エンターテインメント・ウェブマガジン
『最新ライヴハウスシーンが知りたい! 令和のロックバンド』と題して、今、ライヴハウスで人気を集めているバンド、ライヴを観て印象的だったバンドを2回に渡って紹介してきたが、今回はライヴハウス視点でなく、TikTokからの視点で注目の令和のバンドを紹介! 令和の人気バンドの特徴として、“SNSを有効活用していること”というのが間違いなくある。リスナーはSNSが入口となって、動画やサブスクでバンドのことをより深く知って、「このバンドのことをもっと知りたい、生で観たい!」という気持ちからライヴハウスへと足を運ぶという流れが確実にあるので。現場(ライヴハウス)至上主義の僕もSNSを放ってはおけない!と、TikTokで人気のバンドをサーチ&セレクト。とにかく流行り廃りの早いSNSの世界ではありますが。そんな中から自分の好きなバンドが見つかったら、勇気を出してライヴに足を運ぶことをオススメします!
「Now is the best!!!」(’23)/ トンボコープ
2022年4月、活動開始。同年7月より、1カ月で30曲の新曲を毎日TikTok上で公開するという前代未聞の企画に挑戦し、計6万再生を記録。その成果もあって、2023年には多くのサーキットフェスに出演。今年4月にリリースした「Now is the best!!!」がTikTokで大きなバズを生み、現在さらに活動の場を広げているトンボコープ。このエピソードを聞くと“TikTokの申し子”とさえ思えるが、当然ながらひたすら新曲を上げ続けたって成果が出るわけがない。彼らの持つ圧倒的ポップセンスとメロディーセンス、そして彼らの人柄が滲み出た優しく温かい等身大の言葉や、明るく躍動感のあるサウンドが同世代の共感を生み、結果を出しているのだろう。《だって今が最高じゃん!》と歌う「Now is the best!!!」は、幸福感あふれるポジティブで明るい恋愛ソング。キュートな手振りがついた“踊ってみた”動画も多数投稿されて、TikTokの申し子の快進撃はまだまだ止まらなそう。
「ノールス」(’22)/シンガーズハイ
2020年結成。『TOKYO CALLING』で初めて彼らのライヴを観た時、彼らの醸し出すいい意味の違和感と独創的な楽曲、じわりと滲み出る毒っ気に、何にも染まらないオルタナティブな印象とロックスター然とした魅力を感じた。TikTokでバズるとか、あまり興味もないバンドだと思っていたのだが。昨年6月にリリースした「ノールス」がTikTokでバズっていたことに驚いたし、「ノールス」がバズを狙って作った曲だと知って、痛快さを実感。強靭なバンドサウンドに内山ショート(Gu&Vo)の胸を突き刺すハイトーンヴォイス、《足りないオツムで考えて》などの痛烈なフレーズが印象的なこの曲は、独特な愛情表現でぶっきらぼうに“愛してる”を届ける、彼ら流のラブソングである。バズを狙ったとはいえ万人受けしそうなサウンドや歌詞に寄せるのでなく、今のトレンドの傾向や対策を研究分析した上で、自分たちにしかできない楽曲を意識的に作れているのがすごい。ヒネた性格も含めて、実にリアルで人間味のある曲になってるから、刺さる人に深く刺さる楽曲になっているのだろう。カッコ良いです!
