<ライブレポート>清水美依紗、音楽的キャリアと未来を感じさせたツアー【Cherish】

2024年5月20日 / 19:00

 5月7、8日、清水美依紗のツアー【Cherish】の東京公演が東京・恵比寿ガーデンシアターで行われた。本稿ではその2日目、8日のライブの模様をレポートする。

 ボーカリスト、ミュージカル俳優として活動し、高い歌唱力で評価を獲得。テレビの音楽番組にも積極的に出演する清水がライブツアーを開催するのは今回が初めてのこととなる。そして本ツアーはバンドセットライブ。打ち込み主体のダンスミュージックを中心にリリースしている彼女だが、今回はギター、ベース、キーボード、ドラムからなるサポートバンドとともに、そのディスコグラフィをお色直ししてみせた。

 定刻、バンドのジャムセッションを背にステージに登場した彼女は、レイドバックしたビートと関西弁を軽快に畳みかけるリリックが印象的な「Style」、コンテンポラリーなクラブチューン「Sugar」、オールドスクールなR&B「High Five」を3連投。ラウドロックテイストにリメイクされたこれらの楽曲で彼女は、ときには圧倒的なハイトーンボイスで魅せ、またときにはオーディエンスのコールレスポンスやハンドクラップを煽るなど、ライブ序盤から(恵比寿)ガーデンホールを大いに湧かせていた。

 オーディエンスの「ライブしてくれてありがとう」の声には「そんなん泣くやん」と返し、「from California」という外国のファンには「Big Love」と投げキッスを贈るサービス満点かつノンキなMCタイム。その後、“清水美依紗のライブ”ならではのスペシャルな企画が展開される。ライブ前日、5月7日に配信リリースされた自作詞・自作曲「#dont_care」でスムーズなラップを披露。トランスライクなオリジナル版のサウンドを人力で再現してみせた「Niji」でペンライトを片手に、やはりペンライトを手にしたオーディエンスとともにダンスして、文字どおりガーデンホールの客席エリアを揺らした彼女はミュージカルメドレーを披露する。

 メドレーにラインナップされたのは、彼女がいつか出演したいという『ミス・サイゴン』の「Sun And Moon」、自身が出演した『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』の「引き合う星」「北風がバイキングをつくったぞ」、ブロードウェイミュージカル『ビートルジュース』の「Home」という4つのミュージカルナンバー。スウィングやバラード、パワーポップなど、多彩なアレンジが施されたこれらの楽曲群で彼女はそれまでのポップでブライトなボーカルスタイルから一転、シリアスで清冽な歌声を響かせた。

 さらに彼女は、もうひとつの憧れのミュージカル作品であると語る『レ・ミゼラブル』の「On My Own」をピアノ1本をバックに歌い上げると、続けてディズニー映画楽曲を集めたメドレーをパフォーマンス。事前にファンから募ったリクエストをもとに『魔法にかけられて』の「So Close」、『ムーラン』の「Reflection」、『アラジン』の「Speechless」というバラード3曲を並べ、オーディエンスの万雷の拍手を集めていた。

 そして自身の敬愛するアリアナ・グランデがジェシー・J、ニッキー・ミナージと共作したR&Bナンバー「Bang Bang」をハードロックテイストに仕立て直したカバーバージョンを披露したところで、ライブは終盤戦に。親交のあるアーティストとプライベートスタジオで制作したというオーガニックなミディアムチューン「ドレス」、ドラム&ベースの小気味いい16ビートに乗せてアコースティックギターのアルペジオがループする“人力ヒップホップ”とでも呼ぶべき「Wave」という2つの未発表曲をジェントルに歌った彼女は、<君と僕はもう一人じゃない><お互い頑張ろうね 泣かないでね>と「Message」を届けてライブ本編を締めくくった。

 オーディエンスの「美依紗」コールに応えてアンコールのステージに現れた彼女は「パフォーマンスを通じてみなさんとわかり合えた気がする」とこの日のライブに対する思いを語ると「この曲を歌うたびにその場所を“Home”のように感じる」と「Home」をドロップ。その穏やかな歌声で会場を包み込むと、「最後はスーパーパワーソングで締めたいと思います!」の宣言とともに、デビュー曲にして、2011~12年のディズニー・プリンセスをテーマにしたグローバルプロジェクト「アルティメット・プリンセス・セレブレーション」のテーマソング「Starting Now~新しい私へ」を投下して、この日一番の盛り上がりを演出してみせた。

 オリジナル曲に、ミュージカルナンバー、ディズニー映画のサウンドトラック、フェイバリットアーティスト、アリアナ・グランデの1曲。セットリストだけを眺めてみると、今回のライブは清水美依紗という人物の音楽的キャリアを総花的に追いかけるだけのもののような印象も受けるかもしれない。しかし今回彼女はギター、ベース、キーボード、ドラムという、オーソドックスなバンド編成で、エレクトリックな自身の楽曲やシンフォニックなミュージカルナンバーを大胆に翻案。筆者を含め、音楽番組やYouTube、TikTokなどを通じてその存在を知ったオーディエンスは、少なからぬ驚きと新鮮な刺激をもって彼女のパフォーマンスを受け止めたはずだ。そしてこの野心的なチャレンジに臨んだ彼女はこれからどんな楽曲、ステージを見せてくれるのか? 清水美依紗の未来についてそんな期待も抱かせてくれる一夜だった。

Text by 成松哲
Photo by Motoki Shimizu(styler86)

◎公演情報
【清水美依紗 1st Solo Tour “Cherish”】
2024年5月8日(水)
東京・恵比寿ガーデンホール
<セットリスト>
01. Style
02. Sugar
03. High Five
04. #dont_care
05. Niji
06. ミュージカルメドレー
 ・Sun And Moon
 ・引き合う星
 ・北風がバイキングをつくったぞ
 ・Home
07. On My Own
08. ディズニーメドレー
 ・So Close
 ・Reflection
 ・Speechless
09. Bang Bang
10. ドレス
11. Wave
12. Message
<アンコール>
13. Home
14. Starting Now~新しい私へ


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