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今年、8月前半(2、3、4、5日)にドイツで開催された世界最大級のメタルフェス『Wacken Open Air』に足を運んだ。毎年、約8万枚のチケットが1日で完売する超人気フェスで、メタル好きならば一度は訪れたい場所と言えるだろう。もともとは1990年に村おこしのひとつとして始まった同フェス。しかし、今年は開催数日前から連日に渡って激しい雨が降り続き、会場内は田んぼ状態となったものの、長靴必須で4日間メタル漬けの天国のような日々を過ごした。その中で印象に残ったアクトをここで紹介したい。他にもここでは書き切れないが、HELLOWEEN、MEGADETH、HEVEN SHALL BURN、AILESTORM、WHILE SHE SLEEPS、DRAINなど強烈なパフォーマンスに心を奪われた。
「Vortex」(’21)/JINJER
ウクライナ発の紅一点・タチアナ(Vo)擁するメタルバンド、JINJERのパフォーマンスは衝撃的であった。彼女はブルータルなシャウトはもちろん、甘美なメロディーも完璧に歌いこなす。シャウトと歌メロ、どちからに長けたヴォーカリストは多いけれど、二刀流でどちらも絶賛したくなるほどの上手さなのだ。それだけではなく、ドラムは超絶テクニックの持ち主で、手数が多いプレイはJINJERのプログレ度を数倍アップ。バンドのエンジンと言えるほど凄まじい熱量で攻めてきて、サウンド面の縦軸(ヴォーカルとドラム)の厚さに圧倒されてしまった。ぜひともまた日本に来てほしい最強のアクトだ。
「Might Love Myself」(’23)/ Beartooth
日本のメタルコア・バンド、Crossfaithと何度も共演を果たしているイギリス発の彼ら。今年、『Wacken Open Air』初出演となったもの、ドイツのメタラーをガンガン湧かかせる凄まじい腕っ節の強さを発揮。炎やスモークを大量に使う視覚効果もさることながら、ケイリブ・ショーモ(Vo)の煽動的なステージングは観る者のハートを鷲掴みにしていた。常に観客と密接なコミュニケーションを図り、俺たちの音楽を一緒に楽しんでくれ!と言わんばかりの気迫がビシビシと伝わってくるのだ。ハードコアの攻撃性とメロディアスな表情を巧みに使い分け、縦に横に揺さぶり続けるショウ構成は現地でもウケまくっていた。
「The Summoning」(’23)/ SLEEP TOKEN
マスクとマントで身を包んだ謎の覆面バンド、SLEEP TOKEN。彼らもイギリス出身であり、今やヨーロッパを中心にライヴはソールドアウト続出という高い人気を獲得している。『Wacken Open Air』においても23時45分という遅い時間のスタートにもかかわらず、「W:E:T Stage」の前には大勢の観客が集まっていた。R&B調のメロディアスな歌声を放つ一方、DEFTONESを彷彿させる奥深いヘヴィネスを突きつけ、動静の起伏に富むサウンドは新世代到来を強く印象付けるものであった。実際のライヴも音源と変わらず、優美かつ激越なドラマ性を叩きつけてくる。もう、彼ら独自の音世界にグイグイと惹き込まれてしまった。
「The Eternal」(’22)/SABLE HILLS
昨年の『Wacken Open Air』内の「Metal Battle」にて日本人初の優勝を勝ち取ったSABLE HILLS。彼らは今年同じフェスのメインアクト枠として、2年連続で出場を果たした。8月2日も雨が降り続く悪天候の中、「HEADBANGERS STAGE」に登場。今年新たに加入したWataru(Gu)を含む5人編成により、ジャパニーズ・スタイルのメアルコアを振り回し、ショーの間には何度もSABLE HILLSコールが起きる大フィーバーぶり。フロント4人が扇風機ヘドバンをかまし、Rict(Gu)は叙情的なギター・ソロを披露したりと、メタルにうるさい現地のメタラーもサークルモッシュをして大騒ぎ。そして、ラスト曲「The Eternal」演奏時には晴れ間がのぞき、観客による大合唱と共に感動のフィナーレを迎えたのだ。あの光景は未だに忘れられない。
「Wasted Years」(’86)/ Iron Maiden
『Wacken Open Air』3日目(8月4日)の堂々たるヘッドライナーを務めたのはIRON MAIDENだ。この日は会場もメイデンTシャツを着ている人たちであふれていた。個人的にも2016年の東京・両国国技館以来、約7年ぶりに観ることになるわけで、登場前から興奮は収まらなかった。今夏は『The Future Past Tour 2023』とツアー名がつけられ、最新作『Senjutsu』に加えて、86年に発表された6thアルバム『Somewhere In Time』の楽曲にも光を当てる内容になっていた。それもあり、冒頭から同作の「Caught Somewhere In Time 」、「Stranger In A Strange Land」で始まる流れとなり、ラストは「Wasted Years」で鮮やかなフィニッシュ。ブルース・ディッキンソン(Vo)の歌声に関しては依然変わらず、豊かな声量で7年前よりもパワーアップしているのではないかと感じたほどで、王者の貫禄をこれでもか!と魅せつけてくれた。
TEXT:荒金良介
荒金良介 プロフィール:99年からフリーの音楽ライターとして執筆開始。愛読していた漫画『ジョジョの奇妙な冒険』(登場人物に洋楽アーティスト名が使用されていたため)をきっかけに、いきなりレッド・ツェッペリンの音源を全作品揃える。それからハード・ロック/ヘヴィ・メタルにどっぷり浸かり、その後は洋邦問わずラウド、ミクスチャー、パンクなど、激しめの音楽を中心に仕事をしてます。趣味は偏ってますが(笑)、わりと何でも聴きます。
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