「ランデヴー」(’23)/シャイトープ
7月にライヴを観て、佐々木想(Vo&Gu)の感傷的な中に力強さが見える歌声と、それを支える温かみある演奏にグッときた。以前のコラム『最新ライヴハウスシーンがもっと知りたい! 注目の令和のロックバンド5選』では「部屋」を紹介させてもらったシャイトープ。「部屋」に限らず、コンスタントに発表し続けている楽曲が、TikTokでバズり続けている彼らだが、今年4月のリリース以降、長く広く愛されているバラードソングが「ランデヴー」。ギターのアルペジオに乗せた、佐々木の甘く切ない歌声で始まるこの曲。楽曲に描かれているのは、“君”を失った事実を受け入れることができない“僕”の真正直な気持ち。TikTokでは《透明な雨の中 あの町でランデヴー》と愛すべき日々を思い返す、儚くも美しいサビのフレーズが拡散されているが、主人公の心情を丁寧に描いた歌詞はその情景や心象風景をリアルに想像させ、多くの若者の共感や感動を呼ぶのがよく分かる。TikTokではこの曲を美しい景色の中で愛すべき時間を過ごす恋人たちがBGMで使用してる動画も多くて、やりきれない男心を歌った失恋ソングが切り取り方ひとつで違った魅力を見せるところも面白い。
「ラブソング」(’23)/マルシィ
2018年結成、2019年にマルシィに改名。2020年リリースの「絵空」がSNSの口コミでじわじわと人気を集め、各種サブスクチャートにランクイン。2022年リリースの「未来図」は歌詞を多言語で翻訳した映像をTikTokに投稿すると海外のリスナーが反応し、アジア圏内のサブスクチャートで上位ランクイン。「消せない記憶と生きていくあなたの記憶をうたうバンド、マルシィ」のキャッチコピーを掲げ、“あなた”に届ける等身大のラブソングがZ世代の女性を中心としたリスナーの心に響き、今や令和のバンドをけん引する存在となっている。そして、TikTokでバズりまくっている「ラブソング」は、今年9月にリリースされた新曲だ。大切なあなたへの気持ちを吉田右京(Vo&Gu)が美しく真っ直ぐな歌声で歌うこの曲は、《愛を誓ったり将来を語り合ったり 僕らはきっと運命だってそう決めようよ》といった歌詞からプロポーズにも取れる究極のラブソング。TikTokでは結婚式やカップルの日常動画に使用され、多くの動画がアップされている。今後、結婚式の新たな定番ソングとして長く歌い継がれていく曲にもなりそうだ。
「ファジーネーブル」(’23)/ Conton Candy
2018年、高校の軽音楽部で結成された3ピースロックバンド・Conton Candy。彼女らの名を広く知らしめた1st配信シングル「ロングスカートは靡いて」(2021年)に続き、さらなるバズでその人気を決定づけたのが、今年4月にリリースした「ファジーネーブル」。《ファジーネーブルの匂いで 私どこかに行けそう》と始まるサビのフレーズがTikTokで話題になると、この曲をフルサイズで聴きたい人が続出。サブスクや動画サイトでの再生回数が急上昇する中、“踊ってみた”動画も多く投稿されるようになり、その勢いは今も止まらない。総再生回数は、なんと40億回を超えるという。躍動感あるアップテンポな曲調に乗せて、ファジーネーブルに例えた甘く苦く酸っぱい片思いを描く歌詞、そして紬衣(Vo&Gu)の胸を締め付けるような唯一無二の歌声が楽曲の世界観と抜群にマッチ。『TOKYO CALLING』でライヴを観た時はサビパートに観客の合唱が起き、会場が幸福感に包まれてたのが印象的だったし。「「ファジーネーブル」のバズでバンドへの期待を考えることが多くなった」と話す紬衣が、「答えは出ないけど、期待は超えるだけです」と力強く告げたMCもカッコ良かった。彼女らの今後に期待、超!
TEXT/フジジュン
フジジュン プロフィール:1975年、長野県生まれ。『イカ天』の影響でロックに目覚めて、雑誌『宝島』を教科書に育った、ロックとお笑い好きのおもしろライター。オリコン株式会社や『インディーズマガジン』を経て、00年よりライター、編集者、デザイナー、ラジオDJ、漫画原作者など、なんでも屋として活動。12年に(株)FUJIJUN WORKSを立ち上げ、バカ社長(クレイジーSKB公認)に就任。メジャー、インディーズ問わず、邦楽ロックが得意分野。現在は音楽サイトや、雑誌『昭和50年男』等で執筆。
J-POP2024年11月22日
石崎ひゅーいが、11月27日に発売する初のカバーアルバム『night milk』に収録される全曲を試聴できるトレーラーを公開した。 『ナイトミルク』は、石崎ひゅーいが、デビュー翌年の2013年11月7日よりスタートさせたインターネッ … 続きを読む
J-POP2024年11月22日
佐々木彩夏(ももいろクローバーZ)が総合プロデューサーを務めるグループ・浪江女子発組合が、12月4日発売の1st EPリード曲「会いに行っていいですか」のコール練習動画を公開した。 今回公開された映像は、新曲「会いに行っていいですか」を … 続きを読む
洋楽2024年11月22日
レディー・ガガが、自身の“ロックンロール・ファンタジー”をついに実現させることになる。来年の【コーチェラ・バレー・ミュージック・アンド・アート・フェスティバル】のヘッドライナーの1人として発表された彼女は、SNSでこのニュースへの興奮と意 … 続きを読む
J-POP2024年11月22日
シンガーソングライター由薫が、新作EP『Wild Nights』を2025年3月にリリースする。 12月5日配信開始の新曲「Feel Like This」が、同日よりNetflixにて独占配信スタートするアニメ『BEASTARS FIN … 続きを読む
洋楽2024年11月22日
Spotifyのストリーミング再生数が10億回を超えている楽曲を6曲持っているマイリー・サイラスだが、長年にわたって彼女の音楽を聴いていた人の中には影響を受け、やがて自分も大スターになった人たちがいる。 米ビルボードに独占公開された『B … 続きを読む