<完全版ライブレポート>Superflyが感謝と癒しを届けた【Heat Wave】ツアーファイナル

2024年3月28日 / 19:00

 Superflyが3月21日に埼玉・さいたまスーパーアリーナで【Superfly Arena Tour 2024 “Heat Wave”】の最終公演を行った。

 2022年11月23日に東京・有明アリーナで開催された【Superfly 15th Anniversary Live “Get Back!!”】以来となる公演であり、ツアーとしては2019年の【Superfly Arena Tour 2019 “0”】以来、約4年半ぶり。当初予定されていた2023年6月からの全国ツアーが越智志帆の喉の不調によって中止となったのは残念だったが、療養期間を経て喉もすっかり回復。苦難を経ての開催だったこともあってか、最終公演のアンコールでは志帆が今の思いを観客に伝えながら涙する場面も。ファンにとって、バンドにとって、誰よりも志帆にとって、長く記憶に残るツアーになったに違いない。

 今回のツアーはメインステージに加えてアリーナの真ん中にサブステージが設置され、志帆とバンドメンバーたちは花道を通って度々両ステージを行き来。どの客席からもなるべく距離を感じさせないように……という意図は、前回、前々回の公演から貫かれているものだ。メインステージ向かって左の端からステージ上部へは大きな木(を模したもの)がくねりながら伸びていて、自然の生命力が表現されているかのよう。前回ツアーでも15周年記念ライブでも、空や木々や水や陽光が装飾と映像演出の要になっていたが、今回もまたいくつかの場面で火、木、雲、太陽など自然を表わす演出がなされていた。大阪公演のMCでは「昨日はお休みだったので、ホテルの近くの公園に行き、木と木の間に立ってパワーをチャージしました」と話していたが、やはり志帆は自然を味方につけることで生き生きとしていられるのだろう。

 開演時間となり、いつものようにカーティス・メイフィールドの「Superfly」が聞こえてきて客電が落ちる。するとサブステージで火の手が上がって、炎と煙がメインステージに向かい花道を移動。〈Burn burn〉と「Heat Wave」のイントロ部分が反復されるなか、映されたHeat Waveの文字に火が移ってメラメラと燃えだした。そのまま最新アルバムの表題曲「Heat Wave」からショーが始まるのかと思いきや、オープナーは〈カモンカモン/魂ぶちあげようぜ〉と勢いよく煽る「ダイナマイト」だった。メインステージ中央に大きく手を広げた志帆。向かって左のコーラス隊5人と右のホーン隊3人が声と音と腕の振り上げとで煽るなか、のっけから彼女のパワー放出が全開となる。ジワジワと温度をあげていくのではなく、開幕から一瞬で着火して〈くらえダイナマイト〉とぶちかまされたら、そりゃあ冷静に観ることなんかできるわけがない。しかも間髪入れず、盛り上げに欠かせない「Alright!!」へと続くのだ。この曲で志帆は両手を広げながら早くも花道を駆けだした。

 歌い終わると、「こんばんは~、Superflyです!」と笑顔で挨拶。そして蛍のように無数の粒子が光る背景を前にして「Love & Peace Again!」を歌い、それはこのライブが壊したくない大切な日常と繋がってあることを表現しているようでもあった。

 客席からは「志帆ちゃーん」という声がいくつもかかり、「今日はたくさん名前を呼んでくれるんですね。呼んで呼んで」と志帆。「ほんとは去年の夏からツアーを回る予定だったんですけど、私が体調を崩してしまって延期になり、2月・3月と回らせていただきました。みなさんがスケジュールを合わせて今日のこの日を選んでくれたことがとっても嬉しくて胸がいっぱいです。」そう話したあと、ライブで歌うのはかなり久しぶりとなる初期のロックナンバー「How Do I Survive?」を。初期からのファンには嬉しい選曲だったはずだ。

 続いてはコロナ禍により人々が引き離されることとなった当時、「一緒にいたい」と切実な思いを綴って歌った「Together」。しばらく部屋にこもっておとなしくしていた人々が、やがて外へ出て通りを歩き、誰かと会ったりすれ違ったりする……そのように“戻った日常”が映像で表現される。曲の後半、志帆は「みんなの声を聞かせて!」と言って、コーラス部分を観客にも求めた。また鶴谷崇のピアノから始まった「Power Of Hug」ではストリングスも美しく響き、家族の心の通い合いとハグの大切さが表されたアニメーション映像をバックに志帆が優しく母性的な歌唱表現をしていたのも印象的だった。

