<ライブレポート>MAISONdesが初ライブ開催――「ヨワネハキ」が転機となったasmi「人生を変えてくれたと言っても過言ではない」

2023年7月26日 / 18:00

 「どこかにある六畳半アパートの、各部屋の住人の歌」をコンセプトに掲げ、様々な“歌い手”と“作り手”の組み合わせによって個性豊かな楽曲を生み出してきた音楽プロジェクト、MAISONdesの初ライブがZepp Shinjuku(TOKYO)にて開催された。

 今回の【MAISONdes LIVE #1】には、これまでMAISONdesの楽曲を彩ってきた計16組のアーティストが参加。オープニングの「Hello/Hello」ではyamaだけでなく、作詞作曲を務めた泣き虫もボーカルを担当し、冒頭からライブならではのコラボレーションを披露した。続いて、YouTubeの一発撮りチャンネル『THE FIRST TAKE』でのパフォーマンスも話題となった「ラリー、ラリー」をPii、meiyoの二人が歌唱。ネオ・シティポップ的な洒脱で心地いいグルーヴが生のバンド演奏によって紡がれていく。ステージ上には六畳半のワンルームを模したセットが用意され、それを囲むように並んだバンドメンバーがMAISONdesの「今最もSNSで使われる音楽」に生音の肉体性を加えていく。

 一人残ったmeiyoが「“888号室”に一緒に住んでる空音さんは外出しちゃっていて来れないんですけど」と話せばバウンシーなファンクナンバー「infinite」へ。“架空の六畳半アパート”を標榜するMAISONdesでは、発表する楽曲のすべてに部屋番号が割り当てられる。“417号室”の「ダンボールの色」では4na、もっさがデュエット。春野が作詞作曲を手掛けた“308号室”の「Grummpy」では、メロウなキーボードの音色とAqu3raのスモーキーな歌声が抜群の相性を見せ、南雲ゆうき作詞作曲による“107号室”の「夏風に溶ける」は、りりあ。の清涼感あふれる歌声が楽曲のノスタルジアに拍車をかけるパフォーマンス。

 “四畳半フォーク”の在り方を現代版としてアップデートした“六畳半ポップス”を標榜するMAISONdesのリスナーはとにかく若い。きっとTikTokやインスタを通じて音楽と触れ合う世代だろうし、この日の客層も若者が大多数を占めていた印象だ。コミカルなサウンドに反して、はしメロが<け け け けーたいみしてよ今から>とヒステリックに連呼する「けーたいみしてよ」、歌詞では共依存的な関係性を描きつつ、ぜったくん×こはならむの微笑ましい掛け合いが共感を誘う「ねぐせ」の2曲は、まさしくSNSネイティブな世代のリアルとも共振する流れで、分かりやすく2020年代的な世界観だ。

 登壇するやいなや「楽しい楽しい素敵な会にお呼びいただきましてありがとうございます」と挨拶したのは、MAISONdesの始動当初からプロジェクトに携わっていたというくじら。“000号室”の「本当は夜の端まで、」でボーカルを担ったおおおが不在ということで、この日は作詞作曲者のくじらがボーカルも担当。ジャジーな演奏のイントロダクションからなだれ込んだのはエレクトロ・スウィング調の「わかっちゃない」で、ボーカルのあたしがスリリングなバンドサウンドを巧みに乗りこなす。

 asmiがステージを所狭しと動き回りながら歌った「アイワナムチュー」以降は、TVアニメ『うる星やつら』のテーマソングを収録したミニアルバム『ノイジールーム』から楽曲を披露していくショーの終盤戦。むトがボーカルを担当した「トラエノヒメ」も、二度目の登場となったyamaが歌った「アイタリナイ」も、原作への愛とリスペクトをふんだんに込めた楽曲となっていて、キャッチーかつハイエナジーなサウンドがフロアの一体感をさらに高めていく。その盛り上がりがピークに達したのが、冒頭から<ア・ア・オーエオ・ア・エ・ア・エ・オー>の大合唱となった「アイウエ」で、ボーカルの美波は「声出せる!?」「足りない!」とアグレッシブに煽りまくるステージングだった。

 再びステージに戻ったasmiは、「こんなにこんなに盛り上がってるのに、なんと次の曲で最後の曲なんです」と告げつつ、「MAISONdesは私にとって人生を変えてくれたと言っても過言ではないんです」とプロジェクトへの想いを語る。asmiは、2021年5月にリリースされた「ヨワネハキ」でボーカルを担当。ちょうどTikTokを中心に知名度を拡大していたクリエイター、和ぬかが作詞作曲を手掛けたこともあり、この曲は大きなバイラルヒットを記録した。「みんなにとってMAISONdesがどういう場所かは分からない」としつつも「これからの生活にMAISONdesがあれば少しでも生きやすくなったり、なんとかやっていけそうって思ってもらえたらいいなって思います」とメッセージを送った。

 エンディングはもちろん「ヨワネハキ」。耳から離れないオリエンタルなメロディー、言葉遊びを効かせた歌詞、そしてasmiの特徴的なシルキーボイスが絶妙な化学反応を起こすナンバーで、まさしくMAISONdesを象徴するような楽曲だ。最後は「SEE YOU IN #2」の文字がスクリーンに映し出され、約1時間のショーが終幕。この日の模様は翌日、Stagecrowdにて配信も行われ、7月29日まで見逃し配信も実施中。次世代を担う将来有望なアーティストたちと、彼らの生み出す楽曲に自分自身の“六畳半”を重ねる若いリスナーたち。そんな両者が集い、同じ空間で音楽を共有した忘れがたい一夜をどうか目撃してほしい。

Text:Takuto Ueda

◎公演情報
【MAISONdes LIVE #1】
2023年7月21日(金)
東京・Zepp Shinjuku(TOKYO)
<セットリスト>
01. Hello/Hello(yama / 泣き虫)
02. ラリー、ラリー(Pii / meiyo)
03. infinite(meiyo)
04. ダンボールの色(4na / もっさ)
05. Grumpy(Aqu3ra)
06. 夏風に溶ける(りりあ。)
07. けーたいみしてよ(はしメロ)
08. ねぐせ(ぜったくん / こはならむ)
09. 本当は夜の端まで(くじら)
10. わかっちゃない(あたし)
11. アイワナムチュー(asmi)
12. トラエノヒメ(むト)
13. アイタリナイ(yama)
14. アイウエ(美波)
15. ヨワネハキ(asmi)


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