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2023年のインディーズデビュー10周年、2024年のメジャーデビュー10周年という“Wアニバーサリー”を祝う全国ツアー【DREAMS TOUR 2023-2024】を開催していたgo!go!vanillas。そのツアーファイナルとして、千葉・幕張メッセ国際展示場9~11ホールにて2DAYS公演が行われた。1日目は【MAKE MY DREAM】というタイトルで、キャリア最大規模でのワンマンライブを実現。2日目【MAKE YOUR DREAM】では、[Alexandros]、sumika、04 Limited Sazabys、My Hair is Bad、マカロニえんぴつ、UNISON SQUARE GARDENとともにロックバンドの祭典を繰り広げた。この記事では1日目、3月9日に開催されたワンマンライブ【MAKE MY DREAM】をレポートする。
メンバーの牧達弥(Vo. / Gt.)、柳沢進太郎(Gt.)、長谷川プリティ敬祐(Ba.)、ジェットセイヤ(Dr.)にサポートミュージシャンの井上惇志(Key.)、山田丈造(Tp.)、大渕愛子(Fiddle)という7人編成で臨んだこの日。10年を振り返るオープニングVTRのあとに始まったのは、ライブSEとして使用しているインスト曲「RUN RUN RUN」だ。生演奏での披露は、2022年の日本武道館公演以来。特別な、かつバニラズの根源にあるルーツ・ミュージックへの愛を打ち出したオープニングとなった。
気合十分の牧が「来たぜ、幕張メッセ! やるぞー!」と告げると、セイヤの力強いキックがセットリストの1曲目へ導く。メジャー1stアルバム『Magic Number』のリード曲「マジック」だ。柳沢が前任ギタリストから引き継いだ、10年モノのギターリフ、そして高揚感溢れるビートに誘われて、観客は「騒げー!」と言われるより先にジャンプしまくっている。ロックンロールの魔法を信じる気持ちを歌った歌詞に、巨大スクリーンに映る4人の笑顔。「レッツゴー、ロックンロール!」と言いながら全員で楽器を鳴らしまくるシーンを経て、プリティのカウントを合図にみんなで一緒に手拍子する間奏。そしてコーラスを順に重ねるエンディング。メジャーデビュー曲らしく、バンドのいいところが詰まった曲だ。
柳沢が赤のギブソンで奏でるおなじみのリフにフィドルが続き、火花の特効まで上がった「ヒンキーディンキーパーティークルー」。牧と柳沢のツインボーカル曲「クライベイビー」と、アニバーサリー仕様にショーアップされた楽曲が次々と披露された。思えば、go!go!vanillasは浮かんだアイデアをすぐにバンドに反映させる好奇心旺盛なバンドで、音源リリース直後のライブなのに曲のアレンジが全く違うものになっていることも珍しくなかった。リアルタイムでのバンドのモードはライブ現場でリスナーに共有され、それぞれの曲は変化し続けるとともに、ファン一人ひとりの心のアンセムと化していった。その証として「チェンジユアワールド」で起こった大きなシンガロング。バンドの精神性をまさに表す「サイシンサイコウ」の名演ぶり。テンポが速くなるDメロ、強烈なレーザー光線をバックに、花道の先端にやってきた牧&柳沢が背中合わせでバトルするように歌い鳴らすシーンを観てしまったら、「どうよ?」という問いかけにも歓声で応えるしかない。牧が途中まで歌い、その先をファンに任せた「青いの。」では、歌詞もばっちり覚えている観客が完璧にレスポンスし、「さすがバニラズのファン! すげーぜ!」と喜んだ。「go!go!vanillasももうメジャー10年! あっという間やな。でも間違いなく、今がいちばん楽しいぜ!」という発言も気持ちがいい。
最新曲「SHAKE」を披露する際、観客にスマホのライトをつけるようにお願いして美しい景色を作ったり、“動く歩道”のような床を演出に取り入れて新しい魅せ方にトライしたり(「ナイトピクニック」)、その床に寝そべり運ばれながら楽器を弾いたり(「デッドマンズチェイス」)、メインステージとのタイムラグに苦戦しながらも「どうしても俺はここに来たかったんだよ!」とアリーナ後方のサブステージから歌ったり(「LIFE IS BEAUTIFUL」)、客席を二手に分けてハモらせたり(「おはようカルチャー」)と、ライブ中に自分たちの“DREAM”をひとつずつ叶えていったgo!go!vanillas。音楽を好きな同志である人々がメンバー/サポートミュージシャン/オーディエンスという垣根を越えて(セイヤの言葉を借りれば)ファミリーになることで、幕張メッセは巨大な遊び場に変わった。「平成ペイン」も「エマ」も「デッドマンズチェイス」もひたすらに楽しい。オールスター的なセットリストの中で、柳沢作「ストレンジャー」のオルタナな存在感はいいスパイスになっている。
