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現在の日本語ロックの先駆けとなった伝説のバンド・はっぴいえんどの松本隆、細野晴臣、鈴木茂のインタビューが、3月26日(現地時間)にイギリスの有力新聞紙The Guardianで掲載された。
掲載された記事の和訳を、以下の通り掲載する。
松本隆と細野晴臣は1969年にロックバンドを結成する際、英語詞で歌うべきか、日本語詞で歌うべきかという選択を迫られた。議論の末、2人は母国語を選び、自国の音楽界の流れを大きく変えた。
ギタリストの鈴木茂とボーカリスト兼ギタリストの大瀧詠一もメンバーとして名を連ねるグループ、はっぴいえんどは、欧米風のフォーク・ロックと日本語のボーカルを融合させ、彼らの音楽はインターネット上で盛り上がっている80年代のシティポップファンクから近年のJ-POPまで、あらゆるものに影響を与えた。「私の母国語は日本語です。別の言語にすると翻訳フィルターがかかってしまう。」東京の街を見下ろす会議室から、74歳の松本はこう説明する。「本来の意味が変わってしまう。そうなると、それはもう私の本能でも、私の言葉でもなくなってしまう。」
1970年から1973年にかけて、はっぴいえんどは3枚のアルバムをリリースし、昨年その3枚のアルバムのバイナルが再発された。しかし、このカルテットが与えた影響は何十年も続いている。彼らの作品は当時から国内で高く評価され、1971年の『風街ろまん』は傑作と称賛された。今でも日本国内のベスト・アルバムの一つと言われている。「当時はクリームやジミ・ヘンドリックスなどがミュージシャンの憧れであり、皆それらをコピーして、(演奏力を)競ってました。」シンセポップ・グループ、イエロー・マジック・オーケストラでさらに有名になった細野は言う。「私はそのようなシーンの中で育ったのです。はっぴいえんどでは自分たちの言葉を使ってオリジナルなものを作ろうと決めました。」
はっぴいえんどは、松本と細野が活動していたバンド、エイプリル・フールから生まれた。ビートルズやモンキーズのサウンドを模倣するグループが多かった時代の中で、彼らのサイケ・ロック・サウンドは際立っていたが、エイプリル・フールは、松本が日本語詞を書いた2部構成の曲を除いては、まだ英語の歌詞で歌っていた。松本が作詞した「母なる大地」は彼の故郷である東京が急速に変わっていく様子と、それと共に失われていったものについて歌った曲である。
「1964年の東京オリンピックで、(東京は)大きく変わりました。」松本は言う。「東京を流れる川は埋め立てられ、高速道路が建設された。以前は路面電車が走っていましたが取り壊されました。工事によって全て変わってしまった。空が遮られ、あまり見えなくなってしまった。」
エイプリル・フールは、ボーカルの小坂忠がミュージカル『HAIR(ヘアー)』の日本版の出演が決まった後に解散した。松本と細野はバッファロー・スプリングフィールド、グレイトフル・デッド、モビー・グレープといった西海岸のロックに興味を持ち始め、それらにインスパイアされた新しいグループを作りたいと考えていたという。細野は、ビートルズやアソシエーションに通じるメロディックなエッジを持つボーカリスト兼ギタリストの大瀧をスカウトした。「ある日、大瀧が細野に電話してきて、『バッファロー・スプリングフィールドの良さがやっとわかった』と言ったんだ。それが、全員の考え考えが一致した瞬間だった。」と松本は笑う。
最後にギタリストの鈴木が加わりグループが完成した。「大人に押さえつけられる事なく自分達の考えていることを素直で情熱的に表現していたと思います。一言で言えば純粋だった。」と、1970年代初期の東京のロック・シーンにはっぴいえんどがどのように溶けこんでいたかを尋ねられた鈴木は言う。
セルフタイトルのデビューアルバムは、ハード・エッジなサウンドと日本語詞の組み合わせで高く評価されが、英語で歌わなければロックは本物でないとする「日本語ロック論争」を激化させた。そこではっぴいえんどは、日本語詞のロックが成功するということをさらに証明するため、スタジオに戻ってセカンドアルバムに取り掛かった。「自分たちの強みを微調整し、どういう方向に進みたいかを考え、それを掘り下げていった。」と松本は言う。
