<ライブレポート>Vaundy、全能感に満ちたホールツアー完遂

2023年4月27日 / 18:00

 Vaundyが3月26日、東京ガーデンシアターにて全国ホールツアー【Vaundy one man live tour “replica”】のファイナル公演を行った。

 今年1月から3月にかけて全国14都市25公演をまわってきた自身最大規模のホールツアーは全公演のチケットが即日完売。スマッシュヒットを次々と生み出し、作詞作曲だけでなくデザインや映像もセルフプロデュースを手掛ける彼だが、ライブアーティストとしても破竹の勢いでスターダムを駆け上がりつつある。この日のステージは、そんなVaundyの“全能感”をまざまざと見せつけられるような一夜となった。

 開演を少し過ぎ、バンドメンバーに続いてオレンジ色のパーカーに身を包んだVaundyが登場。軽やかな身のこなしでステップを踏みながら歌う「まぶた」からライブはスタートした。続く「灯火」ではステージ左右を行き来し力強いボーカルを響かせ、サポートメンバーが鉄壁の演奏でアンサンブルを支える。

 「さあツアーファイナル、張り切っていこうか! みんな歌えるかい? 踊れるかい?」と告げ、続いて披露したのは「踊り子」。大歓声と拍手が巻き起こり、シンプルなエイトビートと思わず惹き込まれるメロディでオーディエンスを一つにする。「みなさん準備はできてますか? 何してもいいんだぜ!?」と客席を煽り、エネルギッシュな「置き手紙」で会場に興奮をもたらす。

 Vaundyの楽曲の多くはデジタル・シングルという形で1~3か月に1曲というペースでリリースされてきた。2020年にリリースされた1stアルバム『strobo』以降にもたくさんの楽曲をヒットさせてきたが、タイアップも多く「アルバムの中の1曲」という位置付けの楽曲がないということもあり、すべてが代表曲のようなポテンシャルを持っている。そして、ファンキーなR&Bからエモーショナルなギターロック、切ないバラードなど多彩な音楽性を曲ごとに展開している。だからこそ、ライブのセットリストは多面体的な魅力を持つVaundyの魅力を様々な方面から紐解いていくものになる。

 というわけで、まずは序盤から前半に見せてくれたのは“ロックスターとしてのVaundy”の格好良さだった。ギターを掻き鳴らし、90sオルタナティブ・ロックに通じるけだるくクールな響きを生み出す「benefits」から、同じくギターを抱え真っ赤な照明の光を浴びて歌った「HERO」。疾走感あふれる演奏に乗せてダイナミックな叫びを放つ「裸の勇者」。スタンドマイクを力強く握りしめて歌った「忘れ物」と、ライブ映えするナンバーを立て続けに披露する。

 「卒業おめでとう!」という観客からの呼びかけに「ありがとう」と応えるVaundy。改めて、デビューから快進撃を繰り広げてきた今まで現役大学生だったということにも恐れ入る。「まだまだいけるだろ、かかってきな」と不敵に告げて、続いては「瞳惚れ」を気持ちよさそうに歌い上げる。中盤はVaundyのグルーヴィーなポップセンスの魅力を見せていくセクションだ。しっとりとメロウな「融解sink」に続けては、ソウルフルなシティポップ風味の「恋風邪にのせて」。こういうノリのいい曲では特に、ヴォーカリストとしてのリズミカルな表現力をありありと感じる。

 「もう少し楽しんでいってください」と呼びかけ、「mabataki」から「しわあわせ」と、後半はエモーショナルなミドルチューンやスローナンバーで切ないエモーションをありありと伝えるメロディメイカーとしてのVaundyの側面を伝える曲が並ぶ。「不可幸力」ではステップを踏みながら伸びやかなハイトーンを響かせる。LEDライトを立体的に配したステージセットと鮮やかな照明の光で没入感をもたらす演出にも魅せられる。

 「まだまだそんなもんじゃないだろう!」と告げて披露した「CHAINSAW BLOOD」から終盤は再びパワフルなナンバーを連発して熱量を上げていく展開だ。全身を振り絞るようにして歌い上げた「泣き地蔵」から、ダンサブルなリズムに乗せて満員のオーディエンスが飛び跳ねた「soramimi」と続け、そしてラストは「怪獣の花唄」。「聴かせてくれ!」というVaundyのシャウトに応えてオーディエンスの大合唱が巻き起こり、熱気と高揚感の中ライブは終了。

 アンコールはなし。一つひとつの曲の存在感が濃密だったからか、約90分ほどがあっという間に感じられるステージだった。この日のMCでも触れていたが、今年11月から開催されるVaundy初のアリーナツアー【Vaundy one man live ARENA tour】はすでに全公演がソールドアウト。追加公演として来年1月に国立代々木競技場第一体育館でのライブが開催されることが発表されている。

 「風みたいに通り過ぎていった感じがします」とVaundyはMCで今年に入ってからのツアーの数カか月間を振り返っていた。おそらくこの先も勢いが止むことはないだろう。目が離せない。そう痛感させられる一夜だった。

Text:柴那典
Photo:日吉“JP”純平

◎ライブ情報
【Vaundy one man live tour “replica”】
2023年3月26日(日)
東京・東京ガーデンシアター


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