ライブ中のメンバーの目の輝きが10年前と変わらないのが最高だ。とはいえ、10年間ずっと順風満帆だったわけではない。むしろ、ここぞという時ほど試練に見舞われた。しかしその都度、ロックバンドとしての夢を道しるべにしながら、4人の団結と音楽への愛で乗り越えてきた。楽な道よりも、音楽に対してピュアであるための道を選んできたバンドだから、10年の道のりを辿ればおそらく一直線にはならない。しかし回り道の分だけバンドはタフになり、その結果、今幕張に広がっているユニークかつチャーミングな光景が生まれたのだと――確かに“ドタバタ劇”だったし“鮮やかな日々”が待っていたと、熱量マックスの「カウンターアクション」を浴びながら思う。曲中にはプリティの「限界までいこうぜ!」との叫びが、分厚いバンドサウンドを突き破って届いてきた。視線を移すと、背中合わせでツインギターをキメる牧&柳沢。セイヤはマイクを咥えて叫びながら、スペアのシンバルをドラムに打ちつけて鳴らしている。
4人の血が通ったgo!go!vanillasの音楽は、人生賛歌として高らかに響き、その晴れやかなサウンドがリスナー一人ひとりの人生を祝福している。ライブ終盤のMCでは、牧が「ライブハウスまわって、いろんな街に行って、そこに住むバニラズを愛してくれてる人たちに会って、おいしいもの食べてさ。それを20公演やった先に、こんな贅沢なライブが待ってると思わなかった。本当に夢みたい! ありがとう!」とツアーファイナルを迎えた今の実感を語った。さらに「なんかよかったな! 止まらずに、苦しい中でも楽しさを見つけて、音楽やれててよかった」と10年を振り返る。そして、「その人生の延長線上で、こうやって会えてるんでしょ? 俺たちがどこかで止まる選択をしてたら会えなかった人もきっといる。ここにいる一人ひとりが、君が、今選択した瞬間は絶対に間違ってないと俺は思うよ。悩んでも、疑われても、俺たちがいるから。また遊びに来いよ!」と観客へのメッセージに変えた。
「まだ10年。まだ何も残してねえぜ!」と「アメイジングレース」で未来へ橋を架けて、本編は終了。3曲を披露したアンコールでラストに選ばれたのは、ライブのエンディングに演奏されることが多い「ギフト」。演奏前に牧がMCをするのが定番の流れだが、この日は即興で歌を紡いだ。そこで歌われていたのは、手っ取り早く“答え”を求めるのではなく、旅の“過程”を一緒に楽しめる仲間を見つけられた喜び。また、「♪そうだ、武道館2DAYSもやってない。まだまだたくさんやりたいことあるな~」と、2022年に交わした約束への言及もあった。そうだ、go!go!vanillasと私たちの夢はまだまだ終わらない。「これまでどうもありがとう! そして、これからもどうぞよろしく! まだまだ夢見ていこうぜ!」という言葉が、虹色の照明と舞う紙吹雪に彩られながら響いた。
Text by 蜂須賀ちなみ
Photo by 西槇太一、renzo
◎公演情報
【DREAMS TOUR 2023-2024 FINAL MAKE MY DREAM】
2024年3月9日(土) 千葉・幕張メッセ 国際展示場9~11ホール
▼セットリスト
OP. RUN RUN RUN
01. マジック
02. ヒンキーディンキーパーティークルー
03. クライベイビー
04. チェンジユアワールド
05. サイシンサイコウ
06. 青いの。
07. SHAKE
08. ナイトピクニック
09. コンビニエンスラブ
10. LIFE IS BEAUTIFUL
11. ツインズ
12. 平成ペイン
13. エマ
14. デッドマンズチェイス
15. ストレンジャー
16. カウンターアクション
17. お子さまプレート
18. アメイジングレース
En1. セルバ
En2. おはようカルチャー
En3. ギフト
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