<ライブレポート>GLIM SPANKY、メジャーデビュー10周年記念ライブで見せた“決意表明”

2024年9月9日 / 18:00

 GLIM SPANKYのメジャーデビュー10周年を祝したライブ、【GLIM SPANKY 10th Anniversary Tour 2024】の東京Zepp Shinjuku公演が8月30日に行われた。渋谷、大阪、愛知と回ってきてのファイナルであり、GLIM SPANKYにとっても初めての会場である。メンバーは松尾レミ(Vo.)、亀本寛貴(Gt.)のふたりに栗原大(Ba.)、中込陽大(Key.)、福田洋子(Dr.)の5人。台風10号の影響で日中は大降りの時間もあったが、夕方には弱まり会場は始まる前から盛況である。

 今年リリースされたシングル2曲がすこぶる良い。アンコールで披露された「Fighter」、「風にキスをして」のことである。前者は力強くドライブしていくベースと闘争心に火をつけるようなドラムが素晴らしく、亀本寛貴のギターもテンションの上がるフレーズを次々に繰り出していく。はっきり言って聴きどころだらけの1曲で、ライブだとその臨場感も相まって一発で心を持っていかれた。一方後者は「初夏の空気を感じながら作った」という涼やかなポップソング。背中を押すようなドラミングと澄んだ水のような音色のギターが気持ちよく、快活な気分のアンサンブルに胸がすく。やはり自身らの音楽を更新し続ける姿こそ、GLIM SPANKYの魅力だろう。本編では「褒めろよ」「怒りをくれよ」「リアル鬼ごっこ」といった代表曲にぶっ飛ばされつつも、最終的には「今」のGLIM SPANKYに食らってしまう。亀本の「まだまだ道なかば、まだまだ進んでいこうと思います」という言葉も印象的で、もっともっと新しいことに挑戦していこう、という決意表明のようなアニバーサリーライブだったと思う。

 1曲目はメジャーデビューEP『焦燥』から「焦燥」。松尾レミにスポットライトが当たり、弾き語り調で歌い出す<雨は止み 夜が来る>というフレーズに歓声が上がる。そして次第に合流する4人の演奏と、突如加速していくバンドアンサンブル。鋭いトーンのギターとエネルギッシュなボトムがめちゃくちゃカッコよく、そのテンションのまま同じく『焦燥』に収録された「Flower Song」へ(こっちは冒頭のベースリフに痺れた)。そして彼らのファーストシングル「褒めろよ」で会場がボルテージが上がっていく。福田洋子のドラムは迫力満点で、5人のスリリングな演奏を聴いていると、3曲目にしてこの日のライブが素晴らしいものになると確信した。

 静けさと緊迫感を同時に含んだようなボーカルで始まり、次第にベースとドラムと合流、そしてキーボードとギターが入ってくる「闇に目を凝らせば」を聴いていると、このバンドの深みへと誘われたような気がした。続く「レイトショーへと」はハンドマイクで歌う松尾レミの姿が印象的な、ジャズやソウルからの影響を感じる楽曲である。妖艶で腰に来るグルーヴを持ったサウンドは、この日のセットリストの中でも一味違った魅力を放っている。「いざメキシコへ」は空間を大きく使うような曲で、原曲よりも悠然とした雰囲気を感じる演奏が印象的だ。何よりスキルフルな亀本のギタープレイには目を見張るばかりである。バンドの出発点を示したようなライブの冒頭数曲に対し、こちらは彼らの音楽性の広さをチャプターするような3曲と言えるだろう。

 「ダミーロックとブルース」辺りからはどっしりとした重たいアンサンブルに酔いしれることになる。「Breaking Down Blues」のうねるようなグルーヴも強烈で、亀本はその中で誰よりも自由を謳歌するように多彩なギタープレーでオーディエンスを魅了していく。そしてフロアにさらなる火がついたのが「怒りをくれよ」だ。世界の果てへと突進していくようなエネルギー、荒々しく激しいのに、それでいてスタイリッシュな演奏は素晴らしいの一言である。

 ここからはふたりの演奏だ。サポートメンバーは一旦ステージを後にし、高校生の頃に書いたという「ロルカ」を松尾と亀本の弾き語りで聴かせる。ステージには小さな暖色のライトが灯り、繊細な情感を込めたボーカルと心の機微を映すようなギターがしっとりと会場に染み渡る。青白いライトに変わって歌った「さよなら僕の町」は、一層ノスタルジックな響きがあり、亀本が弾くギターは田舎の風景が浮かんでくるように映像的な魅力があった。そして再びバンドメンバーがイン。「夜風の街」は歌に寄り添うような抑えた演奏が素晴らしく、感傷的なギターも大いに耳を惹きつける。GLIM SPANKYの抒情的なメロディを再確認するような時間であり、音楽的には真逆だが、「怒りをくれよ」と併せてこの日のハイライトになるような演奏だったと思う。

 「サンライズジャーニー」で急に視界が開ける。眩いライトと開放的なメロディ、まるでライブの中でパッと虹がかかるようなイメージ……なんてことを思っていたら、「リアル鬼ごっこ」が凄すぎて放心。冒頭のハンズクラップで高まる熱気、会場中が揺れているのを感じた。雷みたいに強烈なギタープレイと、楽曲を華麗に加速させていくベース、そして目が覚めるようなダイナミックなドラムにどこまでも突き抜けていきそうなボーカル ……心がスカッとするようなロックンロールである。「大人になったら」のエモーショナルな演奏も白眉で、最後は雄大な景色を思わせるヘビーなサウンドを持った「Circle Of Time」で終演。総じてデビュー初期の楽曲を中心に、彼らのキャリアで培われた魅力を堪能するようなライブである。

 鋭意製作中であるベストアルバムは、本人たち曰く「新作(アルバム)のつもりで作っている」「既発曲だけでなく新曲も入る」とのことで、リリースを予定する秋には進化したGLIM SPANKYにまた出会えることになるのだろう。Tシャツに着替えてアンコールに登場した彼らは、件の「Fighter」「風にキスをして」に加え、渋みとスリルを感じるハードなロックンロール「Gypsy」を演奏してステージを後にした。「時代に関係なく響くものを作っていきたい」という言葉が頼もしく思う。

Text by 黒田隆太朗
Photo by 上飯坂一

◎公演情報
【GLIM SPANKY 10th Anniversary Tour 2024】
2024年8月30日(金)
東京・Zepp Shinjuku公演


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