<ライブレポート>FINLANDS、メジャーデビュー作『新迷宮ep』を携えた全国ワンマン【100世紀TOUR】完走

2024年6月6日 / 21:00

 バンド結成10周年を超え、ベーシックな音楽性を持つFINLANDSのメジャーデビューは活動のフィールドを変えることではない。だが「何も変わらなくていい」と言われればむしろそれを梃子に模索を始めるのが塩入冬湖(Vo. / Gt.)という人なのだと思う。初めて自分以外の人の目線で書いた「ひみつのみらい」。まるで小説家が新たなテーマに挑んだようなスタンスである。だがそれも彼女の創作の一つの選択でしかない。ただ、FINLANDSが具体的・物理的にアウトプットする音楽、音像はどんどん解像度を上げている。

 今年3月にリリースしたメジャーデビュー作『新迷宮ep』後の全国ツアーとなった、今回の【100世紀TOUR】。7か所目にしてファイナルの渋谷WWWはソールドアウトしており、かなりの混雑状態だ。お互いに少しずつ場所を詰めながら開演を待つオーディエンスの耳に永遠に続きそうな時報のSEが届く。まるで100世紀に続くような演出だ。サポートメンバーの澤井良太(Gt.)、彩(Ba.)、鈴木駿介(Dr.)に続き、塩入も登場すると4カウントから「カルト」でスタート。楽器一つ一つの音がよりビビッドに響き、オープンな印象だ。続く「HEAT」も非常にタイトなアンサンブルで自然にハンズクラップが呼応していく。満員のオーディエンスに謝辞を述べながら、間断を置かずに塩入の“何時だって泣いてたかった”のハイトーンがフロアを刺激する「ウィークエンド」へ。序盤からキラーチューンが続き、早くも高いテンションに突入している。しかし、ファンの乗り方は人それぞれマイペースでその自由度が心地よい。エンディングからドラムのイーブンキックが鳴り始めたところで塩入がオーディエンスの健康状態に配慮し、「助け合ってこそのツアーファイナルです」と呼びかける。事前にSNSでもライブでの水分補給を呼びかけていた彼女には何か健康に関するこれまでと違う思いがある様子だ。階段状のWWWではおそらく同じ高さで視線が合うことで、心拍が上がることもあるだろう。「ラヴソング」で塩入はフロアを見据えて歌っており、聴き手としてはどんな演出より心が揺さぶられたはずだ。さらに加速していく自分の思いと対照のギャップを歌う「フライデー」のリアリティ。16ビートを無心にカッティングし、ブロンドの髪を揺らす塩入はグラマラスなロックスターのようだった。

 一息つき改めて謝辞を述べた後、『新迷宮ep』でメジャーデビューしたことに触れ、相変わらず迷わなくていいことで迷うことがアイデンティティであり、この曲はFINLANDSの神髄だと「新迷宮」の演奏に入る。キャッチーなメロディを持つ曲だが、ギターロックのざらつきはむしろ際立つ。スウィングするジャジーなドラムフレーズがシャッフルするビートにスムーズにつながり、人は教えられなくても人を愛する行動が備わっているという曲のテーマを語り、EPからの新曲「スーパーサイキック」へ繋いでいく。リリース直後より曲への理解が深まっているところにMCが添えられると、さらに歌詞が体に入ってきた。そしてエンディングもグッとジャジーな趣を残したことも新鮮だった。

 さらに東京という街について今日の出来事――アジア系の若いバイトの女の子たちの傍若無人と元気さに少し安堵したという前置きの後、昨今の新宿にインスパイアされた「東京エレキテル」を演奏していく。音源よりも少しサッドガール風のインディっぽい響きや歌唱に儚さを感じる。そこからリリカルな「like like」へつないだのもいい。彩のコーラスの切ない優しさ、エレピのような音色のギターも温かかった。そんな中、ランダムに曲について触れる塩入が仲の良かった女友達についていきなり話し始める。塩入曰く、彼女の彼氏は無断で財布からお金を抜いていくような人ではあるけれど、彼女は別れられなかったという。それでも“なんか、いい”と思える直感はないことにできない。説明のできない“なんか、いい”を背景に持つ「ナイトシンク」と題された新曲は、FINLANDSの新しい側面を感じるポップなダンスチューンだった。さらに続く大人の女性のおとぎ話めいた「ガールフレンズ」が続く流れは特に女性のリスナーの共感が深かったのではないだろうか。そして、FINLANDSの青春めいた側面がガレージロックばりに爆走する「マーチ」で、塩入はステージの前方ギリギリまで歩み出てギターをかき鳴らした。

 ここまで曲に伴うイメージや紹介をランダムに行ってきた塩入だったが、この世の中に平等なんてないと思い知らされることは多いけれど、ここだけは誰がどんな顔をしていようが気にすることはない平等な場所なのではないかと思いを話した。渾身の演奏に起きた歓声には同意の意味もこもっていたはずだ。一転、スローチューン2曲では感覚の深いところに侵入してくる塩入の表現力が際立つ。Aメロをエレキ弾き語りで始めた「good by girl」。詩的な美しさ、轟くドラムが青天の霹靂めいたイメージを広げ、大きなグルーヴで波を作った「ナイトハイ」で今のこの4人の演奏が極まった印象を受けた。緩急のメリハリという意味でも白眉だった。再び新曲のターンでは、メジャーデビューに際して何も変わらなくていいと言われたことに対し、塩入は自分ではない人物像を想定して初めて歌詞を書いたことを明かす。「ひみつのみらい」においては“35歳・男性・映像ディレクター”という想定だったとか。愛されることを当たり前に思う傲慢、そこから生まれるズレがやわらかい印象の曲だけに、よりヒリヒリと迫った。

 ギミック抜きの生身の演奏にしなやかなタフさを見せるこの日。終盤に向けて塩入は昨年のロングツアーでは体調不良を頻発し、あらためて健康であることの大切さを実感したらしい。今回のツアーでは、ライブ・アーティストとして自信を取り戻してツアーを終えられることが心底寂しいのだと話してくれた。病んだ状態で迷い悩むのではなく、健やかにカオスにダイブするからこそ人生を味わい尽くせる――人間してのダイナミズムは音楽というアウトプットにダイレクトに反映するのだと実感した。

 緩急の起伏のある展開で見せてきた流れは一気に奔流となってスパートをかける。ハチロクのリズムが歩幅の大きさを感じさせるEPからの新曲「HACK」、空間系のベースサウンドが誘う「メトロ」もその気分を増幅させた。ラストスパートの4曲はもはや何も残さない覚悟が見える熱演が展開。サビで声を振り絞る「Silver」、短いソロ回しも盛り込む「東名怪」と、ライブハウスの天井を破って広がる空を想起させる演奏が続き、フィードバックノイズが叫びを上げる「クレア」、塩入ならではの愛の定義が鋭く刺さる「バラード」という激しくソリッドなレパートリーで2時間強を締め括った。

 EPの取材時に、「守れるものはもう守れる」と話してくれた塩入の自信はこのツアーできっと確信に変わったのではないだろうか。新たに決まった秋の対バンツアーにも期待したい。

Text:石角友香
Photo:endo rika

◎公演情報
【FINLANDS ONE MAN TOUR 2024 100世紀TOUR】
2024年5月30日(木)東京・渋谷WWW


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