<ライブレポート>宮野真守、15周年を締めくくる初のオーケストラコンサートを開催

2024年6月16日 / 18:30

 宮野真守初のオーケストラコンサート【billboard classics 宮野真守 Premium Symphonic Concert 2024~AUTHENTICA~】が6月8日の東京ガーデンシアターを皮切りに15、16日京都コンサートホールまで3公演行われた。その初日、東京公演を観た。

 声優・俳優、そしてアーティストとしてマルチな才能で活躍する宮野真守が、アーティスト活動15周年を迎え、その締めくくりの、そして“次”へ進むための強い意志を示す舞台に選んだのが、この初のフルオーケストラコンサートだ。新たな挑戦をやめないこと――宮野がこれまで貫いてきた姿勢がこのコンサートにも表れていた。

 開演前の客席は静まり返っていて、どこか緊張感が漂っている。オーケストラコンサートに初めて足を運ぶファンも多いはずだ。その緊張感と、やはり“初”に挑む宮野の緊張が相まって漂ってきているのでは、と思ってしまった。しかしそんな心配は杞憂に終わった。

 中田延亮の指揮、神奈川フィルハーモニー管弦楽団(神奈川フィル)の演奏で「Overture『Beautiful Life』」が演奏されると、豊かな響きが広がり、ブルーのスーツを着た宮野が大きな拍手に迎えられ登場。「…君へ」は透き通ったハイトーンボーカルから徐々に高揚感が生まれ、オーケストラのベルベッドのような肌触りの音と、宮野のしっとりと艶のある声の質感が最高にマッチングしてることは、誰もが感じたはずだ。

 続く、自身が作詞を手がけたバラード「REFRAIN」でも温かな声が、煌びやかな音と相まって切ない世界が広がる。ピアノの優しい調べからスターした「燦灯歌」を切々と歌い、オリジナルも壮大なオーケストラアレンジが施されたバラード「アンコール」では、〈ここは 大切な場所のままだからさ〉という歌詞がまさに今日、この時間を共に過ごすファンに向けての思いをメッセージとして伝える。歌い終わった宮野は小さくガッツポーズを作る。このコンサートを行うにあたり、宮野は改めて自分の歌と深く向き合った。そこで手にした思いを、神奈川フィルのピュアな響きと共に聴き手の心に真っすぐ伝えることができた――小さく握った拳にはそんな思いが込められていたのだろうか。

 フルート、弦、ハープで静かに始まった「Identity」では、全身を使って熱唱する宮野とオーケストラのダイナミックの音、客席の手拍子がひとつになって熱気が生まれる。いつものライヴのようにバンドもダンサーもいないが、全員が心の中で踊っている。「HOW CLOSE YOU ARE」はイントロからその世界観にグッと引き込まれる。〈どんなに離れていても 君は僕のそばにある〉という絆を描いた切ない歌詞と、親近感のあるメロディ、そして宮野の優しい歌をオーケストラの音が際立たせる。アウトロの深い弦の音が、余韻を広げてくれた。本編ラストは人気の高いバラード「MOONLIGHT」で、情感豊かな歌が心を締め付ける。間奏のたおやかな音も含め、オーケストラの繊細なサウンドが、歌の世界をより美しく彩る。

 前半はMCもなく、オーケストラが織りなす素晴らしい音と歌、ストイックに自身を曝け出した。「泣きそうになるのを我慢していた」と語った宮野。客席に大きな感動が広がり、涙を流しながら聴いている人が多かった。

 第2部は神奈川フィルの演奏でムソルグスキー「展覧会の絵~プロムナード~」からスタート。誰もが一度は聴いたことがある名曲をオーケストラが圧巻の演奏で届ける。そしてブラックのタキシードに衣装チェンジした宮野が登場し「EVER LOVE」を披露。ポジティブなメロディと歌に、オーケストラのポジティブなサウンドが眩しい光となって降り注ぐ、そんな感覚の中で聴いていた。

