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現地時間2023年4月14日~16日にかけて、米カリフォルニア州インディオにて野外音楽フェスティバル【コーチェラ・バレー・ミュージック&アート・フェスティバル2023】のウィークエンド1が、ヘッドライナーにバッド・バニー、BLACKPINK、フランク・オーシャンを迎えて開催された。
ここでは、2017年8月以来、約6年ぶりのライブを行うとともに、最終日のヘッドライナーを務めたフランク・オーシャンのBillboard JAPAN特派員による現地レポートをお届けする。
ビョークの開始予定時間より10分ほど早めにメイン・ステージに移動したことで、肉眼でステージを確認できそうな場所を確保できた。周囲のファンたちからは、ビョークのパフォーマンス後も同じ位置で、ステージ転換の80分を過ごすという意気込みとフランクのパフォーマンスへの大きな期待がひしひしと感じられた。
ステージ転換が始まり、両脇にあるスクリーンと同じ高さになるようにスクリーンパネルをつなぎ合わせ、中央のステージの空間を覆う、いわば1つの大型スクリーンが完成する過程は圧巻だった。ステージから3メートル程の高さまでは隙間があり、そこからドラムやキーボードといった楽器、オーディエンスに向けられたストロボがあり、どうやらその隙間を通してパフォーマンスを観るプロダクションということが伺える。
予定開始時間から1時間押しで暗転。ステージ上では同じ衣装を着た多くのドッペルゲンガーが何度も円を描くように動いている。フランクがイスに座る姿をカメラが捉え、「Novacane」の演奏が始まると同時にオーディエンスのボルテージは最高潮に達した。しかし、ストロボと多くのドッペルゲンガーがいるため、フランクの姿をスクリーンで確認するのは難しく、限られた照明でステージは非常に暗く、彼の輪郭をようやく識別できる程度だ。敢えて本人を正面から撮影しないカメラワークも相まって、表情までは見えないもどかしさを覚える。次の曲でドッペルゲンガーが去るとともにストロボも撤去されると、ダンサブルにアレンジされた「White Ferrari」では、フランクの表情がわかるぐらいまでステージが明るくなった。
最初のMCで「ありがとう。ドラッグでハイになってる人はいる?みんなすごく久しぶりだって言うんだけど、ずっと会いたかったよ。今ここにいる理由を説明させて欲しい。新しいアルバムができたわけじゃないんだ。過去数年間、人生が劇的に変わったんだ」と挨拶をし、叫ぶオーディエンスに話を静かに聴いて欲しいとリクエストした。「呼吸器感染症が心配だから砂漠は嫌いなんだけど、弟と一緒にこのフェスティバルに来たことがあるんだ。心に残る思い出の1つは彼と一緒にレイ・シュリマーとトラヴィス(・スコット)を観たことで、もし彼も一緒にいたら凄くワクワクしていたと思う。だから、みんなからのサポートと愛に感謝している」と説明した後、両手でマイクを包み込むような仕草をし、アコースティック・ギターと共に「Pink + White」をしっとりと披露した。
続いて、低音のベース音だけでスタートした「Solo」では、途中からキーボードと「Solo」と歌う部分のサンプリングが加わり、ミニマムな音数だけの新たなアレンジを披露した。「Solo (Reprise)」の後、女性DJが10分ほどDJプレイをすると、「ぐちゃぐちゃだけど、とっても楽しい」と言い、フランクはDJクリスタルメスを紹介した。フランクは続けて、「2020年はニューヨークの小さなクラブでパーティーを始めた時にシャットダウンとなって、たくさんの音楽を聴いて楽しい時間を過ごし活動の1つになっていた。だから、ラジオ番組“Homer Radio”を始めたんだ」と明かした。
オリジナルに近いアレンジの「Godspeed」の直球パフォーマンスに続いて、スクリーンの映像は髭の生えていない子供がキーボードの前に座る姿を捉えた。故アレサ・フランクリンの「ナイト・ライフ」の演奏に合わせてあてぶりをした少年を、フランクはジョサイアという名前で、今日の自身の“インナー・チャイルド”役として紹介した。
曲間の準備に時間を要するのか妙な間が発生していたが、その待ち時間がアメリカのコンサートでは異常なほど静かで、観客が瞬きもせず、次に何が起こるのか文字通り息を殺して待っている様子が伝わった。
アコースティック・ギターの演奏で始まった「Self Control」では、フランクがファルセットで歌い、そのアレンジと歌声はとても悲しい響きだった。ここから、「Nikes」と「Nights」と代表曲が続くが、フランクはマイクを握っておらず、口パクするわけでもなく、本人を招いた試聴会のようだった。そこから1曲演奏すると、「みんな、終了時間だから、さっきの曲がラストです。本当にありがとう」と話した。客席からは残念がるため息が漏れ、同時に沸き起こった「もう1曲、もう1曲」や「ウィー・ウォント・フランク」という声援も虚しく、久しぶりのパフォーマンスは多くの不満が残る形で終了した。
ステージに出てきてくれただけで嬉しいというフランクのすべてを肯定する熱狂的なファンもいたのも事実だが、筆者が6年前に目にした驚くようなアイデアに溢れ、ヘッドライナーのステージでありながらミニマムかつインティメイトなパフォーマンスには程遠い内容だった。ライブ中の本人は楽しんでいる様子もあったが、最後の時間切れは不本意な終わり方だったと思う。次のパフォーマンスは、同じようなものになるのか、それとも全く違うものになるのか。この日は単にパズルがうまくハマらなかったのかもしれない。何も確証はないが、今週末のパフォーマンスは良いものになると信じたい。
※ライブ写真は2014年のものです。
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