<ライブレポート>CRCK/LCKS、キャリア初ビルボードライブ公演ならではのアレンジで魅せた至極の一夜

2024年4月5日 / 19:00

 CRCK/LCKSが3月27日にビルボードライブ横浜で、3月29日にビルボードライブ大阪でライブを開催した。メンバー5人の多岐にわたるキャリアを考えると意外なようにも思うが、CRCK/LCKSとしてビルボードライブ公演を行うのは今回が初めて。ビルボードライブならではのアレンジが多数織り込まれ、公演ごとにセットリストも変えられた特別なショーについて、横浜公演1stステージの模様をレポートする。

 スタイリッシュな黒の衣装で統一したメンバーがステージに姿を現し、一曲目に演奏されたのは「病室でハミング」。この日の小田朋美はグランドピアノをメインに演奏し、この曲も弾き語りから始まったが、リズムを崩しながら自由なタイム感で歌声を泳がせる、シンガーとしての存在感がまず抜群。途中からバンドが加わると、全体でダイナミクスをコントロールする流石の演奏を聴かせ、後半で井上銘が歪んだギターをかき鳴らす瞬間のカタルシスはやはりたまらない。

 小西遼がEWIを用いたお馴染みのボコーダーのパフォーマンスを聴かせる「KISS」では、越智俊介のベースを軸に軽やかなグルーヴを作り上げると、ライブ序盤を大いに盛り上げたのが「IDFC」。音源ではヘビーなミクスチャーロックのような印象だが、この日の石若駿はダンサブルな跳ねるビートを叩き、小西のバリトンサックスと併せてアフロファンクな色合いを強調。着席でじっくり演奏を楽しむのもいいが、このアレンジばかりはスタンディングで存分に体を揺らしたい気持ちにもなった。

 曲中の大胆なリズムチェンジが印象的な「たとえ・ばさ」、今の季節にぴったりの「春うらら」と続く中で、特に「ビルボードライブならでは」を感じさせたのが「かりそめDiva」。ファンキーな原曲からは一転、音数を絞ったミドルバラード風のアレンジが非常に新鮮で、切々と歌い上げる小田の歌声は「かりそめ」とは真逆の堂々たるディーバ感を感じさせるものだった。アウトロでの小西によるアルトサックスのソロも名演で、ライブ中盤のハイライトを作り上げた。

 途中のMCでは小西が「この会場でライブをすることは、僕らにとって大きな決断でした」と話し始め、以前行った着席でのライブで「バンドがひたすら空回り」して、それがトラウマになっていたと話したが、「それ以来二度と着席でやるもんかと思ったんですが……今日はどうでしょうか?」という問いかけに、場内からは大きな拍手と歓声が起こる。

 さらには、小田が久々に生ピアノを演奏していることに触れ、「結成して最初にやった新宿ピットインのライブも生ピアノだったので、ちょっと原点回帰な気持ちもあるし、感慨深いものがあります」と言葉を続けた。2010年代以降の海外におけるジャズやフューチャーソウルの流れに呼応しつつ、日本人の琴線にも触れる素晴らしいポップスを作り続けてきたCRCK/LCKS。メンバーそれぞれがジャンルを越境しながら活躍の場を大きく広げ、今ではこの5人が揃うこと自体にちょっとした感慨深さを感じるほどだ。

 ライブ後半は「AfterImages」からスタートし、幾何学的なリズムを自在に乗りこなすバンドの演奏力に圧倒され、アウトロの井上による長尺のギターソロも大きな見せ場に。この日はフルアコを用いていたのもビルボードライブ仕様を感じさせた。耳に残るイントロのフレーズを中盤でも用いたのがアクセントになっていた「Wellmade」に続いては、小西が一番でメインボーカルを務める「Shower」。この曲ではメンバーが小西の方をちらりと見ながら嬉しそうに演奏する姿が印象的で、彼らが自由に、真摯に、音を楽しむ集団であることが改めて伝わってくる。

 小田が「みなさんが着席してじっくり聴いてくださるのは私たちにとって2回目くらいなので、緊張するかなと思ったんですけど、みなさんがめちゃくちゃいい感じでバイブスを届けてくださって、いい時間を過ごせておりますし、またこういう機会があったらいいなと思ってます」と感謝を伝えると、本編のラストナンバー「ながいよる」では場内がクラップに包まれて大団円。トラウマを克服したであろうCRCK/LCKSには、ぜひ今後も定期的にビルボードライブ公演をしてほしいところだ。

 アンコールの拍手に応えて、メンバーが再度ステージに登場し、最後に演奏されたのは「素敵nice」。この曲もビルボードライブらしくピアノの弾き語りを基調にリアレンジされ、小田がしっとりと歌声を聴かせると、途中から越智と石若が繊細なハーモニーを加え、なんとも親密な雰囲気に。小田はこの曲を披露する前に「来年が結成10周年」ということも語っていたが、驚きに溢れた楽曲の瑞々しさはそのままに、音を交わし合うことで長い時間をかけて5人が家族になったような、そんな現在のバンドが持つ空気感に心が温かくなるライブでもあった。

 なお、メンバーの石若駿は4、5月にビルボードライブ東京・大阪で開催される【君島大空 外は春の形 vol.3】公演にも出演する。今回で3回目の開催となる、君島と石若による二人編成でのシリーズ公演もぜひチェックしてみてほしい。

Text:金子厚武
Photo:垂水佳菜

◎公演情報
【CRCK/LCKS】
2024年3月27日(水)
神奈川・ビルボードライブ横浜
2024年3月29日(金)
大阪・ビルボードライブ大阪

【君島大空
外は春の形 vol.3】
2024年4月30日(火)
東京・ビルボードライブ東京
2024年5月2日(木)
大阪・ビルボードライブ大阪


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