・ストーンズのプロデューサー、アンドリュー・ルーグ・オールダムと知り合い、バンドの仲間たちを紹介され、ミック・ジャガーとキース・リチャーズが共作した楽曲「As Tears Go By」が提供された。このシンプルなアコースティック・バラードは1964年に英国でTOP10入りを果たし、米ビルボード・ソング・チャート“Hot 100”でも最高22位を記録した。
「As Tears Go By」はフェイスフルをスターダムにのし上げ、翌年には「Come and Stay With Me」、「This Little Bird」、「Summer Nights」といったヒット曲が続いた。これらの曲はすべて、英国のTOP10と米Hot 100のTOP40にチャート入りした。彼女はまた、1966年にジャガーと不倫関係に陥ってからは特に、英国のタブロイド紙の常連となった。最終的には最初の夫ジョン・ダンバーと別れ、彼と暮らすようになった。翌年初め、彼女はリチャーズの家で麻薬が押収された現場に居合わせ、逮捕時には毛皮の敷物だけを身にまとっていたことで話題となった。
60年代後半にはヒット曲が生まれなくなったが、ポップ/ロック界では依然として存在感を示し、ザ・ビートルズのNo.2ヒット「Yellow Submarine」ではバック・ボーカルを務め、ザ・ローリング・ストーンズの『スティッキー・フィンガーズ』に収録されているドラッグ・バラード「Sister Morphine」を共同作詞作曲した。しかし、特に1970年にジャガーと別れ、最初の夫ダンバーとの間の息子ニコラスの親権を失った後、本来なら充実した時期であったはずの年月の多くを薬物依存症に費やしてしまった。デッカ・レコードから出した最後のアルバムとなった1967年の『ラヴ・イン・ア・ミスト』を最後に、1976年までアルバムをリリースしなかった。
フェイスフルは1979年にニュー・ウェイヴとディスコの影響を受けたアルバム『ブロークン・イングリッシュ』で、最初の、そして最も大きな反響を呼ぶカムバックを果たした。シンガー・ソングライターの彼女の歌声は薬物使用により、より低音で荒々しいものへと変化しており、このアルバムはそのモダンなサウンドと冷淡なエネルギーが絶賛された。だが薬物乱用により、彼女のキャリアは勢いを失い、【グラミー賞】にノミネートされたこのアルバムもその勢いは続かなかったが、1987年に発表された『ストレンジ・ウェザー』でジャズとブルースのシンガーとして生まれ変わったことで、彼女は再び注目を集めるようになった。
彼女は20世紀の残りの期間、メインストリームで散発的に存在感を示し、1990年のピンク・フロイドのベストセラー・アルバム『ザ・ウォール』を再現する同バンドのロジャー・ウォーターズによる1990年のツアーでは注目度の高いゲスト出演を果たし、1997年のメタリカのシングル「The Memory Remains」にはフィーチャー・ボーカリストとして参加した。21世紀初頭にも再び重要な復活を遂げ、2002年の『キッシン・タイム』では、オルタナティブ・ロック界の人気アーティストであるベック、ブラー、スマッシング・パンプキンズのビリー・コーガンが作曲した楽曲も収録された。その後20年間、オリジナル曲やカバー曲のアルバムをリリースし続け、2018年の『ネガティヴ・ケイパビリティー』は、彼女にとって1965年以来UKアルバム・チャートで最も上位にランクインした作品となった。2021年の『シー・ウォークス・イン・ビューティー』ではオーストラリアの作曲家ウォーレン・エリスとコラボレーションしている。
レコーディングのキャリア以外でも、フェイスフルは女優としても成功を収め、舞台、テレビ、映画に出演した。1967年のマイケル・ウィナー監督による映画『明日に賭ける』(原題:I’ll Never Forget What’s’isname)で、メジャー映画で初めて“f**k”という言葉を口にしたことで知られている。また、21世紀に入ってからは英人気シットコム『アブソリュートリー・ファビュラス』で神として、ソフィア・コッポラ監督の伝記映画『マリー・アントワネット』ではマリア・テレジア女帝として、それぞれ小さな役で出演している。2007年の『やわらかい手』(原題:Irina Palm)では、必要に迫られて風俗の世界に足を踏み入れた60歳の未亡人を演じ、【ヨーロッパ映画賞】で<主演女優賞>にノミネートされた。
フェイスフルは、60年代の“スウィンギング・ロンドン”を代表する人気者の一人としてその歌声とファッションで知られ、とりわけザ・ローリング・ストーンズをはじめとする多くのミュージシャンたちのミューズだった。彼女は1999年のVH1による“ロックンロール史上最も偉大な女性”リストで25位にランクインし、2009年には英国の【Qアワード】で<今年のアイコン>に選ばれた。彼女は2016年に米タイム・アウト・ニューヨークに対し、「私の声からその経験が伝われば嬉しいわ。50年も経てば、そうなるわよね」と語っていた。
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