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西寺郷太(NONA REEVES)が、5月27日に【京都 GOTOWN FREAK 磔磔】を開催した。
今回のステージは、西寺の故郷である京都で約50年以上続く老舗ライブハウスの磔磔だ。意外にも、西寺がこのステージに立つのは今回が初だという。元は酒蔵だったという磔磔は、歴代の錚々たる出演者の足跡に囲まれ独特な雰囲気を醸し出していた。
当日は、関西のみならず全国からファンが駆けつけチケットはソールドアウト。開演前、スタンディングで満員となった会場には”少し窮屈な高揚感”を久しぶりに味わうファンで埋めつくされていた。開演時間ちょうど、西寺が磔磔の趣きある2階の楽屋階段から姿を見せ、会場を見渡しながら「(盛り上がれ!)」と大きくジェスチャー。するとファンもそれに応え、手拍子に押されながら西寺がステージへと向かう。そして西寺の2ndソロ・アルバムからタイトル楽曲「Funkvision」が始まると、心地いいグルーヴに早くも観客が身を委ね始めた。
西寺は「【京都 GOTOWN FREAK 磔磔】へようこそ! 最後まで楽しんでいってください」とシンプルに挨拶すると、1stソロ・アルバムから「EMPTY HEART」へと続く。今回がソロライブ初のバンド編成ということもあり、「デビューライブへようこそ」とユニークな挨拶をする西寺。メンバーは、村田シゲ(Ba.)、岡本啓佑(Dr.)そして、バンドマスターを務めるSANABAGUN.の大樋祐大(Key.)と多彩な面子が揃った。
そんなメンバーで次に披露したのが、西寺の最新アルバム『Sunset Rain』から、稲垣潤一の名曲「夏のクラクション」。西寺のボーカルと大樋が奏でる鍵盤が相まって、AORの爽やかで切ない風が会場を吹き抜ける。その後「BODYMOVES!」へと続き、ここで西寺が「この郷太バンドセットに土岐麻子さんをお呼びして、1曲歌いたいな」と、土岐麻子がステージに登場した。土岐が「郷太さん、おめでとうございます」と挨拶すると、少し照れた様子の西寺は「ソロライブアーティストとしては、(土岐さんより)20年ぐらい後輩ですが……」と返す。そして、今回のカバーアルバムに収録されている大貫妙子のカバー曲「都会」へと話題が移った。土岐もカバーしたことがある縁で、西寺郷太&土岐麻子でのコラボが実現。男女で歌う「都会」は、より華やかでブリージーな楽曲へと生まれ変わっていた。その後、バンドメンバーとの軽快なトークで場を沸かせると、土岐麻子のステージへとバトンを繋いだ。
土岐は、「NEON FISH」のイントロと共に再び登場。楽曲の世界観によって、一気にアーバンでポップな空気が漂う。「【京都 GOTOWN FREAK 磔磔】第一回目ということで、みなさん最後まで一緒に楽しみましょう」と挨拶すると、そのまま「Cry For The Moon」へ。土岐は「初めて磔磔に来ました。そんな新鮮な気持ちと共に、大好きなNONA REEVES、西寺郷太さんと一緒にライブができることに、感慨深い気持ちでステージに立っています」と思いを明かす。大学生で出会い、憧れの存在だったというNONAと、長年に渡って様々な形で縁が続いている土岐だが、このような形で共演するのはあまりなかったと喜びもひとしお。次に披露した「美しい顔」は、ライブハウスという空間と“バンド”編成ならではの選曲で、今回土岐のバンドメンバーとして初参加したシンガーソングライター、高木大丈夫のギターソロも一段と映えていた。ライブ定番曲「BOYフロム世田谷」では場内が手拍子で溢れると、「Gift ~あなたはマドンナ~」によって華麗に締めくくられた。
そしてラストに登場したのは、京都でライブを行うのは実に14年ぶりだというNONA REEVES。ライブ冒頭から「ガリレオ・ガール」そして「LOVE TOGETHER」「DJ! DJ!~とどかぬ想い~」と、ライブに欠かせない楽曲が並ぶ。コロナ禍を経て待ちに待ったコール&レスポンスでは、ステージからの呼びかけに、時には嬉し涙を流しながら応えるファンの姿も見受けられた。この3年は、これらの曲を披露する事が少なくなっていたというが、数年ぶりのブランクを全く感じさせず、瞬く間に会場をひとつにまとめあげた。そしてメンバーも「久しぶりにお客さんの『NONA最高!』を聞いたな……」と幸せな表情を見せ、磔磔には何度か出演したことのあるという小松シゲル(Dr.)も「こんなぎゅうぎゅうな磔磔は久しぶり」と、嬉しさを噛み締めているような様子だった。その後も「Trance」「NOVEMBER」「O-V-E-R-H-E-A-T」を立て続けに披露すると、「ラヴ・アライヴ」では、「みんなで歌おう!」の声とともに、再びファンとメンバーが一体に。バンドメンバーのソロにも、より一層パワーが感じられた。会場全体が最高潮の盛り上がりを見せる中、興奮から一息ついた西寺は「感慨深いな、ありがとうやで、感謝やで。ほんまに。今日は最高の夜になるんちゃうか、と予想してましたけど、想像以上になりました! ありがとう!」と思わず関西弁になってしまったと話す西寺が、ファンへの想いを述べた。そして本編最後の曲「未来」では、地元京都から上京し、メンバーやたくさんの仲間と出逢い経験を重ねた西寺が、京都に戻りライブができたという“未来”への感謝が披露された。
アンコールでは、土岐を再びステージに呼び込むと、約20年前にリリースされたふたりのコラボ楽曲「EASYLOVE」を披露。そして「あともう1曲一緒に歌いたい曲があって……」と選曲されたのは、NONAの楽曲で、土岐麻子が女性ボーカルとして参加している「透明ガール」だ。西寺の口からこのタイトルが出た瞬間、会場はざわめきと歓声が上がり、最後まで贅沢な時間が届けられた。
コロナ禍では、無観客配信ライブなど、表現の形を変えながら楽しませてくれていたNONA REEVES。今日のステージでは、本来彼らが魅せてきた表現が”凱旋”を果たしたように感じた。しかし、ここで留まらないのがNONA REEVESであり、西寺郷太だと言えるのではないだろうか。これまでを超え、新たなチャプターへと連れて行ってくれることだろう。そして、次回【京都 GOTOWN FREAK 磔磔】の開催を心待ちにしたい。
Text by 森島良子
Photo by KEITA FUKUMI(KTAGRANT)
◎公演情報
【京都 GOTOWN FREAK 磔磔】
2023年5月27日(土) 京都・磔磔
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