 そしてようやくここで宮野のMCだ。「初めてのオーケストラコンサートで緊張していた」と吐露し「自分自身が音楽と向き合って、本物=“AUTHENTICA”の音楽を届けたいと思いました」と、コンサートタイトルに込めた意味を伝えた。どこまでも優しいメロディが印象的な「トロイメライ」は、囁くような歌とハイトーンのボーカル、柔らかなアレンジがひとつになって感動が広がっていく。

 このコンサートのプロデュースを手がける盟友・Jin Nakamuraへの謝辞の述べると、「オーケストラコンサートが行われている、今日6月8日はなんの日かわかりますか?」と客席へ問いかけ。そして「皆さんでお願いします!」と「せーの」でリクエストしたと思うと、自ら食い気味に「梅雨!」とボケる。仕切り直し「今日は僕の誕生日です(笑)」と語ると大きな拍手が贈られる。いつものライブ“マモライ”の空気になってきた。「大分大人に…41歳になりました。今日は逆にこのコンサートのために作った新曲を皆さんにプレゼントします」と語ると、客席から大歓声が起こる。

 Jin Nakamuraと共に作り上げた新曲「AUTHENTICA」を披露。ドラマティックなイントロから、涙なしでは聴くことができない曲だと予感させてくれる。「今思っていることを歌詞にしました」と、ひと言ひと言を丁寧に歌い伝える胸に迫るバラードだ。「泣いてない?大丈夫?」と感動に浸る客席に話かけ「一緒にバースデーソングを歌いましょう」と、客席は総立ちになり振付を合わせ「Happy Happy Birthday」を全員で歌う。客席からステージの宮野に「おめでとう!」の言葉が降り注ぐ。ハッピーな空間を誰もが楽しんでいる。

 「The Birth」はシリアスな内容を描いたアニメの主題歌で、その世界観を色濃く映している激しいリズムのロックナンバーで、オーケストラのサウンドがスリリングさをより立たせ、宮野の歌も熱を帯びて伝わってくる。ラストナンバーは「LAST DANCE」。早いテンポのダンサブルなナンバーで、ジャズアレンジが心地良い。宮野の歌も跳ねるリズムを生んでいる。エンディングはまさにクライマックスというべき圧巻の演奏。拍手は鳴りやまず、宮野の再びの登場に客席から「マモー!」という声が響き渡る。

 アンコールの一曲目は「透明」。優しいアレンジ、演奏、柔らかな歌が穏やかな時間を作ってくれる。「いつもとは違う空気感で行われているライブ。キャリアの中でとても稀有な経験」と語り「オシャレしてきてくれている皆さんと誕生日パーティーを。サプライズのケーキがあるみたい(笑)」と、オーケストラのBGMをバックに自分でケーキを迎え入れ「えー嘘っ、嬉しい!(笑)」とはしゃぐと客席は爆笑だ。「吹き消して~」の大合唱でケーキのロウソクを吹き消す。そして知らぬ間にケーキのクリームが衣装の裾とパンツにつくというハプニングに会場は大爆笑だ。「すごく高いスーツなのに」と、慌ててステージ袖に戻る宮野。マイクを通して聞こえる舞台袖でのスタイリストとのやりとりは完全に“マモライ”のいつものノリになっている。オーケストラのメンバーも全員笑顔だ。「サプライズケーキってこういうことだったんだ(笑)。甘い歌に行きましょう」と「Kiss×Kiss」へ。投げキスの雨を客席に降らせる。オーケストラの演奏がさらに気持ちをアゲてくれ、ハッピーな気持ちにしてくれる。

 「いつもコンサートが終わると淋しい思いが込み上げてくるけど、今日はハッピーな気持ちで帰ってもらいたいから」と、今年の冬に開催される全国ライブツアーの開催を発表。大歓声と拍手の中「15周年をここで締めくくる。自分の表現と向き合った後、ここから何が生まれるか。だから次のツアーは絶対観に来たほうがいい」と、次のツアーの成功を約束した。

