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3月3日、大阪発の3ピースバンド・ammo(アモ)が東京・Zepp DiverCityにてワンマンライブ【reALITY】を開催した。今年1月にCD限定の『re:想-EP』と配信限定の『re:奏-EP』という2作のEPでメジャーデビュー果たした彼らにとって、メジャーデビュー後初のワンマンとなったこの夜。チケットはソールドアウトとなった。
開演時間の18時30分より30分ほど前に会場に入ると、BGMにWEEZERの曲が流れていた。BGMは次もWEEZERの別の曲で、その次もWEEZER。で、また次もWEEZER……。特定のアルバムが丸々流れているというわけではなく、いろんな時代のWEEZERの楽曲が流れている。結局、私が聴いた限りでは開演前の会場BGMはずっとWEEZERだった。メジャーデビュー前にサブスク配信はなく、CDでのリリースにこだわり続けたというエピソードからも垣間見えるammoというバンドの頑固な性格は、開演前のBGMのような細部にもよく表れている。しかし、WEEZERの最高な楽曲たちも、サウンドチェックで楽器が鳴らされると、リアルな生音に掻き消される。
開演時間を少し過ぎて客電が落ち、紫色の照明によってステージ背景に掲げられたバンドロゴが照らし出されると、人で溢れかえったフロアから熱気と興奮を纏った歓声が上がった。前方の観客たちは「もっと前へ、もっと前へ」と一斉にステージ付近に詰め寄り、ステージ前は人でぎゅうぎゅうになる。ライブハウスという「密度」が生まれる。そして登場SEが流れ、岡本優星(Vo./Gt.)、川原創馬(Ba./Cho.)、北出大洋(Dr.)の3人がステージに現れる。ドラムセットの前に3人が集まり、彼らにしかわからない何かを確かめ合うと、演奏が始まった。1曲目は「やまない愛はある」。
ライブは序盤から爆発的な盛り上がりを見せた。2曲目、アンセミックなパンクソング「未開封」の時点で獰猛な熱狂に巻き込まれていく空間。この時点でフロア前方ではダイブが起こりまくっているのが2階席にいた私からはよく見える。2018年に結成され、最初のシングルを2020年にリリースしたammoの活動の大半は現時点ではコロナ禍と重なっているわけだが、それでも彼らはライブハウスでしか生み出すことのできない関係性をリスナーたちとしっかりと結んできたのだと、その光景を見ていると感じる。「未開封」の演奏中、ボーカルの岡本は「始まっちまったなぁ!」と叫んだ。ライブも、生きることも、この一瞬も、始まってしまったら取り返しはつかない。覚悟も悲しみも喜びも混ざり合った、混濁しながらも透明な叫びが聞こえる。
バンドは激しいパンクロックだけではなく、様々な音楽性で観る者を魅了した。「おもしろい方へ」は夕方のアニメ主題歌になりそうなくらいの、卑屈な部分が一切ない真っ直ぐさが突き刺さった。弾き語りからなだれ込むように始まった「紫春」では叙情性溢れるメロディを響かせ、「ジュブナイル」ではダーティかつグルーヴィに会場を揺らし、冒頭で印象的なベースラインが響く「寝た振りの君へ」は心地いい抑揚と3ピースのバンド・アンサンブルがシンプルでありながら豊潤な世界を描いた。「(emoji)」ではミラーボールが回る華やかでエモーショナルな照明演出もあった。
「大阪、Orange Owl Records所属、ammoです」――岡本はライブ中、そう何度も繰り返し口にした。Orange Owl Recordsとは、THE NINTH APOLLOを主宰する渡辺旭、ロックバンド・TETORAが立ち上げたレーベルのことであり、ammoがインディーズで作品を発表してきたレーベルである。「自分たちはどこからやって来たのか?」「自分たちは何者なのか?」ammoの3人はそれを問いかけ、答えを見出し、そして再び迷い、また問う。ステージ上に立つすべての瞬間を、彼らはそうやって生きているようだった。
岡本は繰り返しこうも言っていた。「ammoをやる」「ライブハウスをやる」。ロックバンドも、ライブハウスも、それらはすべて誰かに押し付けられたものではなく、自分たち自身の問題であり、自分たち自身の物語であると、彼らは彼らの全存在をかけて自覚していた。
終盤、「わかってる」の演奏中に、岡本はステージの上から見える景色を「バンドをやってきたからこその特権」と言っていた。本編後半に披露された「後日談」は予定のセットリストには入っていなかったが、勢いで急遽演奏したらしい。瞬間に突発的に、衝動的に生まれたものを、「予定にないから」となかったことにするのではなく、宝物のようにすくい上げる。ロックバンドの生き様はこういうところにも出ている。ライブの本編のラストを飾った「ハニートースト」は、過去のインタビューによれば岡本が家族に向けて綴った歌だという。極めて個人的な歌でZepp DiverCityという巨大な会場でのライブを締め括ったところにも、彼らの美学を感じた。手拍子をするのでもなく、歌を歌うのでもなく、一人ひとりが思い思いに「ammo!」「ワンモア!」と叫ぶのが彼らのライブのアンコールの合図だった。最後の最後まで、激しいほどの美しさに満ちたライブだった。
Text:天野史彬
Photo:MASANORI FUJIKAWA
◎公演情報
【reALITY】
2024年3月3日(日)東京・Zepp DiverCity
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