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レトロリロンが、2月12日に渋谷クラブクアトロで【【RETRORION 2nd EP「ロンリーパラドックス」 RELEASE ONEMAN TOUR 2024】】初日公演を開催した。
最新の2ndEP『ロンリーパラドックス』は新たにストリングスやホーンのアレンジも取り込み、バンドの可能性を大きく広げる出世作だった。涼音(Vo./A.Gt.)の優れたソングライティング能力と、メンバーの多彩な表現力ががっちりかみ合った今のレトロリロンには強い追い風の勢いがある。この度、次のステージへの新たな扉を開くツアーが開幕した。
「こんばんは、レトロリロンです。渋谷クラブクアトロへようこそ」
涼音の第一声に応えて湧きあがる大歓声とクラップ。オーディエンスとのポジティブなエネルギー交換を得てバンドは序盤からぐんぐん飛ばす。レトロリロンの絶対的な個性は、涼音の弾くアコースティックギターを中心にした、しなやかで力強いグルーヴだ。『ロンリーパラドックス』収録曲「ヘッドライナー」の飛び跳ねるようなリズムの心地よさはライブで体感してこそで、涼音がハンドマイクで歌う「DND」は、ホーンセクションのトラックを重ねて分厚いサウンドで迫り来る。飯沼一暁(Ba.)のスラップがリードする「Don’t stop」の大きくうねりながら突き進むスピード感も格別。バンドは確実に進化している。
「見たままです。緊張してます。でもこれだけたくさんの人がレトロリロンを聴きに来てくれたので、それに見合う、いや、それよりもいいライブをしようと思ってます」
いつもは穏やかで落ち着いた雰囲気の涼音が、珍しく声をたかぶらせている。ここからはMCなしのノンストップで、miri(Key.)の弾くキーボードが最高にファンキーでかっこいい「Restart?」を皮切りに、ひたすら歌と演奏に没頭するダンシングタイムだ。ベースがリードシンガーのようにメロディを歌う「それでも生きていたい」の飯沼の熱演に、涼音とmiriが「やるねー」という表情で顔を見合わせてニヤリ。涼音がステージを下りてmiri、飯沼、永山タイキ(Dr.)の3人で奏でるインスト曲「Life」は、そのままピアノトリオとして聴けるハイクオリティ。ジャズ、ファンク、ポップ、ロック、ラテン等、演奏力の高さとセンスの良さは抜群だ。
過去の楽曲もライブ用に新たに生まれ変わっている。打ち込みと生演奏のハイブリッド「Document」がオーディエンスを巻き込んだシンガロングになり、永山タイキのソロドラムが炸裂するパワフルな曲に育っていたり、「独歩」の導入部はmiriのリリカルなピアノをフィーチャーしたドラマチックな展開で驚かせたり。メンバーの個性を最大限に生かしつつ、最後は涼音の歌とメッセージの説得力でとどめを刺す。ダークで内省的な表現の多い歌詞が、多様な音楽性の上でポジティブな力を得るマジック。熱く激しい「たださよなら、命燃え尽きるまで」の全員が手を振り上げての一体感がその証明だ。
「みんながいないと曲を出しても意味ないし、そこに意味を持たせてくれるみんなと一日を過ごせて、うまくいかないこともいっぱいあったけど、やってよかったなと思えてます。心の底からどうもありがとう」
ライブの終盤を飾る、現在までのレトロリロン最大のヒットチューンと言っていい「深夜6時」から、今後のレトロリロンの代表曲へ育っていくだろう「TOMODACHI」へのリレーは象徴的だ。どちらも決して消えない人生の後悔と不安を綴りながら、じっくり聴かせるセンチメンタルな曲調からリズミックに体を揺らす曲調へと力強く一歩を踏み出す。「自分の中にあるもやもやをどこかに捨て去りたくて曲を書いていたのに、知らない間にみんなの歌になっていた」という涼音のMCを象徴する、全員参加のリフレインに包まれた幸福感。そして輝くミラーボールに彩られたスローバラード「ひとつ」のエモーションを極めた涼音の絶唱。あまりの迫力に、息を呑み見守るしかない。
アンコールではようやく緊張感がほぐれたのだろう。グッズ紹介でひとしきり盛り上がり、メンバーの親しみやすい素顔もしっかりアピール。軽快で楽しい「カウントダウン・ラグ」を経てEP『ロンリーパラドックス』と同じく「夢を見る」で締めくくり、2時間近くに及ぶライブは幕を閉じた。
『ロンリーパラドックス』はバンドの音楽性を一歩も二歩も前進させたが、過去曲も同時に進化したことがわかったのは嬉しい驚きだった。涼音の歌詞がリスナーの心に深く刺さり、それぞれの大切なメッセージになっていることもはっきり感じ取れた。「もっと上に行きたい」と涼音は語っている。未来への扉は確かに開けられた。
Text by 宮本英夫
Photo by スエヨシリョウタ
◎公演情報
【RETRORION 2nd EP「ロンリーパラドックス」 RELEASE ONEMAN TOUR 2024】
2024年2月12日(月)
東京・渋谷クラブクアトロ
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