 やや長めの暗転のあと、朱色の薄いドレスを纏った志帆、ギターの名越由貴夫と八橋義幸が、丸太の切り株の形をした椅子に座った。3人の前には焚き火が。『Heat Wave』は情熱と癒しをテーマに作った、故にアルバムのジャケットは焚き火を写したものになったと説明し、「ここからはこの焚き火を見ながら、癒されながら進めたいと思います」と志帆。「私は失恋曲を書くのが大好きなんです。そういう曲を何曲かやりたいと思います」と続け、名越がアコギを、八橋がマンドリンを弾いて、アコースティックでの演奏が始まった。屈指の名曲とファンの間で人気が高い「春のまぼろし」だ。途中でホーンも加わり、この曲の持つ切なさと丁寧な歌唱を際立たせる。

 続いてはストリングスがフィーチャーされて始まったピアノバラードの「Last Love Song」。志帆はゆっくりサブステージへと歩きはじめ、そのとき白く大きな布がふわっと上空に。歌の終わりの〈二人だけのLast Love Song〉のところで、その布がふっと落ちて儚さを伝えた。因みに「春のまぼろし」は2ndアルバム、「Last Love Song」は1stアルバムに収録の隠れた名曲だが、どちらも音源にはなかった楽器を用いたアレンジで今現在のSuperflyの歌になっていた。こうして歌は生き続けるのだ。

 続いてサブステージの先端に立ち、昨年発表の失恋曲「Farewell」を披露。ピアノとコーラスと志帆の歌だけで進み、中盤からコーラス隊のエモーショナルな合唱でゴスペル的な盛り上がりを見せる。〈舞い上がれ~〉からの転調のあと、悲しい気持ちを飛び立たせるように歌う際のハイトーンが実に力強くて、胸が熱くなった。「春のまぼろし」からのこの3曲は今回のショーのハイライトとも言えるもので、より一層深みを増した志帆の歌唱表現力をそこにいた全員が改めて実感したことだろう。

 「コーラスのみんなにも大きな拍手を!」「みんなの心は癒されました? じゃあ次はハッピーな曲をやりたいと思います。」そう言って小走りでメインステージへと戻り、そこで演奏されたのは6th Album『0』収録のパワフルな「ハッピーデイ」だ。この曲がライブで披露されるのは初めてだが、太くて厚みあるバンド演奏とMARUの迫力のバッキング・ボーカル、それにピーター・マックス(ビートルズのアニメ映画『イエロー・サブマリン』に影響を与えたとされるサイケデリック・ポップアートの巨匠)を想起させる色彩派手目のアニメーションも手伝って強烈な印象を残した。

 ここで志帆が一旦ステージを去り、このツアーのために用意されたテーマ的な曲がバンドによって演奏される。ほぼインストゥルメンタルだが、〈Ride The Heat Wave/Catch the Heat Wave〉とコーラス隊が歌うこの曲はスケール感があってドラマチック。バンドメンバーとコーラスのメンバーが順にソロをとり、志帆を支える彼らの実力と個性を伝えてもいた。

 そして車のエンジン音が聞こえだすと、カラフルな衣装に着替えた志帆が現れてハンドルをまわすように手を動かしながら中央へ。軽快なポップロックナンバー「Mr. Cooper」だ。続いては観客みんながタオルを出してクルクル振り回すお楽しみの時間。そう、懐かしいその曲は、1stアルバム収録の「嘘とロマンス」。志帆はコーラス隊らと一緒にタオルを回し、揃いの振り付けで楽しそうにダンス。一方、ホーン隊とストリングス隊の7人が花道を歩きながら観客を煽り、先頭を行くトランペットの川上鉄平はセグウェイを器用に乗りこなして観客みんなの視線を集めていた。

 「アリ~ナ~~!」「スタンド~~!」「さいたま~~!」とひとしきりコール&レスポンスを楽しんだあと、志帆は合唱をしていた中学時代を振り返りつつ、どんな人でも歌を歌えば心がすっぴんになる、みんなが心をすっぴんにして自分らしくいられる時間を作れたら……そんな思いで歌っていると話してから、「一緒に歌いましょう!」と「Beautiful」を歌唱。曲の終盤では客席にマイクを向けてシンガロングを促した。

 圧巻だったのは、次に歌われた「Voice」だ。志帆とコーラスの5人が横一列に並び、ここでもゴスペルのように歌声を重ね合わせた。この「Voice」が象徴的だが、今回のツアーはバッキング・ボーカルを担当するメンバーたち……稲泉りん、竹本健一、MARU(大阪と埼玉)、Luz、若島史佳、塚本直(名古屋)の力が相当大きく作用しており、だからこれまでのツアーにも増して歌の力、声の力というものを強く実感することとなった。

