<ライブレポート>なとり、ネットの世界からついに姿を現した【natori SECRET SHOW】

2024年2月15日 / 10:00

 なとりが2月2日に東京・Zepp Shinjuku(TOKYO)で初のショーケースライブ【natori SECRET SHOW】を開催した。

 今回のショーケースは2023年12月にリリースされたなとりの1stアルバム『劇場』の購入者限定特典として開催されたもの。なとりにとっては、自身初となるステージでのパフォーマンスとなる。開演前には同会場にて展示会【natori SECRET EXHIBITION】も行われた。

 【natori SECRET EXHIBITION】では、エントランスを抜けた途端に出現する特大キービジュアルを筆頭に、複製原画やジャケット・MVのイメージ案、そしてファンアートも展示され、夢中で見入る来場者の姿が多く見られた。また、「Overdose」「金木犀」「猿芝居」「Cult.」「フライデー・ナイト」といった代表曲のタイトルが名付けられたオリジナル・カクテルも販売。エントランス付近に置かれた黒電話では、受話器を取ると何かが起きる…といった視覚だけでなく実際に体感しながら、なとりの世界観に浸ることができ、初のライブスタートへの高揚感をより高めていった。

 集まったファンが固唾をのんで見守る中、ライブは19時30分にスタート。「natori SECRET SHOW」のロゴを映し出したステージ前面の幕に、後ろから光を浴びたシルエット姿のなとりが浮かび上がる。1曲目「金木犀」が始まり、幕が落ちてなとりが登場すると大きな歓声が湧き上がった。

 サポートメンバーにはTAIKING(Suchmos/Gt)、モチヅキヤスノリ(Pf)、西月麗音(B)、神田リョウ(Dr)という凄腕のプレイヤーを揃えたバンド編成だ。なとりはマイクを握って身体を揺らすように踊りながら歌う。まず印象に残ったのは歌声のリアルで生々しい響きだ。魅惑的な低音のボーカルがクリアに伝わってくる。生演奏のアンサンブルは音源に比べてダイナミックで、そのぶんボーカリストとしてのなとりのパフォーマンス能力が際立つ感がある。

 続く「猿芝居」ではグルーヴィーなベースと洒脱なピアノに乗せて力強くシャウトし、「食卓」ではオーディエンスのハンドクラップが巻き起こる。暗めの照明で顔の表情は見えづらいが、動画サイトを通じて躍進したなとりの身体性あるパフォーマンスは新鮮で、確かな説得力がある。オーディエンスにとっても初めてのなとりのライブ空間というだけあって、徐々に一体感が生まれていくようなフレッシュなムードもあった。

 「Sleepwalk」ではミラーボールの光がフロアを照らす中軽やかに歌い、「ラブソング」ではスタンドマイクに向かって伸びやかなファルセットを響かせる。続く「フライデー・ナイト」ではステージ背後のカーテンが開き、ビルが立ち並ぶ都会的なビジュアルが映し出される。「みんな、歌えますか?」と呼びかけ、オーディエンスの大合唱とハンドクラップと共に歌い上げた。

 そして、この日最大の盛り上がりとなったのが自身最大のヒット曲「Overdose」。イントロからひときわ大きな歓声が上がったフロアに、四つ打ちのダンサブルなビートに乗せて心地よい歌声を響かせた。 

 「ありがとう」と一言告げ、ラストはなとり自身がギターを抱えて披露したロックチューンの「エウレカ」。TAIKINGのギターソロから始まりエネルギッシュな演奏を繰り広げる。熱気に満ちたフロアに再び「みんな、歌える?」と告げ、大きな盛り上がりの中ライブは幕を閉じた。

 終演後には「THANK YOU FOR COMING」という文字がスクリーンに映し出され、帰途につくオーディエンスの一人ひとりの満足気な表情が見えた。約30分という短い時間のショーケースライブだったが、インパクト十分のステージだったのではないだろうか。なとりの曲にはダークな心情を綴ったものも多いが、それが生のライブでのエネルギーに転じることで大きな高揚感を生み出していた。

 なとりは3月29日に東京・Zepp Haneda(TOKYO)、4月5日に大阪・Zepp Osaka Baysideで初のワンマンライブを予定している。アーティストとしてのさらなる飛躍を確信させられるような一夜だった。

Text:柴那典

◎公演情報
【natori SECRET EXHIBITION】
2024年2月2日(金) 東京・Zepp Shinjuku(TOKYO)

【なとり 1st ONE-MAN LIVE 「劇場」】
2024年3月29日(金) 東京・Zepp Haneda(TOKYO)
2024年4月5日(金) 大阪・Zepp Osaka Bayside


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