こうして完成したアルバム『風街ろまん』は、より自信に満ちたはっぴいえんどを象徴する作品となった。松本の詞は、彼がとても懐かしんでいたオリンピック前の東京に焦点を当て、よりディテールに富んだものになった。しかし、最も強く残るのは、緊密なハーモニーを奏でるバンドという印象である。ソフィア・コッポラ監督の『ロスト・イン・トランスレーション』でフィーチャーされ、バンドがより多くの海外のオーディエンスに認知されるきっかけとなった、名曲『風をあつめて』の制作について松本は語る 「まるでキャッチボールをしているようだった。詞を変えて、今度はメロディーを変えて。ブラッシュアップし続けました。」
はっぴいえんどが商業的成功を収めたのはずっと後のことだが、『風街ろまん』は批評家や芸術界に大きな影響を与え、「日本語ロック論争」は静まった。松本は笑いながらアルバムについて語る「それはもう素晴らしかった…宇宙のようにすごくて。全てやり切った感じがして。それが終わって別の事をやりたい、ソロをやりたいとなった。みんなで集まって話すこともなくなって、それが心残りです。」さらにジョークのように付け加えた。 「多分、細野さんは新しいバンドを作るのが好きなんだと思う。ある時、新幹線で彼が新しいバンドの名前を書いていた時はショックだった。」
はっぴいえんどはロサンゼルスのサンセット・サウンド・スタジオで、デビューアルバムと同じセルフタイトルのアルバム『HAPPY END』をレコーディングするが、松本によれば、全員が別のことに集中していたのは明らかだったという。「みんな次のキャリアステップのことを考えていて、それはアルバムにもはっきりと表れている。」と彼は言う。「それは悪いことではなく、自然なことだった。」
その後、鈴木は豊かなソロ・キャリアを歩み、大瀧は2013年に亡くなるまで作品を発表し続け、愛されるポップアーティスト・プロデューサーとなった。松本は日本で最も有名な作詞家の一人となり、現在も大物アーティストと仕事をしている。細野は何でもできる多才な人だ。2024年後半にマック・デマルコなどのアーティストが細野の作品をカバーしたコンピレーションが発売される。2023年にソロデビュー50周年を迎え、76歳になった今も活動を続けており、近いうちに新しいソロ・アルバムに取り掛かりたいと語っている。
一方、はっぴいえんどが残したレガシーは、21世紀になってさらに際立っているように感じる。「以前は、すべての新しい音楽はまずアメリカを経由しなければならなかった。」松本は言う。「でも今は、インターネットやSpotifyのおかげで、いろんな国の楽しくて面白い音楽を見つけることができる。」現代の音楽はグローバルであり、もはや特定の場所や言語に支配されてはいない。はっぴいえんどは日本語詞について論じたが、それは自分に一番合う方法で表現することの重要性を説いていたのだ。「自分が最も表現しやすいと思う言語を使うべきだと思う。それは日本だけでなく、世界中のどの国でも同じです。」と松本は言う。「フィルターなんてない。」
なお、現在、はっぴいえんどのアルバム「はっぴいえんど」「風街ろまん」「HAPPYEND」は世界配信されており、「はっぴいえんど」「風街ろまん」のアナログ盤は北米にて販売中。英語ではなく日本語で作られたはっぴいえんどの音楽は、リリースから50年経った今でもZ世代も含めた世界中のリスナーに聴き継がれている。
◎リリース情報
CD『はっぴいえんど』2023 Remaster
2023/11/1 RELEASE
<初回生産限定盤>MHCL-30914 3,520円(tax in.)
<通常盤>MHCL-30915 2,200円(tax in.)
LP『はっぴいえんど』2023 Cutting
2023/11/3 RELEASE
<完全生産限定盤>MHJL-292 4,070円(tax in.)
CD『風街ろまん』2023 Remaster
2023/11/1 RELEASE
<初回生産限定盤>MHCL-30916 3,520円(tax in.)
<通常盤>MHCL-30917 2,200円(tax in.)
LP『風街ろまん』2023 Cutting
2023/11/3 RELEASE
<完全生産限定盤>MHJL-293 4,070円(tax in.)
CD『HAPPY END』2023 Remaster
2023/11/1 RELEASE
<初回生産限定盤>MHCL-30918 3,520円(tax in.)
<通常盤>KICS-4113 2,200円(tax in.)
LP『HAPPY END』
2023/11/3 RELEASE
<50th数量限定プレス盤(重量盤)>KIJS-90039 4,070円(tax in.)
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