 続いては「さあ、みんなの心のなかのモンスターを暴れさせましょ~。いくぜ!」と言ってお馴染みの「タマシイレボリューション」。八橋義幸と名越由貴夫がギターを弾きながらサブステージへと歩き、メインステージではマシータが渾身のドラムソロを。そしてステージ前方でいくつも火柱があがり、ツアータイトルにもなった「Heat Wave」が演奏された。この曲は音源よりもライブで演奏されることでロックンロールとしての骨組みが露になる。パワフルなロックだとは音源から感じていたが、こんなにもロールしている曲だというのは今回のライブで初めてはっきりわかったことだ。曲の終盤では八橋と名越のハードロック的なギターが絡み、それもまた聴きどころだった。

 まさしく熱波のような曲で会場の温度を限界まで上昇させたあとは、「新曲歌います」と言ってライブ初披露となる「Ashes」をクールに。伸びやかなハイトーンが評価されることの多いSuperflyだが、ロウの響かせ方、その説得力とかっこよさも唯一無二のものであることを、今回この曲をナマで聴いて改めてみんなが気づいたはずだ。

 「4年間お待たせしてしまったので、みんなに喜んでもらいたくて、ここでサプライズを」と、本編最後の2曲は撮影OKであることを勿体ぶりながら志帆が伝えると、観客たちも「おおおおっ」と反応。そしてみんながスマホを構えるなか「愛をこめて花束を」と「春はグラデーション」の2曲を。前者はその曲のCDジャケットのオブジェを担当したフラワーアーティストmichikoのアレンジによる桜をあしらった花束を持って花道を歩きながら、後者は心が弾む曲調と同じように自身も弾んだりクルクル回ったり軽やかにステップしたりしながら笑顔で嬉しそうに歌ったのだった。

 そうして本編が終了し、大きな拍手に応えてのアンコールは、まず「Presence」。青く澄んだ空に届かんばかりに伸びていくファルセットは未来を照らす光のよう。花道の上に白い布がふんわりと雲のように動き、スクリーンに映された雲の隙間からは太陽が。〈想像を超えるような未来を創れますように〉〈愛せますように〉。この歌の最後の一節だが、まさにそれが志帆の願いであり、ここにいるみんなと共有したい思いなのだと、そう思った。

 「ああ、ファイナル感を急に感じる。なんだか今日はあっという間で。風に乗っているような、そういう気持ちになる日だなぁ。すごく心地のいい風をみんなが送ってくれている感じがします。最高です。ありがとう」「5本(5公演)ってあっという間ですね。まだまだツアーをやりたいなって、今まで以上に思っています。まだ何も決まってないんですけど、やりたいなと思っている気持ちだけは伝えたい」、そして「私はみんなの心に感動とか嬉しい楽しいという気持ちを感じてもらえる楽曲をたくさん作って、みんなの“元気風船”の空気をふわ~っと入れられる曲をこれからもお届けしたいと思うんです」と続ける志帆。「みんなから『活動頑張ってね』と想像以上に応援の言葉をいただいて、それがすごく力になったんだなと思って……」、そう話しているうちに込み上げるものがあったようで、ここで涙を。「みなさん、いつもありがとう」「よし、最後の1曲をお届けしたいと思います。みんな一緒に歌いましょうよ!」と明るく言って切り替え、最後のその曲が始まった。昨年ディズニー&ピクサーの映画『マイ・エレメント』の日本版エンドソングとなった「やさしい気持ちで」だ。映画曲と同じ爽やかで春めいた新アレンジで演奏されるそれを聴いているとき、この優しい気持ちを大切にして明日からまた生きていこうと、みんながそんなふうに思ったに違いない。

 何度も「一緒に歌って」とみんなに言って声を合わせ、何度もこの上なく幸福そうな笑顔を見せ、信頼のおけるバンドメンバー、スタッフ、そして観客たちと一緒にこうして気持ちよくヒートウェイブを乗りこなしたSuperfly。次はどんな波がきて、このツアーで得た実感と手応えをどう反映させ、どう乗りこなすのか。早くも楽しみになってきた。

Text by 内本順一
Photos by 森好弘、渡邉一生

◎セットリスト
【Superfly Arena Tour 2024 “Heat Wave”】
1. ダイナマイト
2. Alright!!
3. Love & Peace Again!
4. How Do I Survive?
5. Together
6. Power Of Hug
7. 春のまぼろし
8. Last Love Song
9. Farewell
10. ハッピーデイ
11. Mr. Cooper
12. 嘘とロマンス
13. Beautiful
14. Voice
15. タマシイレボリューション
16. Heat Wave
17. Ashes
18. 愛をこめて花束を
19. 春はグラデーション
<ENCORE>
1. Presence
2. やさしい気持ちで


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