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<ライブレポート>女王蜂 悪魔的なほど美しい、圧巻の表現力を見せつけた単独公演【蜂月蜂日~ファウスト降臨~】

 女王蜂が、8月8日に単独公演【蜂月蜂日~ファウスト降臨~】を東京・Zepp Divercity (TOKYO)にて開催した。

  “蜂の日”である8月8日に、女王蜂が恒例として開催しているこの【蜂月蜂日】公演。毎年、この日のために用意された特別なセットリストを楽しみにしているファンも多いのだが、今年はサブタイトルの「ファウスト降臨」の名の通り、悪魔的なほど妖しい魅力に満ちた、呼吸すら忘れるステージが繰り広げられた。

  開演前のフロアは、隙間なく詰めかけた観客ですでに熱気にあふれていた。女王蜂の定番ライブグッズである“ジュリ扇”をあおぐ観客の姿もみられ、独特の雰囲気を醸し出している。そして、松平健「パンダピラニア」をはじめユーモアに満ちた選曲のSEが止まると、無音のまま、ステージの紗幕が左右に開く。仄白い光に照らされた、ほぼ楽器のみのシンプルなステージに、まずはやしちゃん(Ba.)とひばりくん(Gt.)、追ってサポートメンバーの“みーちゃん”ことながしまみのり(Key.)と福田洋子(Dr.)が登場し、静かに客席へ一礼。そしてアヴちゃん(Vo.)が姿を現すと、客席からは悲鳴に近い歓声があがる。そしてピアノの音色が響きわたり、アヴちゃんが客席に深々と一礼すると、「鉄壁」がスタートした。7月末に公開された『THE FIRST TAKE』でのパフォーマンスも記憶に新しいこの曲だが、改めてステージ上で歌われるさまを見ると、その深く激しいほどの愛と、それを伝えるアヴちゃんのあまりの美しさに胸を打たれる。

 ワルツの揺蕩うようなリズムと、骨に響くほどの低音のギャップが美しい「MYSTERIOUS」のあとは、公演タイトルにも掲げられた「ファウスト」へ。途中のセリフ部分〈「呼んだ?」〉では大歓声が起き、観客もジュリ扇を振り乱す熱狂ぶりだ。「バイオレンス」の歌い出しがスタートすると、期待に満ちた歓声が。シンプルなステージセットだからこそ光の演出で印象ががらっと変わるのが、まるで聖母から悪魔まで、さまざまな姿に変化してみせるアヴちゃんの歌声のようだと思った。そして、まさにその変幻自在なボーカリゼーションを見せつけた「KING BITCH」では、途中の歌詞を〈なにより獰猛な 「歌姫です♥」〉とアレンジし、観客を沸かせる一幕も。

 音源とは異なる生音でのアレンジで、炎がじりじり燃え広がるような音像を見せた「火炎」では、そのイメージに惹き込まれてか、サビ途中で入る鼓の音がまるで爆発音のように聴こえてくる。そして曲を終えると、突如ステージ上で崩れ落ちるアヴちゃん。そこから、「火炎」で登場する〈お七〉へ語りかける、「長台詞」のポエトリーリーディングへと繋げる。その圧巻の表現力に観客も呼吸を忘れているのか、会場にはアヴちゃんの声と、彼女のわずかなブレス音のみが響く。

 そして、「十二次元」のラストで12までのカウントアップを告げる……と思いきや、アヴちゃんは数字を「13」まで続ける。忌み数、“悪魔”の数字だ。そこから始まったのは“願いの悪魔”の名を冠した「メフィスト」のイントロ。これまで、この曲は“女王蜂のアイドル”ぁう゛ちが『THE FIRST TAKE』も含めパフォーマンスをしていたが、今回はアヴちゃんが歌唱を引き受ける。サビではステージに向かって、ステージ上のアヴちゃんを崇めるように――アイドルのライブで見られる“オタ芸”にも見えるような動きで――ジュリ扇が波打つように揺れていた。

 「Q」「十」そして「CRY」とバラード曲が重なると、曲終わりの拍手すら起こらずしんと静まり返るほど、そのステージングに魅了されてしまう。そしてそのしっとりしたムードを、「Serenade」からは90’sディスコさながらの盛り上がりに変えていく。ドスの効いた「地獄へようこそ!」とのアヴちゃんの案内から始まり、ゴリゴリに歪んだ不穏なサウンドが逆に心地良い「BL」のあとは、まるでここからが本番というように「どうもこんばんは女王蜂です!」と挨拶。〈天国なんて行きたくない〉と叫んだ「失楽園」、やしちゃんとひばりくんが舞台上のお立ち台に上がり、キレキレのパラパラを披露した(完コピする観客の多いこと!)「火然ぇるミ毎」と、まだまだいけるでしょ?と言わんばかりに、観客をとことん踊らせていく。

 そしてラストは「ヴィーナス」。コール&レスポンスの声の大きさから伝わる通り、観客のテンションは最高潮に。会場はこの日いちばんの狂乱をみせた。曲を終えると、割れんばかりの拍手のなか、最後は天井からなにかが降ってくる。アヴちゃんはそのひとつ――白い包帯が巻かれた、ぁう゛ちの右腕を模したそれをハサミで切り、そっと抱え、妖しく客席に微笑んでステージを去っていく。そのまま無音で紗幕は閉じていき、ステージが終了した。

 退場のアナウンスが耳に入ってくると、ふとそこまで呼吸を止めてしまっていたことに気づいて、じわっと感じる息苦しさで頭が真っ白になったのが今でも忘れられない。こんな経験は初めてだった。アンコールなし、MCもなし、思考する間もなくたたみ掛けられるような80分。今でも正直、どこまでが現実だったのかわからなくなる。どこまでもシンプルで、どこまでも非日常な、女王蜂の異次元の魅力を濃縮したようなライブだった。

Text by Maiko Murata
Photo by 森好弘 

◎公演情報
【蜂月蜂日~ファウスト降臨~】
2023年8月8日(火) 東京・Zepp Divercity (TOKYO)

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