 さらにこのコンサートについて感じていることを素直に語ってくれた。「これまで自分が作ってきた音楽を、オーケストラの皆さんが一音一音大切に奏でてくれたことに感動しました。大勢で合わせるというのは相当の熱量、集中力が必要。そしてそうやってできあがったものを今日新たな表現として一緒に届けてくださったことが幸せでした。音楽を作るということの素晴らしさを、15周年のタイミングで改めて感じさせていただけたのは財産」と感無量の様子だった。

 そして「これからの自分が新たにどんな表現を見つけることができるのか、自分自身に期待したい。自信を持って確実に一歩一歩進んで、皆さんに楽しい時間をもっともっと届けることができるようにしたい」と決意を新たにしていた。

 「新しいキャリアのスタートにしたい」と、デビュー曲「Discovery」を披露。ずっと歌い続けている大切な曲を歌う宮野を見て、15年前にアーティストとしてのキャリアをスタートさせた時、デビュー曲をフルオーケストラをバックに歌っている姿を想像しただろうか――ふとそんなことを考えてしまった「Discovery」は、瑞々しさと叙情的な部分はさらに深くなり、さらに輝きが増していた。

 オーケストラの演奏により、改めてその楽曲のメロディの美しさが剥き出しになり、15年という時間で磨かれた表現力で、歌がより芳醇になったことを感じさせてくれるコンサートだった。そして宮野真守という稀代のエンターテイナーの“次”が楽しみになるパフォーマンスだった。

Text:田中久勝
Photo:山内洋枝・キセキミチコ

◎公演情報
【billboard classics 宮野真守 Premium Symphonic Concert 2024~AUTHENTICA~】※終演
2024年6月8日(土) OPEN17:00/START18:00 東京・東京ガーデンシアター 
2024年6月15日(土) OPEN16:00/START17:00 京都・京都コンサートホール 大ホール 
2024年6月16日(日) OPEN15:00/START16:00 京都・京都コンサートホール 大ホール

<出演>
宮野真守

<指揮>
中田延亮

<管弦楽>
【東京】神奈川フィルハーモニー管弦楽団
【京都】日本センチュリー交響楽団

<編曲監修>
山下康介

<編曲>
山下康介、萩森英明、湖東ひとみ、海沼みきな、鈴木美羽、池田光穂

◎セットリスト
<第1部>
Overture 『Beautiful Life』
M1 …君へ    
M2 REFRAIN
M3 燦灯歌      
M4 アンコール
M5 Identity      
M6 HOW CLOSE YOU ARE    
M7 MOONLIGHT

<第2部>
Interlude 『展覧会の絵』より「プロムナード」(M. ムソルグスキー作曲、M. ラヴェル編曲)       
M8 EVER LOVE
M9 トロイメライ
M10 AUTHENTICA ※新曲
M11 Happy Happy Birthday
M12 The Birth
M13 LAST DANCE
EC1 透明
EC2 Kiss×Kiss
EC3 Discovery

◎「AUTHENTICA」 セットリストプレイリスト
https://lnk.to/MM_AUTHENTICA_SETLIST

◎ライブツアーの開催が決定!
MAMORU MIYANO LIVE TOUR 2024-2025

<開催日程・会場>
2024年12月14日(土)・15日(日)
大阪:大阪国際会議場 グランキューブ大阪
2024年12月22日(日)
新潟・長岡市立劇場
2025年1月12日(日)・13日(月・祝)
宮城・仙台サンプラザホール
2025年1月18日(土)・19日(日)
愛知・一宮市民会館
2025年1月25日(土)・26日(日)
千葉・LaLa arena TOKYO BAY

<チケット料金>
9,900円(税込)

<席種>
一般指定席/着席指定席

オフィシャルファンクラブチケット先行実施中!
先行受付期間: 6月30日(日)23:59

詳細はファンクラブインフォメーションでのご案内をご確認ください。
>> 宮野真守オフィシャルファンクラブ「Laugh & Peace」
https://www.laughandpeace.com/p/login/login.php 


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